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大戦乱記  作者: バッファローウォーズ
心角郡平定戦
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敵援軍接近


 剣合国軍は嘯桂樹海を順調に攻略しているかに見えた。

だがここでナイト、方元、ナイツ、強いて言えば楽荘までも予期しなかった事態が起こる。


 その報告を一番最初に耳に入れた者は、西側から樹海を攻めている方元だった。


「方元様、大変です! 心角郡の南西国境にて、承土軍の姿が確認されました! 率いている人物は承土軍次期大将の承咨。兵数は二万を超えているとの事」


「……至急、大殿と若君に御知らせせよ。それと承土軍より正式な宣戦布告があったのかを確認する為に、義士城の軍師殿にも連絡をとるのだ」


「ははっ! 直ちに行います!」


「我が軍はこれより反転し、一軍は樹海入口の基地より南西の外側に布陣する。野戦にて承咨の小倅を防ぎ止め、交橋並びに若君の背後を取らせぬようにするのだ。残る一軍は基地にて守りを固め、テンベイ直属軍の反撃に備えよ」


 流石は方元。剣合国軍の長老は伊達ではない。

彼は突然の新手の来襲にも動じる事なく、今できる全ての備えを迅速に整える。


 偏に、方元が西面侵攻軍の大将を任された理由はこれだった。

最年長の戦経験を持つ彼は兵を扱う事に一際長けており、何事に於いても安定感のある堅実さを発揮する。若造ごときの急襲などで崩せる程、彼の用兵は柔ではないのだ。


 方元軍は進撃を中断。颯爽と転進して樹海を脱する。

その最中にテンベイ軍の追撃を受けたのだが、方元は敵の追撃すらも利用。伏兵戦術を用いて逆にテンベイ軍を散々に蹴散らした。

三千もの死傷者を出したテンベイ軍はこれに懲りて方元軍との交戦を避ける様になり、樹海深部に退却して兵の建て直しを図った。


 ナイツ達が承土軍の襲来を知ったのは、彼等がホゥロ城攻撃を本格的に始めた頃だった。


「これで……テンベイ軍が優勢になったか」


 ナイツは援軍を得たテンベイの巻き返しを危惧するとともに、ホゥロ城攻略を急いだ。


「涼周、楽荘。悪いが力を貸して欲しい。あの小城を一気に攻め落とす」


 状況が変わった事でテンベイ本軍が本城に籠っているとは言い切れなくなり、最悪の場合、彼等がこの戦場に雪崩れ込んでくる恐れもあった。

仮にテンベイ本軍が出撃してホゥロ城救援に現れれば、輝士隊・涼周連合軍は前後を挟撃される形となる。

故にナイツは、敵増援の来襲を見越してホゥロ城攻略に時間の制限ができたと捉え、被害を抑える堅実な攻めから多少の犠牲を覚悟した強攻作戦に転じたのだ。


「メスナは本陣及び後方の守備に徹してくれ。涼周と楽荘は飛昭と合流し、彼にも城の攻撃に加わってほしい事を伝えて」


 涼周と楽荘の快諾を得たナイツは攻城要因を倍に増やして迅速な陥落を狙った。


 各々は早速行動に移る。ナイツは韓任と連携し、輝士兵四千で南と東を攻撃。涼周、楽荘、飛昭は森林戦に手慣れたカイヨー兵五千を引き連れて西と北に回り込んだ。


「サイゲイ様、全方位を敵に囲まれました! 敵は軽く見ても我々の三倍はいます!」


「気合いだ! 気合いで防ぐのだ! 必ずテンベイ様は援軍に来てくださる!」


 ホゥロ城々代のサイゲイは、愚かにも根っからのテンベイ信者だった。

承土軍出現による状況変化を知らない状態でありながら、彼はテンベイの出撃を信じて耐える事を全兵に強いた。


 盲目的な将は厄介だとは言うが、ナイツにとって今のサイゲイがそれに当たっている。


(テンベイも要所にこういった将を配属する辺り、多少なりとも人を見る目がある訳か)


