13話 詰め込み教育
あれ? ひとり来ない。
席がひとつ空いている。
……遅刻かな。
担任の先生が入ってきた。
女の先生?
角がとても大きい。
身長もだいぶ大きい。
胸はだいぶ小さい。
「はい。みなさん、おはよう」
「……」
「私が皆さんの担任のミゼルです。これから、立派なゴブリンになれるように頑張りましょう」
なんか普通のことを言ってる。
つまらない人だ。
「あの、このクラスって10人ですよね。ひとり足りないんですけど」
クラスメイトの一人が質問する。
「昨日お父さんと一緒に森へ狩りの練習に行って、フォレストマンモスに運悪く踏み潰されたそうです」
つまり、お亡くなりになったのか。
森マンモスは大人しいモンスターで、特に近づかなければ害はない。
近づくと攻撃されるけど。
「あの~先生。森向こうの街の学校は入学式があるのに、なぜこの学校はやらないんですか?」
「校長先生が恥ずかしがりやなのと、私たち教員が面倒くさいからです」
この学校ダメなのかな。
ちょっと、がっかりな返答だ。
「え~、じゃあ、早速ですが授業を始めます」
「え? 先生。今日から授業があるんですか」
「この学校は今年からカリキュラムが変更されてだいぶ詰め込まれてます。間に合わないので」
なるほど、何か催しごとをやるくらいなら授業をやるのね。
「時間がもったいないので、ゴブリン経済学からやっていきます。テストは明日です」
「「え~~」」
クラス全員からのブーイング。
けれど、先生は表情を一切変えず、ブーイングが収まると続きを話し始める。
「テストで点数が悪い人は、補講をするので家に帰らないでください。食事はここで出ます」
「「え?」」
全員からの驚きの声。
成績が悪い人は家に帰れないらしい。
おそらく、カリキュラム変更が今年からだから、今年から厳しくなったのかもしれない。
「他の教科も同様に行います。実技では今年から卒業するにはウッドアローを使って、ナイトバッドを10匹討伐する試験に合格することが条件になりました」
これは……弓矢が使えないとダメなのね。
大人だって、弓矢が使えないと倒せないナイトバット。
夜に野原を飛んで、地上に生き物がいれば噛みついて吸血するモンスターだ。
いつもは森に棲んでいるけど、夜行性なので夜になると草原にも出てくる。
ウッドアローはいわゆる木の弓矢。
けれども、ナイトバットを倒すためにはウッドアローではなかなか倒せない。
まず、飛んでいるので当たらない。
そして、夜行性なので暗闇で戦うことになる。
「進学希望者は、更に試験を受けて銅の剣でフォレストウルフを卒業までに倒してください」
進学とかあるんだ。
フォレストウルフって、強いよね……。
倒すのにはしっかりとした剣術が必要らしい。
ベテラン狩人のゲンさんが、他の狩り仲間と道端で話しているのを聞いたことがある。
フォレストウルフは弓矢の動きが全て読めるらしい。
そして、接近戦で倒すのにはかなりの苦労が必要らしい。
この国が求めている人材は接近戦と遠距離戦ができる人なのか。
どのゴブリンでも弓矢ができれば、被害を少なくして人間を攻撃できる。
だから、最低限弓矢はできるようにしておこうと、そういう考えなのね。
圧倒的な数の弓兵で、自国の民の犠牲を少しでも少なくして勝ちたいのかもしれない。
ただ、最前線は最低限の接近戦の技術がないと厳しい。
自国のために戦おうとするものにも、なるべくなら命を失って欲しくないのだろう。
なんだか、そんな気がする。
一応、今日はテストがないから今日だけは帰れるね。
「いじめや嫌がらせなどの行為は隠密ゴブリンによって、常に探らせているので行わないように」
……教育にどんだけ国家予算を割いているのだろう。
王様も余程、急いでいるんだろう。
人間を倒したいんだね。





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