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大戦乱記  作者: バッファローウォーズ
心角郡平定戦
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ホゥロ城陥落


 時刻は夜の九時。輝士兵三千と、カイヨー兵二千の連合部隊計五千はホゥロ城の本丸を包囲・威嚇し、サイゲイ以下千三百名の守兵の注意を引いていた。


「……よし、いいぞ。出てこい」


 その最中、飛昭を先頭に三百名のカイヨー兵は、避難用に作られた敵の地下道を通って本丸内部の武器貯蔵庫に出る。倉庫最奥にある弾薬箱の蓋が出口だった。


「門までの道は俺が全力で開く。前衛も後衛も手筈を狂わせるなよ」


 出撃を前にして作戦を念頭に置かせる飛昭。

カイヨー兵達は皆が己の任務を再確認し、一様に頷き返す。


「……では飛刀香神衆、出るぞ!」


 飛昭の号令を聞き、静かに闘志を滾られたカイヨー兵三百。

再び飛昭を先頭にして、武器貯蔵庫より勢い良く飛び出した。


「なっ!? えっ!? 敵しゅ――」


 予期せぬ敵の出現に動揺した警備兵は、一瞬の隙を飛刀に突かれて黙殺される。


「敵襲、敵襲ー! 何処からか敵が湧いて出てきたぞ!」


 出撃から三十秒ほど経過した頃になって、漸く守兵は飛昭達の存在を敵味方に知らせられた。


「疾風となって敵中を駆ける! 皆、遅れるなよ!」


 だが、敵に察知されたからと言って飛昭達の足は止まらない。

寧ろ認識されたのであれば、遠慮なく駆ける事ができるというもの。

更に飛昭とカイヨー兵は、命中精度を二の次とした走射攻撃を行う。

近寄る敵を払い、進路上に立ちはだかる敵には機先を制した。


「門が見えたぞ! 全員抜刀! 前衛は白兵戦を挑み、後衛は周囲の敵を近寄らせるな!」


 出された指示のように、カイヨー兵は全員が得物を刀に持ち替え、前衛百五十名はそのまま突喊、後衛の残り半数は前衛の盾となる形で味方に背を向ける。

そして飛昭による魔力飛刀が先んじて敵の戦列を突き崩し、浮き足だった所に前衛のカイヨー兵が切り込んでいく。


「今だ! 門を開けて味方に旗を降れ!」


 最後の門を守る敵兵を蹴散らし、隙を見て鉄扉を開かせる。

土と鉄の摩擦音が戦闘の中に於いても確かに聞こえる程に、素早く開け放たれた鉄扉門。

カイヨー兵達が顔を真っ赤にして姿を現すと、ナイツは彼等の合図を待たずに突撃号令を掛ける。


「突撃開始! 一気に本丸を攻め落とせ!」


 韓任が先頭に立ち、彼に率いられた輝士兵は号令と同時に、忽ち本丸内部への侵入を果たす。


「飛昭殿の見事な手際、感銘を受けるばかりだ! しからば、後の事は我々に任せられよ!」


「はっは! その様に褒められては、下がる訳にはいかんな!」


 飛昭と韓任は互いの武功を競うかの様に苛烈な攻めを見せた。

こうなっては最早、サイゲイ率いるホゥロ城守備隊に勝ち目はない。


 本丸突入から僅か四十数分後の事、サイゲイは韓任によって捕縛され、一千ほどの残兵も悉くが降参。

嘯桂樹海北面にある最大の要害は、こうして連合軍の手に落ちた。


「おのれ……よもや剣合国軍に虜囚の身を味わわされるとは……!」


 落城に伴い、ナイツと涼周の前に引き出されたサイゲイ。

ナイツは、元山賊の身でありながらテンベイに忠誠を誓った彼に興味を抱き、それとなく投降を勧めようとする。


「悔やむ事はない。お前は本当によく戦った。多くの者が降伏する中で最後まで抵抗した気概は評価に値するものだ。……だが、テンベイの下ではその忠義も腐るのみだろう」


「止めろ。捕らわれの身でテンベイ様の悪口は聞きたくない」


 然し、ナイツの言葉にサイゲイは聞く耳を持たなかった。

それでもナイツは根気よく話し掛ける。


「止めろと言っているのが分からんか! どれほど諭されようがテンベイ様への忠誠は変わらん! さっさと首を刎ねろ!」


「その忠誠心が惜しいと言っているんだ俺は。お前は必ず役に立つ人材だ。……今直ぐは無理かもしれないけど、ゆっくりで良いから考え直してくれないか?」


「喧しい! 敵の世話になどならんぞ!」


「まあそう言わずに。案外、頭を冷やして周りを見てみれば、何をムキになっていたのかと感じる事もあると思うよ。……敗北の悔しさから死に急いでも、それは無意味なだけだろ?」


 ナイツはこんこんとサイゲイを説いた。

そして説得する事三十分。サイゲイは何とか降伏する事だけは認めた。



 サイゲイ達の降伏に気を良くしたナイツは、彼等の奮戦を労うと同時に連合軍の勝利を祝うべく、ささやかながらも酒宴を催した。


「…………」


 ナイツと語り合うサイゲイの姿を遠目に見ながら、涼周は黙して突っ立っていた。

それを気にした飛昭と楽荘が涼周に近寄り、楽荘が一言尋ねる。


「涼周殿、黙ったままでどうされた? サイゲイなんぞに妬かれたのか?」


「………………」


 酒によって若干の朱を帯びている彼の言葉を余所に、涼周はサイゲイを見続けた。

やがて涼周は、幼子に不釣り合いな達観した眼差しを以て、一言だけ発する。


「……あの人、曇ってる……」


 涼周の下した鑑定に、飛昭と楽荘が言葉を失った。

ナイツが良しと見て懐に入れようとした人物を、弟の涼周が灰色だと語ったのだ。


 ともあれ、連合軍は樹海侵攻に一際大きな役割を持つホゥロ城を攻略した。

翌日には早くもその影響が樹海内に広がり、ホゥロ城北西の多樹集落及び、攻略を後回しにしていた樹海外の他の集落も降伏を表明。

後顧の憂いを取り払った連合軍は進撃を再開し、対するテンベイ本軍は樹海深部にある本城への撤退を余儀なくされた。


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