 敵の数が倍になって尚、下がらぬ士気を前にしたナイツは、面倒臭そうにホゥロ城と守備隊の面々を一瞥した。

将の言動が兵の士気に影響する事を知る彼が、部下の手前で感情を顔に出すほどに、ホゥロ城守備隊は奮戦している。

差し詰、サイゲイ配下の兵達も将に似たテンベイ信者なのだろう。

味方であれば心強い事この上ないが、敵である以上は非常に面倒な存在だと言えた。


「……韓任に続いて俺も突入する。涼周達にはその隙を突く様に伝えてくれ」


 東から猛攻を仕掛ける韓任に呼応して、南から攻め上がるナイツ。

隊長と副隊長。二人の猛者が先頭に立つと、輝士兵は弥が上にも心を奮わせる。


 然し、地形を巧みに利用して築かれた丘上のホゥロ城は、守備隊の士気が高い事もあって容易には揺らがない。三分の一の戦力で良く善戦していると感心できる程だった。


「正門が突破できたぞー! 一気に突っ込めー!」


 それでも連合軍の数と質を前にしては、守備隊は徐々に劣勢に陥る。


「見られよ涼周殿。どうやら韓任殿がやった様だ。我等もこの機に乗じるべし!」


「ぅん! みんな、出る! お城落とす!」


 韓任が先頭切って東側の正門をぶち破り、城内に入って北側と南側に兵を回すや否や、北側に布陣していた涼周と楽荘が一番に応えた。

二人はカイヨー兵二千に号令を掛けて本格的な攻城にでると、ナイツや韓任同様に自らも戦列に加わって守備隊と刃を交える。


「サイゲイ様、北の敵が門に殺到しています! 守備隊から援軍の要請です!」


「三百人を向かわせろ。北と西の敵だけは何があっても城内に入れさせるな。奴等は飛刀香神衆の兵だ。狭い城内に入られたら、奴等は手が付けられなくなるぞ!」


 カイヨー兵の強さは、この心角郡にも轟いていた。

実際、サイゲイが言うように、樹海戦では輝士隊の精鋭よりもカイヨー兵が圧倒的に強く機動に長けていた。

軽い身のこなしで防柵や樹木などの障害物を避けながら進み、銃弾よりも正確な命中率を誇る短刀で敵の守兵を先んじて射殺し、慣れた動作で城の土壁を乗り越える。


「おおし! カイヨー兵達が城内に入ってきた! 俺達も負けられねぇ!」


 突撃から数分と待たず、涼周隊先鋒は城内へ侵入。韓任が回した輝士兵と共闘して北門を開けてしまう。

城内が韓任隊の突入によって乱れていたとは言え、それを抜きにしてもカイヨー兵の攻城戦は無駄のない玄人然としたものであった。


「無念……! もはや我等の負けは確実か。テンベイ様、御力になれず申し訳あり…………おおっ!」


 櫓上にて指揮を執っていたサイゲイが、敗戦を覚悟してテンベイのいる樹海深部に目をやった時だ。本城のある場所から三本の狼煙が確認できたのだ。


「おお……おぉ! 皆の者喜べ! テンベイ様の本軍が此方に向かっているぞ!」


 彼の激励に守備隊の士気は跳ね上がり、逆に連合軍は動揺に包まれた。


(……ちっ、もう来たのか!)


 ナイツは心の中で舌打ちし、こういう時だけ登場が早い敵を忌々しく思った。

しかも高所に居たとは言え、サイゲイがカイヨー兵の索敵を出し抜いてテンベイ本軍の動きを察知した事が、余計腹立たしく思えたのだ。


「輝士兵一千は俺とともに来い! メスナと合流して新手に当たるぞ!」


 韓任や涼周達に城攻めを任せたナイツはメスナとの合流を図り、ホゥロ城陥落までの時間稼ぎをしようとテンベイ本軍の迎撃に向かった。


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