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ココナッツライフ 〜猫の倍返し〜  作者: たくわん泥棒
2/5

2話 入学式

ようやく主人公のセリフがあります。



 「入学式」。これは誕生日やクリスマスと違い毎年あるものではなく人生のうちでそう何度も経験できないものだ。

 新入生はこれから始まるであろう青春に胸を踊らせ目を輝かし、在校生は卒業した学年を惜しみながらも新しく入ってくる者たちに想いを馳せる。

 親も親だ。普段は気にしないような桜の満開情報などをチラリと見たりして写真はどうだのスーツはああだの、忙しそうにしながらも活気に満ちている。


 そして俺もそれらの例に漏れず、友達が出来るかどうか、タイプの女の子が同じクラスにいるかどうか、高校の授業は難しいかどうかなど、いっぱしに悩みながらもなんやかんや言って新生活を楽しみにしていた。


……朝、変なことが無ければ。


 いや、楽しみであることは間違いない。間違えではないのだが、あまりにも強烈な経験だったのでずっと頭からその時の風景が離れられないでいるのだ。止まった空間、そして謎の電子音。あれは一体なんだったのだろう。夢か幻想か、今となってはなにも分からない。と言うか今じゃなくっても分からなかったが。


 でもまぁ忘れておこうかな。


 時々俺の体にないはずの刺青が動き出したり、自分が誰かに殺されたり、逆に誰かを殺したりなど、時間がちょっと止まるなんて屁じゃないほどの悪夢を見ることがある。恐らく誰しも同じような夢をみたことはあるだろう。そして、そんな夢を俺は今まで知らずのうちに忘れてきた。今回のことをそれら同様に忘れることなど容易い。


 そうだ、今日は入学式だ。髪も落ち着かせた。バッグも持った。笑顔の練習だってした。覚えておくのはそれだけでいいじゃないか。



 そう自分に言い聞かせ、今度こそ俺はなんのハプニングもなく無事校門をくぐった。



 その高校、つまり聖グローリー学園は都市部に立地しながらも豊かな自然に恵まれ、華やかさと静けさが見事に調和しているような学校だ。ドラマの撮影に使われる高校ランキングでも上位に輝き、もしその高校に入学したのなら最低でも一回はドラマの撮影風景が見られると言われているらしい。俺みたいに影に生きるような奴が本来馴染めないような校風だ。


 じゃあ何故俺はわざわざ死ぬほど勉強をしてまでここに来たのか。理由は一つだ。俺は「影に生きる奴」ではなく「影に生きた奴」で「光の中に生きる者」になりに来たんだ。


 どういうことか。それを説明するには俺が中学生の時まで遡らなければならない。


 俺は中学生の時、一つの信念を胸に秘めていた。「ぼっち」に生きる、と。何故そうなったかは分からない。ただ、一人でいることに強い欲求と憧れがずっと小さな頃からあったんだ。小学生よりも前の時代は日曜日の戦隊ものだって仲間と一緒に戦う正義の味方より一人でそれらに立ち向かう悪の手先の方が好きだったし、小学生の頃はみんなが黒いリコーダーを買っている中俺は親父に頼んで白いリコーダーを買ってもらったりしていた。今考えてみればそれは他人から認識されることへの憧憬の念の裏返しだったのかもしれないが、幼かった俺にはそんなことわかるはずもなかった。


 そのようにして時は流れ中学生になり、それでも俺は変わらずに一人であることにこだわり続けた。


 みんなは勉強を始める? 俺は始めない。

 みんなは部活に入る? なら入らない。

 男女で付き合う? くだらない。


 そう続ける間にいつのまにか周囲との溝が深まっていた。そりゃそうだ。みんなは友達を作りたい、仲間になりたい、人と繋がりたい、そう思って生きているのだから。周りの奴らは俺みたいな異分子なんか無視して、いや、排除しようとして仲間意識を確立し、異分子も異分子でそれを受け入れているように見える。そんなの格好の獲物だよな。


 徹底的にハブられ続け、ついに俺もあることに気づく。俺が本当になりたいものは「ぼっち」でも「孤独」でもなく、「孤高」なのだと。こんなクソみたいな奴らに次元を合わせる気なんてさらさらない。

俺は俺の時間を誰にも干渉されずに過ごしたいんだ。

誰からも認められながらも誰も触れられないような、そんな風になりたかったんだ。


 そして俺は()()()()()()()()()塾に通い、()()()()()()()()()勉強を始めた。中学生の奴らが入らないような進学校に入るために。そして新しい環境で孤高に過ごすために。


 これは持論だが、ぼっちは周りに「ぼっち」として認識された時点でそれはぼっちではなくなる。「ぼっち」とはすなわち孤独のことであり、孤高こそ本当のぼっちなのだ。


 いきなり孤高になるのは難しいんじゃないかって? 想像通り、孤独と孤高との間には高い壁がある。しかし、その高い壁は成績優秀で眉目秀麗、自分からは他人に決して話しかけないが、話しかけられた際には丁寧に接する、これらのことを徹底すれば案外簡単だ。幸い、()()()()()()()()ようなお洒落をすれば結構イケてる面をしている。後は勉強して学年トップになり丁寧に接しさえすれば、特別視され周りから勝手に心の壁を作ってくれる筈だ。しかもポジティブな方向にな。


……やっぱ難しいかも。


 いや、ここで弱気になってちゃダメだ、そう言い聞かせながら新しいクラスのドアの前に立った。1年C組、ここが俺のリスタート地点だ。


 決意して教室のドアを開け、一歩を踏み出す。うつむいてはダメだ。堂々と前を見ろ。


 俺からみて右に黒板があった。

 その下には教壇があった。

 そして教卓があって、机があって、椅子があって、窓があって……


 俺をさぞ待っていたかのような顔が約10人分あった。


「俺の彼女になってください!」


 男からのまさかの告白。


「……は?」

テンポと物語の両立が難しいですね。

有名作品とまでは言いませんが、もうちょっとうまくやりたいものです。


次話は2時間後に投稿します。二話の続きですね。

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