20話 軽く突っ込んでおいた
学校からの帰り道は、あっという間だった。
ナイトバットは倒すのが面倒くさかったので、二人で手を繋いで一気に駆け抜ける。
私達の前にいるスライムだけ、私の銅の剣で切り裂いていった。
「10倍強化魔法使わないの?」
「コウモリが相手だと気持ちよくないでしょ?」
ああ、確かに。
血液でぐちゃぐちゃになって踊っても、楽しくないかな。
「あの指先からの光で焼き殺せば?」
「あれは、虫を追い払うという名目で使ったの。ナイトバットは狙ってないの。虫を殺そうとして当たっちゃったの」
「虫かあ」
なんか、物は言いよう……。
それだったら、何でも通用しそう。
「疑ってるでしょ? ほんとよ。虫がたくさんいたの。虫も一緒に死んでるから、大丈夫」
「う~ん、確かにいたようないなかったような……」
よく覚えてないけど、いたような気もして来た。
弓矢に集中してたから、あんまり覚えてないなあ。
きっと、言い訳できる状況とできない状況があって、カトリーさんは色々考えてやってるんだろうな。
そうこうしてるうちに、街が見えてきた。
街の灯りがとても綺麗だ。
王国ができる前は松明だったけそうだけど、今は電灯というものがある。
なんでも、王国が出来た時に一緒に広められたそうだ。
王様はその時に、トーマスという人が発明したものだ、と言ったとか言わないとか。
そうに御長寿ゴブリンのモヘイさんが言っていた。
私の知識が言うにはトーマスという人が確かに発明したと告げている。
けれど、ゴブリンではなく人間の顔をしているのだけど……。
「カトリーさん、街が見えてきたよ」
「そうねえ。じゃあ、草原が終わったところで、少しの間お別れね」
「え?」
家に帰るということは、カトリーさんと別れることだ。
分かっていたけど、なんだか寂しいなと思った。
「あら? 寂しいの? 寂しがってくれて、嬉しい」
私の反応を見て、喜んでいる。
なんだか、複雑な気分。
街と草原の境目のところまで、なるべくゆっくり歩いた。
明日会えるんだけど、なんとなく別れたくないような……。
あれ? 今気付いたけど、街にも結界張ってあったんだ。
街から草原に出る時には全然気付かなかったけど、草原から街に入る時には見える。
「カトリーさん、結界なんて街に張ってあった?」
「夜になると危ないから張るんじゃないの? ナイトバットもフォレストウルフも夜行性だから」
なるほどね。
昼間はスライム位しか草原にいないし、森もそこまで強いのはいないのかもしれない。
フォレストマンモスは自分からは攻撃してこないし、他のモンスターは知らないけど……。
きっと、そこまでじゃないのかもしれない。
「じゃあ、ここまでね。また明日」
「えっと……、また明日お願いします」
「ふふっ。じゃあ、帰るわね」
カトリーさんは、背中から真っ白な羽を広げると空へ向かって飛び立っていった。
「転移で、いいんじゃないの……?」
軽く突っ込んでおいた。





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