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3話 ゴブリンとだ~れだ?

 お母さんに家から送り出されて、一人で学校へ向かう。


 学校までは1本道なので迷うことはない。


 他の子も学校へ向かっていくと思う。


 早い時間なので、自分一人しかいないけれどね。


 う~ん、気持ちのせいで足が重い。


 でも、頑張って立派なゴブリンになれればお母さんもお父さんも喜んでくれると思う。


 初めてだから、1時間も早く家を出た。


 不安だからと、他の子に会わなくていいように。


 身体が小さいから、何かからかわれたら嫌だなあ。


 学校よりも他の子と比べられるのがイヤ。


 途中で八百屋のサブロウさんから、挨拶された。


「おはよう。オチビちゃん。今日から学校かい? 早いねえ……頑張って行くんだよ」


「ありがとう、サブロウさん。ガンバル」


「イジメられると思うけど、負けないようにな」

 

「……うん」


 サブロウさんはイジメられることを前提に話をしている。


 否定したいけど、可能性が高すぎて泣ける。


 挨拶は元気をくれるものだけど、今日ばかりは挨拶のせいで気分が落ち込んだ。


 前が向けるような気持ちはなくなり、下を向いて歩いた。


 まだ、学校へは歩き始めたばかりなのに。


 少し歩いて、顔を上げてみる。


 視界の先に続く、道のりを眺める。


 住宅街が続いている。


 その先からは野原になる。


 野原というより、草原だ。


 学校までは結構距離があるし、無駄に広い。


 地形が少しずつ坂道になっているため、今の立ち位置でも丘の学校へ登っていく道が見える。


 遥かなる学校。


 行きたくない学校。


 そこまでの道は1本道。


 気持ち的にはどっか遥かなる彼方へ行ってしまって欲しい。


 でも、しょうがないよね。


 着かないと、いつまで経っても苦しみが終わらない。


 そして、歩かないと何時まで経っても着かない。


 トボトボと歩みを進める。


 空は青空が広がっていて、小さな積雲がいくつも浮かんでいる。


 そして、そんな自分を励ますように、涼しい風が私を包む。


 私のやや熱を持った身体を冷やしてくれる。


 心地いい風。


 風がもっと強く吹いて、私の小さい身体をどこか遠くへ吹き飛ばしてくれればいいのに。


 でも……お母さんとお父さんが悲しむかなあ。


 家族のことを考えたら現実に戻された。


 逃げ出すわけには行かない。


 憂鬱な道のり……、足が重い。


 けれども、ここで住宅街は終わり。


 何げに進めていたみたい。


 ふと立ち止まって、住宅街の途切れた辺りから行く先の草原を眺める。


 緑の草は私に力を与えてくれるようだ。


 やる気が出て、また、歩き始める力が出てきた。

 

 よし、歩くぞ。


 私、ガンバル。

 

 エイエイオー、と心の中で気合を入れて歩こうとした時だった。


 ふと、どこからか声を掛けられた。


「おーはよ」


 辺りを見回す。


 誰もいない。


「誰?」


 返事がない。


 気のせいかな。


 再び歩き始める。


「だ~れだ?」


 視界が真っ暗になった。


 後ろから、誰かが手で目を塞いでいる。


 「誰だかわからないよ。私……知り合いいないもの」


 声は女の人?


 私より身長が随分高いから、上級生かしら。


「フフフ……」


 笑ってる。


 視界が開ける。


 その人がぐるりと回って、私の前へ。


「じゃーん。私でした」


「誰?」


 誰か知らないけど、私に少し似ている人が目の前にいる。


 でも、誰だか知らない。


「ねえ、私が一緒に学校に行ってあげるよ」


「え? お姉さん誰?」


「私? う~ん、そうねえ……どうしよっか」


 何かに悩んでる……。


「どうして、一緒に行ってくれるんですか?」


「だって、なんだか辛い顔して歩いてるから、助けてあげたくなったの」


 どうやら、悪い人じゃないらしい。


 ……と見せかけて、悪い人なのかな。


 上級生なのに、角は小さいし耳も丸い。


 身長は他のゴブリンより大きいと思う。


 肌の色は白くて……おっぱいは小さくて……まるで、私を大きくしたみたい。


 でも、この世の中は簡単に人を信じちゃいけないと思う。


 私はこの人を拒否することにした。


「結構です。私は困っていないし、貴女のことを信用できない」


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― 新着の感想 ―
[一言] 同じ年齢の子が揃う学校だと他の子と比較されやすいから 規格から外れたゴブリンちゃんには苦痛ですね。 学校でのお勉強は嫌じゃないけど、 他の子と比べられるのが苦痛なんですね。 自分を遠くへ…
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