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大戦乱記  作者: バッファローウォーズ
若き英雄
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全ての始まりの日

始めに、この小説は初心者が書いた作品です。

誤字・脱字・誤った文法などがあるかと思います。


「最後に、今から私が記すものは私が広く長く見聞した史の中に於いて、格別に熱くなるものである。

西の最果ての大陸にて私はあの御方に敗れた。私は彼の、彼は私の眼を見た。

そして互いに理解できない唯一の存在だと笑い合う。


これより記す最後の章は私の心を最も惹き付けた英雄の物語である」



人界歴四百八年 黄梅の月 中枢大陸 張軍領土 白優城


 日が傾き始め、城内の街が灯し出される。いつもと変わらぬ夕日を浴びながら今日も終わりが近付いたと民は家々の帰路につく。

ただ今日は一つだけ普段とは違う事があった。城内に兵士の姿が全く見えないのだ。

白優城は大陸中央の群雄・張成漫率いる張軍領土の最西端に位置する。

敵勢力と隣接する重要な防衛拠点である白優城には、常時多くの兵士が配属されている筈だった。

 

 数人の兵士が息を切らして東門へと走って行く。が、どの兵士も自分達が衆目を集めている事に気付いていない。その様子に民は何か良からぬ変事が起こるのではと不安に顔を曇らせた。


 完全に日が落ちた頃、それは突然に起こり、城内の全ての民から度肝を奪った。

四方に巡らされた城壁の外から猛々しい喊声が上がり、何の知らせもないままに戦が始まったのだ。

城内の民は大いに動揺し、右往左往から一刻と待たずしてあちこちで暴動が起こる。戦時中、城内の治安維持を役目とする民兵主体の自警団でさえ何も伝えられておらず、暴動鎮圧どころか召集すらままならない。


(城内警備の兵まで城壁に回すとは……敵が迫っていながら、主力となる将兵が呼びかけに応じなかったのか。その上で民への対処に手が回らず放っている。 ……相当やばい状況だぞ)


 黒衣を身に纏った青年は想像以上に深刻な事態を誰よりも早く理解した。

旅人と言う名目で仲間達と共にこの地に現れた彼は、若いながら一行の中で最も戦経験を積んでいる。

 青年は自分が攻める側であればと西門のある方を向いた。

喊声の量及び大きさ、軍の発する熱量、敵軍の進軍路から、本隊と思われるのは東側を攻めているのだろう。城将もそれ故に兵の多くを東側に集めた筈。


それを踏まえて自分ならば、多くの兵で東側を攻めると見せつけて守手の注意を引き、精鋭部隊を西門に回して一気に攻略させる。消耗戦となる東での戦闘を避け、守備の手薄な西側を錬度の高い精鋭部隊が攻めれば、たとえ同兵数であっても質の差で勝るからだ。

更には四方の城壁の中で最も多くの兵を配しているであろう東壁と真逆に位置する西壁は、地続きの城壁であっても容易に援軍を受けられない立地上の弱点がある。


 攻め手の将が自分と同じ考えならば西壁の上には既に多くの敵兵が登り、危機的状況にあると思った矢先であった。


「もう抜かれたのか‼」


 黒煙を上げて燃え盛る望楼と大きく開け放たれた城門が遠目に映る。

街中を我が物顔で疾走する騎兵の小隊は逃げ惑う民衆を槍で串刺しにし、後に続く歩兵大隊は家々に火を放ちつつ落花狼藉の門をも潜ろうとしていた。


 城壁の陥落から城門の突破までが冗談で済ましてほしい早さである事に、青年は動揺の色を見せざるを得ず、危機を通り越して早くも決定的状況下にあると把握した。


「あっちには……殿が‼」


 仲間の少女が青年の視線を追い、民が蹂躙されている光景を目にして我に帰る。

そして次の瞬間、少女は強弓から放たれた飛矢の如く勢いで西に向かって走り出した。


「義弟は西街区に居るのか⁉ ……って聞いてないな、あの姫さん」


 青年は他の仲間達と共に少女の後を追う。

手に持っている細長い布の包みの端を握り締め、紐を解いて包みを広げる事はせず、先端を引き伸ばす様に引っ張り、布を破り捨てる。

中から現れたそれは、義弟と呼ばれる者が持つ剣と対になる、純白の魔法剣だった。


 脱兎を追い抜く程の速さと跳躍力を遺憾なく発揮して敵兵の合間をすり抜けていく少女を目で追いながら、青年と仲間達は敵中を切り進む。


 青年も少女も他の仲間も、今はある人物の為だけに駆けた。

普段であれば民に手をかける悪鬼を一人残らず殲滅せしめる彼らが、目前で子供や老人が殺される寸前であっても、女性が血と涙を眼に浮かべながら凌辱されていても、屋内に逃げた大勢の民が焼き殺されようとしていても、地獄以上の地獄絵図と阿鼻叫喚の世界が顕現されていても、今だけはある人物の事しか頭になかった。


(殿……! どうか、ご無事で……‼)


 敵兵の群れを潜り抜け、雑林の中にある忘れられた神殿へ向けて更に足を速める少女。近付くにつれて自らが「殿」と呼び慕う人物への想いが強まり、更に更に足が速まる。

雑林が見え、神殿から発せられる得も言えぬ雰囲気を感じた時、神殿の方から別の少女の悲鳴が上がり、同時に巨大な一筋の赤光が天を貫く。目に映り、肌で感じれども音はなき赤光は、白優城内外の全ての者の視界を占領し、その脳裏に深く刻み込まれた。


 「赤き惨劇の光」


 張軍同士で行われた異例の戦争によって殺され、犯され、奪われ、恐怖に震えた民衆は戦を一際彩った赤光をこう語った。

そして近隣の諸勢力は、突如として発生した正体不明の赤光や張軍同士の殺し合いから、この日の戦を「赤日の乱」と呼んだ。


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