42話 服を着ていないかのような恥ずかしさだ
次は武術の時間……剣術ね……。
制服から剣術用の格好に着替えるみたい。
教室で一人一人、身に着ける装備が配られていく。
結構本格的なもので、皮装備の防具だ。
あんまり丈夫そうではないけれど、何とか動けるレベルの重さ。
全身が覆われているわけでなくて、関節部分やスネ、胸部、腹部など急所を守るようなつくりのようだ。
頭部は兜があるものの、角穴が小さすぎて被れない者もいた。
私は角が小さいので角穴も要らないくらい。
角が大きい子は他のゴブリンから羨望の眼差しを浴びている。
そして、その目線はその後に私の角へ哀れみの眼差しを浴びせる。
私は小さい角が恥ずかしくなって、手で角をそっと隠した。
手の平で隠れてしまう私の角。
いつもは隠したことがないけれど、今は服を着ていないかのような恥ずかしさだ。
私はサッサと防具を身に付けると、その場から逃げるように校庭へ向かった。
ゴブリンの魅力は角じゃないもん。
他の……。
他の何か……。
頭は、他の子の方が良いわね……仕方がない、もともとの教育が違うから。
力は他の子の方が強い……私は身体が小さいからなあ。
家もお金持ちではないし……お父さんが弱っちいから。
……何もないのかな、私……。
自分の状態が情けない。
でも、私……負けない。
劣等生でも、やれるだけはやるんだから。
校庭に一番に出て、先生の所に行く。
私は兜を身につけているけど、他の子は角穴が小さすぎるのか、被っていない子が5人位いる。
先生はそんなことには拘らないようで、何も言わない。
先生も角大きいし……。
角があれば、多少のことからは頭を守れるのかもしれない。
でも、兜は被れたほうがいいに決まってる。
その方が安全なんだから……。
全員が校庭に出たあとで、木刀が配られた。
先生が授業を始める。
「それでは、みなさんの手元に木刀は行き渡りましたか?」
今日は握り方などの指導から行っていくようだ。
剣術の授業も、国語の授業もゴブリン哲学も全部が全部ミゼル先生がやっている。
どうやら、この学校では担任の先生はすべての科目を一人で行うのが普通らしい。
「左手で小指、薬指、中指の順に力を入れて木刀を握ってください。こうです」
他の生徒もミゼル先生の言うように柄の方を左手で小指、薬指、中指の順に握っていく。
「右手は力を入れずに添える感じです。右手の人差し指はツバに触れ、親指は触れないように握って下さい」
ミゼル先生の握り方をみんなで真似る。
剣術って左手が大事なのね。
右手は切る瞬間に手首に力を入れるらしい。
「普通は左手の小指の方に力を入れますが、手が小さい人は左手の中指を中心に刀身を支えてもいいです」
へえ、手が小さい人は……か。
私の手は身体からしてみるとそんなに小さくないらしく、結構余裕で握れる。
みんな同じくらいの手の大きさな気がする。
手が小さい人なんていないじゃん。
体格からすると、私は手が大きい方なのかもね。
先生は私のことを気にして、説明してくれたのかもしれない。
「構える時は、利き手の方の足を、前にした方が動きやすいです」
私は右利きだから、右足を前にして左足が後ろ……。
「まずは試しに木刀で素振りをしてみましょう」
みんなで1列になって、素振りを始めることになった。
隣でミゼル先生も素振りをして見せて、それでも、おかしなところを一つずつ直していく。
9人しかいないから、全員が同じように振れるようになるまで丁寧に教えてくれる。
銅の剣は魔法なしでは全然振れなかったけれど、木でできたこの武器ならば振れる……嬉しい。
私も、たくさん練習したら強くなれるかも。
素振りしていると、剣で戦う自分を想像して笑顔になってしまう。
刀なので、片刃しかないために切るという意識がしやすい。
胴切りのやり方、小手切りのやり方、突きのやり方……すべてのやり方をひと通り終わらせた後、お昼の休憩になった。
私も結構、様になってるんじゃない?
他の生徒とそんなに変わらず、素振りを行うことができた。
寧ろ、私の方がみんなより筋が良かったんじゃないかしら。
私にとっての強みは、ひょっとしたら……器用さかな。





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