7話 ゴブリンと妄想お姉さん
「ほら~、私の言うことを聞かなかったらこういうことになるのよ」
「お姉さん? ずっと待ってたの?」
なんか、悪いことしちゃった。
多分、30分以上は待たせてる。
私のことをストーカーしてるから、もっとかも知れない。
「当たり前じゃない。神にとってはこんな時間なんて一瞬よ。ゴブリンだった頃は長かったけど」
変なことを言ってるけど、私を傷つけまいとして言っているのだと思う。
「お姉さんって、変わってるね」
変わりすぎている。
「よく言われる~。割と昔から~」
そうだろうね。
こんなに変わっている人は、私を助けている知識でさえも、いないと告げている。
「ごめんね、お姉さん。さっきは信じなくて」
「いいのよ。なかなか信じられない方が普通だから」
怒らないんだ。
懐深いんだね。
「お姉さん……一緒に行こう?」
今度は信じてあげないと。
「うん、一緒に行こ~。手を繋ごうか」
「なんで?」
お姉さんは私の手のひらに、手を滑らせて指を絡ませてくる。
「繋ぎたいから~。いいじゃない。貴女の今の身体は、後4年の命なんだから」
歩きながら、話をする。
「また、変なこと言って~。何なのそれ?」
「ゴブリンの古い決まりなのよ。まあ、私がきっかけなんだけどね」
「妄想? 妄想でもいいや、聞かせて」
話題が何もないのも寂しい気がする。
妄想でもいいから、話を聞いてあげよう。
「妄想じゃないよ。昔話。私や貴女みたいなのは、7歳で処分されちゃうという話」
「ああ~なるほど。昔話ね」
妄想じゃなくて、昔話か。
妄想よりいいかも。
「私が昔、人間のことを好きになっちゃって、人間と一緒にゴブリンを壊滅まで追い込んじゃったの」
お姉さんは一体何歳なのよ。
妄想にしても話がおかしい。
「お姉さんが? 意味がわからないけど……そうなのね」
「私は昔からゴブリンから差別されてたから、結構思いっきりやっちゃったんだけどね」
お姉さんはきっと、他のゴブリンから嫌がらせされすぎて頭がおかしくなっちゃったのね。
可哀想に。
「へえ。そうなの」
「その後の生き残りが、私や貴女みたいなのが生まれたら直ぐに殺そうみたいな決まりを創ったの」
「ふ~ん」
まあ、確かにそういうことが何度もあったり、ヒドイ事になるならそういう考えになるかもね。
妄想にしてはよく考えられてるわ。
「だけど、ゴブリンでも生きる権利があるとか言う人もいて……話し合いの結果、7歳になったの」
「はあ……」
7歳って中途半端。
大人にもなってないし、青春を楽しむにも短すぎる。
きっと、適当に言ってる。
「真面目に聞いてないでしょ」
あ、バレた。
「うん」
そんな話、信じられるはずがない。
あ、スライム。