10話 ゴブリンとお姉さんの復讐
野原中のスライムを全て倒しきったみたい。
どこを走って見ても、スライムの死体だらけ。
「お姉さん。スライムっていつ生まれるの?」
「う~ん、分かんないけど……全部倒しても、知らないうちに生まれてるよ」
お姉さんでも分からないことがあるらしい。
お父さんや周りの大人たちの声が聞こえる。
「うわ、こっちにも。あっちにも……。スライムの死体がたくさんあるよ」
「すごいなあ。これ、運ぶだけで1日終わっちゃうかも」
「森にいるやつにも、声掛けようか。普段は向こうの方が割がいいけど、今日はこっちの方がいいね」
森の方が割がいいんだ。
お父さん、弱っちいからいつも野原なんだなあ。
でも、今日は稼ぎがいいんじゃない?
1日中運んでれば、戦わなくていい分でいつもの10倍は往復できると思う。
「ああ~、楽しかった。じゃあ、学校に行っておいでよ」
野原で戦っていたのは、ホントに数分の出来ごと。
「お姉さんは毎日、送ってくれるの? 帰りも?」
おそらく、この学校に通う間は守護隊に頼ることはできないだろう。
あの隊長さんは、顔がいやらしそうで好きになれない。
ゴブリンなのに、ゴブリンの顔が好きになれない私。
でも、この学校で好みのゴブリン顔の王子様に出会えるかもしれない。
「うん、そのつもりだよ。だって、私の娘だもの」
「私のお母さんは家にいるけど」
やっぱ、お姉さんは頭おかしいのかな。
今までの話と違って、今度は私のことを娘だなんて言っている。
悪い人じゃないんだろうけど、あんまり信じない方が良いなあ。
でも、無事に学校にたどり着けたのはお姉さんのお陰。
そして、私にはこれからもお姉さんが必要だ。
私はお姉さんに何もしてあげられないから、せめて話だけでも聞いてあげようかな。
お姉さんの心を少しでも癒してあげられればいいと思う。
「いいの、いいの。私が貴女が生まれるようにしたんだから」
「え?」
「本当は、私の娘達が毎回殺されてしまっているって知ってたら、生まれさせなかったんだけど」
「また、意味分かんないことばっか言って。嫌だな……もう」
話は聞いてあげてもいいけど、信じるかどうかは別の話。
「ちょうど、上級神になるための試用期間だったの」
試用期間?
「ゴブリン全体へ稀少種が生まれるやすいように魔法をかけたから、試用期間が長くなっちゃって」
私のもう一つの知識も、お姉さんの言っている変なことに関しては何も教えてくれない。
多分、妄想だからだわ。
「いいの。その内分かるから。辛いかもしれないけど、それがゴブリンを倒す想いになるから」
お姉さんの妄想は、ゴブリンへの復讐へ終結しているみたい。
お姉さんも私もゴブリンなのになあ。





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