6話 ゴブリンと守護隊
まだ、身体は軽い。
時間まで待つことにした。
子供が街の広場に向かっていく。
自分より身体は大きいけれど、みんな自分と同じ歳だ。
学校の制服を着ている。
なるほどね。
あれについていけばいいんだ。
「はいはい、学校に行く人はこっち来てね。お父さんの名前を教えて。いない人はお母さんね」
守護隊のゴブリンの人が人数チェックをしている。
「ギンさんのところね。クロウさん、タロウさん、ナンシーさん、トトさん、ダイさん……えっと次は……」
ゴブリンは10歳にならないと、王様から名前が貰えないから親の名前で管理するみたいだ。
私も列に並ぶ。
一番最後だった。
「私のお父さんマサオです」
お父さんの名前を告げる。
「えっと……、リストにないな」
リストにないなんてありえない。
「リストにないと連れていけない決まりなんだよ」
「えっ。私も学校に行くことになってます。制服だって、教科書だってあるし、区長さんにも連絡してます」
「……ちょっとまって、隊長に聞いてくるよ」
その守護隊の人は、隊長のところに聞きに行った。
「あの~隊長……。あの小さな子なんですが、リストにないんですけど」
守護隊員のお兄さんは恐る恐る隊長に訊きに行った。
「ん? ああ、あれか。あれは身体が小さいだろ。前に会った時に弱そうだから消しておいた」
横柄な態度の隊長が偉そうに答える。
ああ、偉いのか。
「何やってるんですか。何の権限があってそんなことをするんですか」
隊員のお兄さんが、懸命に抗議してくれている。
この人はいい人そうだ。
「何って、俺がこの隊の隊長だから、俺が決めるんだ」
なんだか悪者っぽいセリフ。
もう少しひねりが欲しい。
「区長に言いつけてやる」
隊員のお兄さんもそれくらいしか出来ることはない。
「ふふ、無駄だよ。区長も町長にも許可を取ってあるから」
してやったりみたいな表情。
いやらしい表情だ。
裏でいやらしい事をたくさんしているに違いない。
聞いてて、無駄なところに労力を費やしてるなあって思った。
弱いものを探して、何か力を行使したくて堪らないのかもしれない。
そんなの認める方も認める方だけど、上に相談することでもないような……。
「ごめんな、チビちゃん。隊長がダメだって言うんだ……」
隊員のお兄さんが申し訳なさそうに頭を下げる。
なんていい人なんだ。
惚れてしまいそう。
ゴブリンという種族の顔は私がゴブリンなのに、好きになれないけど。
「大丈夫です。お兄さん、ありがとうございます。私は他に方法があるので心配しないで下さい」
「え? ああ、誰か一緒に行ってくれる大人がいるんだね。そうか……悪かったね」
普通に考えれば、それくらいしか考えつかない。
でも、そんな大人はみんな狩りに出たりしていて、あまりこの街にいないでしょ?
いても、そこまで手を割いてくれる家は余裕のある家だね。
お兄さんは自分を納得させるために、そう言ったのかもしれない。
「よし、あと10分したら出発するぞ」
隊長がそう言っている。
その間に私は銅の剣を持ったまま、野原へ出発した。
強化魔法はまだ続いている。
守護隊が出発する前にさっきのお姉さんがいるところについた。
「ね? ダメだったでしょ」
お姉さんがまだいた。