33話 ああ……まだ、長いような短いような何とも言えない
私達は美味しく、野菜も残さず食事を食べ終わって食堂を後にした。
食堂から出るときにふと振り返ると、入口にスタンド看板があるのに気づいた。
「カトリーさん。ここに書いてあったんだね」
内容は今日の寄付食材。
「えっと、キノキノ草はオサムさん。ドリドリニンジンはレイコさん。ナイトバットは試験を受けた人がたくさんいたので、夜の分はそこから使いました、ですって」
「フォレストマンモスは?」
「えっと、ホリン」
「誰それ?」
「ホリン。括弧、校長って書いてあるよ。たまたま、散歩に行って倒してきたんだって」
「校長先生って強いんだね。私がゴブリン殲滅を企てた時にいたら、話にならないくらい簡単にやられていたかも」
「ひょっとして、カトリーさんって神様になる前って弱かったの? 彼氏さんも?」
「うん、弱かったと思うよ」
校長先生……もっと早く生まれてきていればゴブリーヌ処刑の法律はなかったかも。
「ゴブリンも私達も。ゴブリンは知的生物にはなっていたけど、成人ゴブリンでも村人にやられてたし……」
今は強いけど、昔は人間よりゴブリンは弱かったんだね。
「私と彼も神様の加護を受けてレベルが上がるようになってはいたけど、現に二人共負けちゃってるからねえ~……」
結果からすれば、二人共負けちゃってるから強いとは言えない……そういう理論ね。
「今に比べればゴブリンも私達もカスみたいなものね」
どんだけ進化したんだ、ゴブリン。
「へえ。ゴブリンは進化したんだね」
「うん、そうだね。……だから、アナタには強くなって貰わないとね」
そんなに期待されてもなあ……。
「不自然じゃないような形で転生できるようにするから、大丈夫」
転生ってだけで、不自然な気が……。
「ちゃんとしておかないと、転生してから面倒くさいのに絡まれるからね~」
絡まれるって……転生って悪いことなのかな。
というか、食事中にそういう話止めて欲しい。
もっと、楽しい話がいいなあ。
「やっぱ、そういう話に持っていく? もう、慣れたけど」
「そう? 私って復讐のために神様になったから、そういうこと直ぐに考えちゃうのよね」
まあ、カトリーさんの病気みたいなものだから、適当に聞いておこう。
この病気も治してあげられればいいのになあ。
「隠蔽掛かっているんだったら、透明解除していいんじゃないの。なんか、話しにくい」
「ああ、そうだった。透明は疲れないから、どっちでもいいんだけど」
「隠蔽ってそんなに嫌?」
「エネルギーを結構使うから、長くは無理。2日連続で使ったら折角の節約目標が達成できないの」
「ケチ……」
エネルギー効率には、ものすごくシビアな人だ。
「いいもん、ケチで。私は昔お金に苦労したから、もしもの時のために貯めておくの」
「……疲れるのはいいんだ」
「疲れるのは、身体のエネルギーから使ってるからいいの。寝れば大体は戻るから」
「……よくわからないけど、身体のエネルギーを使い切ると貯金のエネルギーを使っちゃうんだね」
貯蓄してあるエネルギーは別のことに使いたいってことか。
「そう。転生させるのって結構エネルギー使うし、効率的に使うことを極めた私だからできるのよ」
私の転生のために貯めてるのか……。
カトリーさんって、普通にいいお嫁さんになれたんだろうな。
節約上手だし、明るいし、一途だし……。
恋人とか言って、ゴブリンを殲滅させようとした人間に腹が立つな。
「カトリーさんって、優秀~。ケチじゃなくて節約上手なのね」
「そうそう、いいこと言うわね。節約上手なの。給料は全額貯金してるんだもの、えっへん」
褒めると、結構簡単に機嫌を直してくれる。
これは扱いやすいのかもしれない。
こういうところが、利用されたんだろうけど。
「ここで話ししてると、エネルギーの無駄遣いじゃない? 部屋に戻ろう?」
「あ、そうね。行きましょ」
食べたものが出ちゃいそうだけど、走って部屋まで戻った。
部屋に戻ってくると、部屋の中は冷えていた。
「窓閉めるの忘れてた」
電気は消したけど。
まあ、いっか。
ご飯食べて、暑いし。
「カトリーさん。今日は得したね。スライム料理じゃなくて」
「そんなにここのスライム料理まずいの?」
「食べられなくはないけど、調理が粗いというか心がこもっていないというか……味が薄い」
「理由がわかった気がする」
カトリーさんはなにか思う事があるらしい。
「生で食べると、スライムってちょっと臭みがあるのよね。火を入れるのが甘いのと、下味つけてないんでしょうね」
「なんか知らないけど、スライム担当の人は新人みたいだよ」
「ふ~ん、じゃあ後で、美味しくできるように情報を入れておこうかな」
「記憶操作?」
「うん、似たようなもんだけどまだ、転生させられないお詫びとして貴女へのサービス」
カトリーさんって、料理上手なんだろうなあ。
ますます、お嫁さんに向いている。
「ああ……まだ、長いような短いような何とも言えない」





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