4話 ゴブリンと嬉しそうなストーカー
「……人のことを信用できないのね、可哀想に」
何故だか、憐れまれてる私。
知らない人に付いていっちゃいけないって、お母さんに言われてる。
どんな人でも、信用しきってはいけないと母が言っていた。
「知らない人について行ってはいけないと、母に言われています」
「最近のゴブリンは頭が良くなったわ。500年前にはこんなこと言われなかったのになあ」
この人は、誰なんだろう。
変な事を言っている。
500年も前なんて、今のどんなゴブリンも生きていない。
今のような体制が出来始めたのだって、300年前らしいし。
王様もそれから、6代目で……それよりもっと前ってことかな。
意味がわからない。
「でもね、オチビちゃん。貴女はもう、他から攻撃されているのよ」
「私、まだ誰とも会っていない……」
「この野原はモンスターが出るのよ。武器もなくて貴女は勝てるの?」
「え? 他の子達はどうやって行くの?」
「時間になったら、学生の守護隊が来てみんなで行くのよ」
「だって、お母さんだって送り出してくれたもの」
「お母さんは教えてもらってないのよ。狩りに行ったこともないし」
お母さんは学校出て、すぐ結婚しちゃってるから知らないかもしれない。
「お父さんは朝早くに仕事行っちゃったし……」
学校に行くことは話をしたけれど、お母さんにお父さんは任せっきりだ。
「それにね、昔はコロコロ虫位しかいなかったのよ。スライムが出始めたのはここ10年くらい」
10年だとお母さんが卒業してから、モンスターの生息場所が変わったことになる。
コロコロ虫というのは、モンスターだけど激弱モンスターだ。
攻撃方法は糸を吐くのみ。
どこでもいるので、私でも捕まえることが出来る。
捕まえて唐揚げにするとおいしい。
「何で、私にだけ教えてくれないの?」
いくら私が小さいからって、そこまでしなくてもいいんじゃないかと思う。
下手すると死んでしまう。
「昔から、ゴブリンは変わった個体には冷たいのよ。全員じゃないけど」
優しい人もいるのに、なんでそんなことするんだか。
リリカお姉さんだって、サブロウさんだって、向かいのおじいさんだって、近所の人は優しいのに。
「近所の人は優しいのになあ……」
「優しい人は一部よ。頭がいい人増えたけど……それでも、貴女はここにいる限り人生呪うわ」
「う~ん。お姉さんって、私のこと詳しいのね……ストーカー」
「……貴女って、口が悪い。……よくそんな言葉知ってるのね」
「私を誰かが助けてくれてるみたい」
その人はしばらく考え込むと、嬉しそうな表情をした。
「うふふ、そうね。助けてくれているわよね」
何で、嬉しいのかな。
私の知識が教えてくれる中ではあまり……いや、かなり悪い意味の言葉を言ったのに。
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