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ふたたび潜入

 翌日。今日はイツキも来るので、大河は一緒に部室に向かった。

 日曜のことがあったものの、気持ちの切り替えも早い大河は、もうあまり気にしていない風だ。

「昨日射撃練習で、真ん中に三十発中三発は命中させたぜ!」

 大河はあまりいい成績ではないにもかかわらず、嬉々として自慢している。

「成長してるね。前は三十発のマガジン撃ち尽くしても、一発命中するかどうかってくらいだったのに」

 イツキも苦笑いだった。

「へへっ、俺だって練習してりゃ成長するってもんさ!」

 大河は基本的に毎日部に来ている。

 ミユキに結構厳しいことを言われるものの、なんだかんだで楽しんで練習に勤しんでいた。フェンリルはどのメーカー製でもないオリジナルのABSだが、さすが父親の作ったものだけあるのか、大河のオペレーターとしての才能があったのか、大河はとてもうまく操っていた。

 初めてフェンリルを操縦してからもう一ヶ月以上はなるが、サポートAIの慣れもあって、手足のように自由にできている。

 もちろん、苦手な射撃は未だに大したことはないが。

「今日は真夜中峠に行くらしい。早く行こうぜ!」

 相変わらずのハイテンションで部室に向かった。



 岡山市中区からアクセスできるワールド。

 ここは都市型のワールドで、ほぼ全域が街中の地形となっている。大きな河川もあり、北部には山も連なるが、都市部からするとごく一部である。このワールドの東方面に東高のAPがある。

 この東高APからさらに東へ向かうと、ワールドの端まで行くことができるが、その手前に深い森の中で昼間にもかかわらず真夜中のような峠がある。そこを人は「真夜中峠」と呼んでいる。

 この峠の奥に、未だ完全に制圧されていないホテル型の建造物が存在する。そこはウイルスの住処になっている。

 そのホテルを人は「光の帝国ホテル」と呼ぶ。


「光の帝国って、随分と仰々しい名前だな」

 大河は、椅子の背もたれに大きく体を預けると、暇そうに天井を眺めた。

「あんたねえ、マグリットの「光の帝国」を知らないの?」

 それをミユキが、呆れ顔で見ている。

「マグネット? 磁石? なんだそれ?」

「あんたみたいなバカは久しぶりだわ」

 ミユキはガックリと額を押さえてうつむいた。

「なんだと! そこまで言うかよ」

「大河くん、あれはルネ・マグリットっていう画家の、この絵によく似てるからなんだ」

 イツキはそう言って、自分の机に置いていたタブレットでマグリットの「光の帝国」の画像を検索して表示すると、それを大河に見せた。

「へえ、この絵がそうなのか――って、なるほどそっくりだな。建物も形は違っても雰囲気出してるし」

 大河は興味深そうにその画像を見ている。建物の形状はまったく違うが、雰囲気はある。

「ホテルの周辺っていうか、峠は樹々がすごいからね。光が遮られて、完全に夜だし。なんかこう、迷いの森って感じ」

「ふぅん、なあ、この峠の先にゲートがあるんだろ。そこはどうやって開けるんだ?」

 大河の素朴な疑問にミユキが答える。

「それなのよ。ゲートの周辺には、開くための装置なりは見当たらないから。ずっと前からこのゲートを開ける方法を数多くの人が探しているわ」

「なんでないんだよ。もっとよく探してみれば……」

 今度はイツキが答えた。

「それでなんだ。そのゲートの鍵が、このホテルの中にあるんじゃないかと言われてるんだ」

「鍵……」

「そう鍵。ホテルも相当探索されて、未侵入エリアは限られてきているけど、それでもまだ見つかっていない」

「実は大河くんが入部する少し前に、入ったことがない通路を偶然見つけてね。探索してたんだけど、とんでもないウイルスが出て来て……一目散に逃げ出しちゃったよ」

「なんだよ、逃げたのか」

「何にも知らないあんたは呑気なものね。何が出てきたと思う? ラージニードルよ。あんな化け物、私たちじゃ相手にならないわよ」

 ミユキはヒヤヒヤものの逃走劇を思い出してキモを冷やした。

「そんなに強いのか? そのラージなんとかっていうやつ」

「強いなんてものじゃないよ。ライフルの弾は弾くし、手榴弾だってまともに効いていないんだから」

 イツキもあのときを思い出す。壁を破壊しながら、凄まじい勢いで迫り来るあの巨体は、下手をするとトラウマになりかねない怖さだった。

「でも先輩。またいつか、あそこに行きますよね」

「もちろんよ。私はあの先にゲートのスイッチがあると睨んでいるんだから」

 ミユキは当然だとばかりに答えると、難しそうな顔をして腕を組んだ。

 そんな間にも、東高のキャリアは真夜中峠を登っていき、まっすぐホテルに向かっている。


 そして再び「光の帝国ホテル」にやってきた。

 以前、初めて来た時は気がつかなかったが、建物の外も結構な荒れた状態で、激しい戦闘の跡がそこかしこに見られた。

 ふと正面玄関前が随分明るくなっていることに気が付いた。どこかのチームが照明を持ってきているようだ。

 さらに近づくと、何やら数機のABSとキャリアが止まっている。

 キャリアには「岡山南高校コンピュータ研究部」とあった。

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