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大戦乱記  作者: バッファローウォーズ
涼周の仁徳
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共闘の果てに


 海賊団主力はナイツ達により、逃亡した二隻の敗残兵は韓任、李洪によって討伐された。

ナイツは捕虜にした賊兵の移送を韓任に任せ、李洪とメスナには引き続き剣合国軍領海内の巡視任務に当たらせた。


「汝等のお陰で無事に妹の奪還を果たせた。真、感謝の念が絶えぬとはこの事」


「お救いいただき、本当に、ありがとうございます。この御恩は、生涯忘れません」


 ナイツ、涼周、飛昭等は拐われた女性達を集落まで送り届けていた。

ここで彼等は改めて楽荘の妹と対面したのだ。

彼女は腰辺りまである長い白髪と薄黄色一色の目、雪の様に白い肌をしており、とてもゆっくり話す不思議な人物だった。


「礼はいらないよ。俺達には当然の事だから。な、涼周」


「ん。……ねぇ、本当に妹?」


 涼周は兄に頭を撫でられながら、似ていない兄妹に問い掛ける。

ナイツは、妹が奇病にかかっている為に似ていない事もあると思っていたが、どうやら涼周は違う何かで二人に違和感を感じたようだった。


 涼周の問いに楽荘は小さく頷くだけだが、妹の方が優しい声音で反応する。


「わたくしは生まれつき、見る目を持っていません。ですから兄が、どの様な顔をして、自慢の筋肉を晒して、周りの人がどの様な顔を見せるのか、分からないのです」


(……楽荘の妹さんは、目が見えないのか)


 ナイツはその事実を知ると、彼女の薄黄色の目を注視する。

彼女は確かに見えていない様だった。涼周に向かって声を発してはいるものの、涼周の頭の高さが分からない為に、つむじより若干上に視線を向けていた。


「……ぅ……楽荘……凄い大きかった」


「大きい? 何が大きかったのですか?」


「そこまでそこまで! 後は楽荘に直接聞いてやって!」


 優しい涼周は目の見えない彼女に、頬を赤く染めながらも兄の容姿を説明しようとした。


「にぃに、黙ってる」


 だがそれをナイツが止めようとした所で、あろうことか涼周本人が制止を制止する。

そして一瞬の躊躇いを見せた後に涼周は、妹に近寄って彼女をしゃがませた後、その耳元で恥ずかしそうに囁いた。見る見るうちに彼女の顔から笑みが消えていく。


「……そうなのですね。貴女は本当に、優しい方」


 優しい涼周様が色々なモノを赤裸々に話したのだろう。ナイツと飛昭は直感で分かった。


「お兄様。旅先で何度か、人々の悲鳴やざわめきを、聞いた事があるのですが、心当たりはございます?」


「……かくも多くの地を旅した。故に、全く記憶にない」


 涼周に対しては微笑んで礼を述べた彼女だが、その一方で楽荘へ向き直ると一転して据わった目を向けた。

ただ楽荘が韓任を越す巨漢で、妹はナイツ程度の平均的な背丈な為、彼女の目線が十に割れた輝く腹筋の位置にあり、まるで腹筋と会話している様であった。


「まあ兄妹仲良くな。俺達は城に戻るから……今後の旅の成功を祈る!」


 兄妹のやり取りを微笑ましく思ったナイツは、胸の前で拳を上下に重ね合わせて、出陣するナイトに対するものと同じように武運を祈る。


「真、感謝いたす。時節が参った暁には、我が力を汝等の為に使うと天に誓う!」


 力強く見開いた目と逞しい筋肉が激しく主張。その熱意に応えて服が悲鳴をあげていた。


「……気持ちは嬉しいけど、まずは服を破らない努力が必要だな」


 ナイツは苦笑を浮かべて楽荘の想いを受け取った。

何だかんだ言って彼は、筋肉マンに対する苦手意識を消していた。それは妹へ一途な愛情を示す楽荘に共感するものがあったからだろう。


「ん、バイバイ」


「涼周殿。汝の戦ぶり、想い遣りの心、どれをとっても真見事! 我はここに、運命の出会いをした心境なり」


 手を振って別れを告げる涼周に対し、楽荘はそう言った。




「…………どうでした将軍? 涼周殿は、将軍の筋肉に、響くものでしたか?」


 ナイツ達の乗る軍艦が義士城へと戻っていき、多くの民が歓声で見送る中、妹を演じた守護魔法使い兼副将の女性が尋ねる。


「真極上の成果なり。腹筋が更に二つ割れた程に全身に響いた」


「その設定が、気に入りましたか?」


「汝がその様に問うたからだ。然し、涼周殿。今一度その存在を見てみたい」


「……分かりました。ではもう少しだけ、お忍びの旅を続けましょう」


「うむ。今一度、汝の想いに甘えるとしよう」


 微笑む女性を背負った楽瑜は軍艦に背を向けて、颯爽とその場から立ち去った。

二人はその日の内に集落から姿を消し、人質の女性達が語った魔法使いは「守護の白髪姫」という名前で語り継がれる事となる。


 こうして輝士隊は、覇攻軍との戦いを前に後顧の憂いを除く事に成功。

涼周の勇名も作戦に随行した兵達の口から広がっていき、剣合国軍の士気を大いに高めた。

因みに捕虜となった賊兵達だが、彼等はアーカイ州を守るフォンガンの監視下に置かれた。

彼は賊や悪兵を再教育して更正させる事に定評があり、性根から鍛え直した後に己の部隊に加え、太陽の下を堂々と歩く事のできる真人間への経験を積ませている。

今回の賊兵達もフォンガン隊の予備戦力候補生として組み込まれる予定だ。


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