22話 いつもより早く起きた朝は
ご飯を食べた後、私の選択肢には睡眠以外の選択肢はなかった。
勉強全然してないけど、勉強する気力は残ってないや。
今日の授業の内容は、ノートを見返したところでわからないものね。
よし、寝よ寝よ。
布団に入るとすぐに意識を手放すことができる。
私は寝つきはいいから。
布団は昼間干してあったらしくて、フカフカで暖かい。
疲れていたのもあって、いつもより更に寝つきが良かった。
布団に入った直後からの記憶がない……。
◇
次の日、日が昇ると同時に目が覚めた。
外は薄明るい。
昨日は早く寝たから、目がぱっちり。
お父さんとお母さんが起きる前に、家から出ちゃおうかな。
今日はテストだし……。
まあ、これから毎日のようにテストと補修なんだろうけど。
テスト勉強は学校に早く行ってやろう。
どうせ暇だし。
家から出て、井戸から水を汲んでくる。
重い……。
カトリーさんのことだから私のことを見ていて、街と草原の切れ目まで行けば見計らったように出てくるに違いない。
ちょっと、ストーカーチックだからね。
「うんしょっと」
井戸水の入った桶を持ち上げてみる。
「うっ、ん~~~~~~~~~~」
無理だあ。
井戸水を桶に汲んでみたけど、重すぎる。
持ち上がらないから、引きずっていくしかないなあ。
ズリズリと引きずることにした。
でも、重い。
少しこぼして行こう。
……半分でいいね。
顔を洗うとしてもせいぜい二人分くらいかなあ。
力がないことが悲しい。
早く5歳にならないかなあ。
せめて、銅の剣くらいは持ち上がるようになりたい。
私の剣は身長に合わせて、タダでさえ短いのに……。
短い剣も持てないなんて、ゴブリンとして情けないなあ。
ズリズリしながら運んだ。
桶が重いんじゃないの? これ。
分からないけど、イライラしたからイチャモンをつけてみた。
自分に力がないのに腹が立ってる。
「ふう」
しんどかった~。
重かったけど家の前まで、何とか運んでこれた。
まだ、家の周りには誰もいない。
新聞はもう、ポストに刺さってる。
新聞屋さんは何時に配ってるんだろう。
水を軒下にあるヒシャクで洗面器に移して顔を洗う。
水の冷たさが身体中に染みいる。
気持ちいい。
十分、水の冷たさを顔で堪能すると、脇にあるタオル置き場から目をつぶったまま、タオルを手に取る。
顔をタオルに当ててみた。
フカフカしてて、心地いい……。
お母さん、ありがと~。
心地良さに感謝。
いつも洗濯してくれて、感謝。
台所に行って、昨日の残ったご飯を取り出して食べよう。
火を起こすと、他の人を起こしちゃうかも知れないから、これでいいか。
木でできた戸棚から昨日の残りを取り出す。
夜は冷えるから傷んでないと思う。
温かくはないけど、大丈夫でしょ。
スライムの塩焼きをちょっと食べてみる。
うん……不味いな。
コロコロ虫のからあげは大丈夫。
トドイノシシは……美味しい~。
お刺身はもうないけど、煮込み料理はよく味がしみてる。
燻製は保存食だろうけど、ちょっと貰って食べておく。
この燻製、美味しい。
お母さん天才。
うん、結構冷めても食べられるじゃん。
とりあえず、お腹の中にある程度の食事を納めると、制服を着てカバンを持って家を出ようとする。
家の中の時計を見ると、まだ朝の5時半。
誰もいないだろうと思ったけど、ご長寿ゴブリンのモヘイさんは朝の散歩をしている。
年をとって、朝早く起きちゃうのね。
私の中の知識が老人は眠りが浅いということを教えてくれた。
モヘイさんの歩みは信じられないくらい早く、私が行く学校とは正反対の方向へ、あっという間に消えていった。
いつもは日向ぼっこしてるのに、動くとあんなに早いんだ。
あの人は得体がしれないなあ……。
モヘイさんが消えて行った方向を眺めながら、そう思った。





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