表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大戦乱記  作者: バッファローウォーズ
心角郡平定戦
119/448

二股口広場


 旅人たる楽荘兄妹が不審者として襲われる程に、連合軍はホゥロ城へ近づいていた。

嘯桂樹海の西側入口である多樹集落の道よりも広く、進軍に適している烈菜集落の道を進んでいる事も影響して、ナイツ達には体感的な距離が短く感じた。


「ナイツ様、あれがホゥロ城です。守備兵は三千ほどだとか」


 先の空色すらも隠す木々の天井が開けた場所で、連合軍の諸将は敵拠点を視界に納める。


 だが、今いる場所からはホゥロ城の上半分程しか確認できなかった。


「ふむ……これ以上に開けた場所はないだろうか」


 ナイツは道案内として同行している烈菜集落の民兵に尋ねた。


「ここより更に南に下った所に、大きく開けた広場があります。そこで道は二股に別れ、右手側の道はホゥロ城に続き、奥に続く道は樹海の深部に向かっています。ですがその広場には関所が築かれ、千名の守兵が配備されております。二股口の広場へ進むとなると、ホゥロ城攻撃に先立った戦闘になってしまいます」


 話を聞き終えたナイツは、その広場こそがホゥロ城攻略の鍵と見た。

彼は諸将に自らの考えを公表し、皆の意見を求める事とする。


「広場を占拠してそこに本陣を築きたい。ただし、戦列が街道に沿って延びきる事が懸念される。敵の出方にも迅速に対応できる方法はないだろうか?」


 ナイツの問い掛けに、早速飛昭が答えた。


「輝士隊の方々は広場奪取と本陣設営に当たってください。広範囲の索敵とホゥロ城兵への対処は俺達が行います。上手くいけば、討って出てきた奴等を伏兵で倒せるかもしれない」


 飛刀香神衆は奇を突く戦法と裏方の軍事行動が一流だった。

彼等の本拠地たるカイヨーも、森や山の多い地域であり、同地で育まれた経験が今の実力の基となっている。


 飛昭の次は韓任が意見を述べる。


「私が街道の守備とホゥロ城への攻撃に当たります。本陣設営完了までは守りに徹し、以降は攻めに転じて攻撃を行います」


「よし、では俺とメスナが広場の占拠に当たる。母上と涼周とヤグゥは烈菜集落南側入口に布陣してください。楽荘も妹さんの身の事を考えれば母上達と一緒の方が良いだろ」


「退路の守備ね。了解」


「降将の私なんかにこれ程の大役を……慎んでお受けします」


 キャンディとヤグゥは快諾し、楽荘も妹の身を想えばこそ後方に回る事を良しとした。

周囲の警戒は飛昭達に任せ、攻守ともに重要な役には韓任を当てる。


 そしてナイツとメスナが二股口の攻略を受け持ち、涼周はキャンディとともに後方待機となるのだが、そこで涼周一人だけが反対した。

ナイツと行動をともにすると言って聞かないのだ。


「うぅん……でもな涼周。正直に言って、俺は樹海戦が初めてで、何が起こるか分からないんだ。だからこそお前は安全な場所に居てほしい」


「ぃや、にぃにの傍、いる」


 涼周は飛昭の馬からナイツの馬に移り、そこから動かなくなってしまう。


「……参ったな。どうしましょう母上」


 困ったナイツお兄ちゃんはキャンディに助け船を求める。

然し、キャンディに先んじてナイツに進言したのは楽荘であった。


「ナイツ殿、妹は集落に預ければ問題ない。故に我が涼周殿の護衛に回ろう」


「おお! それならば安心だ。涼周、俺は先陣を切るから、代わりに楽荘の馬に乗りなさい」


「ぅん、分かった」


 涼周はナイツの馬上から楽荘の馬に飛び移る。

楽荘は前に涼周、後ろを白髪の美人妹と挟まれた状態になった。


「……私から見ると、安心できない構図なんですけどね……」


「あらあら前後に花じゃない。羨ましいわ。ちょっと楽荘殿、席代わってくださる?」


 メスナは疑念の眼差しを向け、キャンディは羨望の眼差しを向けた。


 ナイツは溜め息混じりにそれを制止し、楽荘をフォローしようとする。


「……母上もメスナも、変な事を言ってないで。楽荘は多少……多少…………筋肉質で時々全裸になるだけだから」


 然し、ナイツは言葉に詰まった。フォローしようにも、彼の脳裏には鮮明と楽荘の変態具合が写し出されており、それが盛大な邪魔をしてきたのだ。


「…………全員、行動開始! 武運を祈るぞ!」


(あの若が逃げた!? よっぽど言葉が見付からなかったの!)


 ナイツはこの場の会話を強制的に打ち切った。

メスナは内心の衝撃を隠しきれずに驚きの色を表すものの、一方の楽荘は別段気にする様子もなく、キャンディの背に妹の身を託していた。


「さあ行きましょうか妹ちゃん。私の体にがっちりと、ぎゅっと掴まっててね」


「はい。不束者ですが、宜しく、お願いします」


 こうして連合軍は広域に軍を展開し、ナイツはメスナ及び輝士兵四千に加え、涼周と楽荘を率いて街道を南に進撃する。


 暫くしてテンベイ軍の関所が姿を現した。


「あれが敵の防衛線だな。何時も通り俺達が突っ込む! メスナ隊は援護してくれ!」


 関所に向かって突撃するナイツ隊の騎兵一千と歩兵一千。後に続くメスナ隊二千は援護射撃と遊撃に回り、巧みな連携を以て敵を圧倒する。


「おおぉ! この程度の柵で我が進撃を阻めると思うてか!」


 前衛に躍り出た涼周に従う形で楽荘も突撃を敢行。テンベイ軍の防柵を片っ端から破壊して行き、ナイツに劣らぬ戦働きを見せていた。


「ふははっ、相変わらず強い奴だ。皆も楽荘に遅れを取るな!」


 ナイツの檄が輝士兵を奮わせ、テンベイ軍にとって最悪の流れを生む。

両隊の激突から僅か三十分後。関所の守備兵は一方的な敗走をきたし、ナイツ達は軽い追撃を兼ねて広場を奪取。直ちに陣地の設営作業に移った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