14話 ゴブリンの授業を受けてみた
「それでは、ゴブリン経済学の授業を始めます。教科書を出してください」
教科書とノートを机の上に出して、広げる。
ミゼル先生はチョークで黒板に、猛烈な勢いで文字を書いている。
先生の書くゴブリン文字はの流れるように記されていく。
その形は美しく、どこか気品があって見やすい。
王様の方針でゴブリンは1歳から読み書きの勉強をするようになったので、識字率はかなり高いと思う。
初代の王様はゴブリンの知識を一気に押し上げようと、一生懸命だったらしい。
そのための習慣や決まり、法律はたくさんできた。
特に幼児教育の徹底を、強く推し進めていたらしい。
早熟なゴブリンの性質は見事に王様の方針に合致し、今やゴブリンは昔とは比べものにならないくらい知的だ。
近所の150歳になるシワシワご長寿ゴブリンのモヘイさんは、日向ぼっこをしながら、私にゴブリンの昔話をしてくれていたから、このくらいのことは私も知っている。
「物の価値は需要と供給で決まり、この二つが交わる交点が均衡点と呼ばれます。ここテストに出ます」
おっと、いけないいけない。
ノートをとらないと、明日から家に帰れなくなる。
ちなみに、私はゴブリン文字はなかなか覚えられず、他の子が1歳で覚えられるものを3歳の誕生日にようやく覚えられた。
何故だか、私を助けてくれる知識は働いてくれる時と働いてくれない時がある。
知識に偏りがあるのかな。
ゴブリンの知的レベルが上がったせいでカリキュラムもだいぶきつそうだ。
このゴブリンの授業。
私の頭の中には全然入ってこない。
この日はこの後、ゴブリン哲学、算数、国語の授業があった。
ゴブリン哲学は何を言ってるのかチンプンカンプン。
算数は足し算と引き算を勉強した。
算数は先生が言うには、7年間で足し算、引き算、掛け算、割り算、分数をやって終わりらしい。
私は算数は、苦手だ……。
問題集が全然解けない。
国語は「ゴンおおかみ」という文章をやった。
文章を書いたボクというゴブリンは村のモヘイというおじいさんに訊いて、書いているらしい。
モヘイさんて、私の知っているモヘイさんなのかもしれない。
ゴブリンはその人が亡くなるまで名前がダブらないから、確率は高い。
今度聞いてみよう。
でも、わかったのは国語だけは得意みたい。
特に何も考えなくても、言葉の意味もわかるし内容も理解できる。
これは楽勝。
先生の話によると、テストの点数が悪いと家に帰れない理由は守護隊が帰りの守護をできないことによるらしい。
補習や再テストがあると、守護隊が学校を出る時間には帰れない。
私は点数悪くても、お姉さんがいれば帰れるんだけどなあ。
休み時間に先生に聞いたら、夜7時を超えるようだったら泊まっていきなさい、と言われた。
お姉さんの凄さがわからないから仕方がないか。
補修や再テストが2個以上あると、その時点で7時超えるんだけど。
お姉さんに話をしないと。
お母さんには、帰れなくなることがあることは言っておかないとだね。
あと、連絡事項のプリントも渡さないと。
でも、帰れないことが多いと渡せないな。
渡せなくても、いいの?
家には手紙が配達されるから、特に渡すものはないらしい。
多分、私……家に帰れない。
今日の授業で理解できたの国語だけだもん。





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