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大戦乱記  作者: バッファローウォーズ
存在と居場所
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戦後即座に二次戦勃発


 カイヨー兵が涼周への協力を表明し、晴れた顔で後退していく最中の事。

涼周はナイツに向けて頭を差し出し、撫で撫でを要求する。


「お……ああ、頑張ったな涼周。良い子だぞー!」


「……ぅふぅっ!」


 要求に応えて頭を撫で撫でしてあげるナイツ。

涼周はとても嬉しそうな笑顔を見せ、頭上にある兄の左手をきゅっと握る。


(……涼周もそうだが……俺も頑張ったんだよ……誰か、褒めて!)


 然し、兄として弟の頑張りを褒める一方、防壁上からの跳躍が相当堪えた様子のナイツは自分の事も誰かに労ってほしいと思った。


「……んぅっ!」ちゅっ!


 その思いを知ってか知らずか、涼周は軽くジャンプしてナイツの左頬に口付けを行い、唇にうっすらと残っていた血が不恰好なキスマークを残す。


「…………ほわあぁぁっい⁉」


「ああぁー⁉ 羨ましぃー‼」


 この出来事が、後世にはこのような格言で伝わっている。「青天の霹靂チッス!」……だ。

如何な英雄であろうとも、可愛い子からの突然の口付けには盛大な喜びと驚愕をもたらせるという意味であり、一呼吸遅れて望外の喜びと天壊の動揺を半々に得たナイツが基となっているのは語るまでもない。


「ずるいっすナイツ様! 俺達だって頑張ったっす!」


「独占禁止っすナイツ様!」


「弟君、俺達にもチッスして欲しいっす!」


「すっすっすっすっ喧しいわ! これは兄の特権じゃ! ええい寄るな! 良い大人どもが、先ずは髭を剃ってから近づけぃ!」


 瞬時に涼周を肩車して頭上に避難させたナイツは、群がるバスナ兵達を相手に第二次防衛戦を始め、疲れた体を思わせない孤身奮闘ぶりを示す。


「うらうらうらうらうらうらうらうらぁーー‼」


「ぐはっ⁉ ち……ちくしょう! やっぱり強ぇ!」


「うおおー怯むなぁー! 戦いは始まったばっかだー!」


「俺達もちゅっちゅっして貰うんだー!」


「ナイツ様を取り囲め! 全方位より突撃だ!」


「バスナ隊の練度と結束、見せるは今だぞっ!」


(…………ナイツ殿も、だいぶナイト色に染まってきたな……。それと、涼周は本当に男の子なのか? 何だかとても女の子の様な仕草が目立つのだが……。後お前達、だから何故俺より台詞が多い)


 百烈拳を繰り出すナイツと、その頭上で楽しそうに花を咲かしている涼周。そして片っ端から吹き飛ばされているバスナの部下達。

そんな様子をバスナ本人は離れた場所で見守り、自らの心身を救ってくれた兄妹に向けて静かに笑みを浮かべていた。





「錝将軍・衡裔の策により、承土の嫡男・承咨がカイヨーに侵攻。一夜にして陥落せしめる。

悪将ブイズが率先してカイヨー民を惨殺。百万を優に超える骸で言葉通りの山を築いた。

後年、カイヨーの有力豪族から出た女性が承土軍領の男性と懇意の仲となった際、飛刀香神衆頭領の飛昭が率先して引き剥がそうとし、最終的に天仁王まで出動させる騒動の基となる。


カイヨー陥落の勢いに乗じた承土軍は剣合国軍領の遜康に侵攻。

梅の月、最後の週であった。

前哨戦は飛雷将メイセイの武勇と采配が、承土軍先陣のブイズと商吉を退ける。

本戦ではバスナの守る中央砦に人質を取られたカイヨーの虜兵部隊が攻め込み、東に陣を敷いたナイツへは霍恩、ブイズの承土軍部隊が当たった。

その一方で聖闘将・楽瑜は、西に陣を敷いたメイセイと相対しながらも、終始不戦を貫いたという。

その中で、総代将・承咨が愚かにも僅かな近臣とともに砦に侵入。

バスナに一蹴された後に、ナイツに抱かれて天より舞い降りたあの御方と交戦。

結果、一撃で敗北を喫し、利用価値を見出だしたバスナによって一命は留められた。

二大英雄とバスナの連携によって承咨は敵地真っ只中で捕縛され、承土軍は手が出せなくなり攻撃を中止。

実際にその場に居合わせたカイヨー兵によると、あの御方が彼等の解放を声明した途端、本当の意味で体が勝手に動いて承咨の退路を絶ったとの事。

承咨は本戦に於いて、虜兵となったカイヨー民を人と思わぬ扱いで繰り出した為に、彼等の恨みを直に受ける事となったのだ。


この戦で剣合国軍は四千近くの兵が死傷し、バスナの副将・賀憲も承咨によって討たれる。

カイヨー民兵も二千余りが家族との再開が果たせぬ身となった。

対して承土軍の死傷者は前哨戦の数も含め二万四千。

……彼等の所業を思えば、私にはこの数がとても少ないと思えた。



話は変わり、私はあの御方を「彼」と記す事が多々あるが、それはあの御方が男だという確証をもっているからではない。

世間一般ではあの御方がナイツの「弟君」と位置付けられ、二代英雄を称える際も「義兄弟」と言われているからだ。

そのことに関して、私はとある陣中で一度だけ性別を尋ねた事がある。

然し、あの御方も傍に控える姫も、一様ににっこりと笑うだけで答えてはくれなかった。

更に言えば、姫からただならぬ無言の圧を感じた為に、それ以上を聞けなかった。

姫と再開を果たし、急成長を遂げた後のあの御方はよく体調を崩していたそうだが、それが女性特有のものなのか、地面に落ちている物まで食べる食い意地の汚さからなのかは分からない」


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