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射撃は苦手

「おいおい、大河くん。よく食べるねえ」

 真奈美の父、高村修平はガツガツとよく食べる大河を嬉しそうに見つめながら言った。

「やっぱさ、頑張った後は腹が減るんだ。真奈美、おかわりっ!」

「はいはい」

 真奈美は大河が差し出した茶碗を受け取ると、すぐに山盛りに白いご飯をついで渡した。それを受け取ると、再びすごい勢いで食べ始める。

 大河は特に大柄な体格ではないが本当によく食べる。

「いいねえ、いいねえ! やっぱり男の子だねえ!」

 修平は、その食べっぷりに益々嬉しそうに大河を見ている。

「僕も負けてられないな。真奈美、僕もおかわりだ」

「えっ、お父さん……大丈夫?」


 食べ過ぎて苦しくなった修平を、大河と真奈美が部屋まで運んだ。

 その後、真夜中峠のホテルで行われた実戦練習の結果を真奈美に分析してもらうため、大河は真奈美の部屋に向かった。

 真奈美は机に鎮座する三十インチのディスプレイに、フェンリルを表示させ、各種データを見比べて思考している。

 大河が情報技術部に入ってABSオペレーターとして活動するようになると、フェンリルのメンテナンスなどのサポートをよくやってくれている。

 真奈美も既存のABSではないフェンリルに興味があるせいか、やる気満々の様子で、すでに大河よりフェンリルのことに詳しい。

「うぅん、特に射撃に関してABSには問題あるようには思わないわ。確かにオリジナルのABSだし、どこかに機能面で欠陥があるというのは、あり得る話だけど……このフェンリルに関しては特には問題ないと思う」

「ちぇ、そうか」

 残念そうな顔をする大河。どうやら、フェンリルの方に問題があるのではと思ったようだ。

「大河くん、ABSのせいにしちゃダメよ。それは……」

「わかってるよ。俺が下手くそなだけだろ。ちぇ――まあ、練習あるのみだぜ」

「わかればいいのよ、わかれば。うふふ」

 真奈美は少し悪戯な表情で微笑んだ。


 部屋に戻った大河は、机の上のパソコンを起動させた。

 このパソコンは、大河がABSのオペレーターを始めたと聞いたアメリカにいる母から、数日前に送られてきたものだ。

 大河はあまりパソコンを使ってアレコレするタイプではなく、これまでも自分のパソコンは持っていなかった。しかし、オペレーターをするなら必要だと母はすぐに送りつけてきた。

 パソコンのディスプレイに、フェンリルのメンテナンス画面を表示させる。

 多くのABSとは少し違う特徴を持ったABSだが、それがどう違うかなど大河にはよくわからない。

 ABSマニアみたいなイツキだったら、あそこが違って、このメーカーならココとソコが違うだとか、聞いてもいないのにひたすら喋り続けるのだろう。

 大河はトレーニングモードを起動させると、所持するアサルトライフルを表示させた。父の残したメモリーカードには、ライフルは三丁あった。

 今日も使った大手メーカー、ウォリナーのWーL2。

 ドイツメーカー、バルト・シュペーアのGS72。

 そしてフィンランドメーカー、レフトサーリのウコンバサラだ。

 WーL2は非常に著名で、特に米軍などで数多く使われているアサルトライフルだ。使っている一般人のオペレーターはとても多いので、イツキの勧めでこれをメインに使っていた。

 GS72とウコンバサラは使ったことがないので、試しにちょっと使ってみようかと思った。もしかして銃が合わなかったのでは、と考えたのだ。それで試し打ちをして、一番よさそうなのを使おうかと思った。

 銃を撃つには弾が必要だ。実物ではなくデータだけの存在にも関わらず、面倒な話である。

 部活の練習では部が用意したものを使っていたが、部活動以外ではもちろん自分で銃弾を用意しなくてはならない。メモリーカードに入っていたのは、三十発マガジンが三つあるだけだが、あまり使っていないのでまだ余裕で撃てる。

 L2ライフルはいつも使っているので、残りの二つをそれぞれ十発前後撃ってみた。その後、しばらく手を止めて画面をじっと見つめていた。そして頭を抱える。

 ――正直、どれも変わらねえ。そして、違いもわからねえ。

 自分でライフルを持っているわけではないため、使い勝手はそれぞれ違うはずだが今ひとつピンとこない。

 それに、自室にはパソコンはあってもヘッドユニットがない。部室のように、ワールド内に入り込んだような臨場感が得られず、本当にただのテレビゲームをプレーしているだけのようだった。

 だから実際に撃っているかのような感覚もない。これじゃ練習にもならないと、早々にやめてしまった。

 体を大きく仰け反らし、椅子の背もたれに体を預けた。そして一回、ため息をついた。

「やっぱり俺、射撃って向いてねえのかなあ……」

 やはり向き不向きがある。大河はあまり向いていなかった、そう言ってしまえば簡単だろうが、まだABSオペレーターを始めてからそんなに経っていないのだ。

 もしかしたらこれから上達するかもしれない。やっぱり厳しいかなと思いつつ、もう少しやってみようと再びディスプレイを睨んで練習を再開した。

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