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転生の式典

こんにちは!山瑞です。よろしくお願いします!

「トモヤ君、転生おめでとう!!」


さっきまでは確かに机に突っ伏して寝ていたはずだった。しかし今、俺は何かの建物の玄関に置いてある椅子に座らされていて、白々しい声と拍手が周りで起こっている。その声や拍手は姿勢が正しすぎるスーツ姿の男女から発せられていた。


俺は硬い石でできた椅子に座っている。そこから下に幅広の大理石で出来たような下り階段が続いていて、階段の下には二人のスーツ男が白くて長いテープを張っている。何かのゴールテープのようである。さっきの祝福じみた声を出した男女は、俺が座っている椅子の両側から階段を下りてゴールテープに至るまで、通り道をつくるように二列に並んでいた。両側にも後ろにもほかの人は誰も座っていないし、俺の名前はトモヤだからたぶん俺は転生したのだろう。


ここまで書くと、あなたは


彼等が俺の事を祝福してくれてるんだから、文句を言ってないで感謝したら


とか


この捻くれ者!


とか思ってしまうかもしれない。けれど、俺が白々しいと言ったのは理由がある。彼等はゴールテープの方を身体ごと向いて、「おめでとう!」とか言って拍手をしているのである。俺の方なんか眼球すら向いていない。ゴールテープの向こうから別のトモヤが歩いてくるかのようだ。しかしテープの向こうには誰もいない。車すら通らないだだっ広い道路が広がっているだけである。


拍手は鳴りやまない。もしかすると、ゴールテープの方を皆が向いて拍手しているのは、俺にそちらへ歩いていけという、無言の圧力なのかもしれない。それならそうと、こそっとでも言ってくれればいいのにと思いながら、椅子から立ち上がろうとすると、太った偉そうなおじさんが五人、ゴールテープのそばに出てきた。

それぞれ片手にタイヤ二個分くらいの大きさの鋏を持ち、胸には白いリボンをつけている。やがておじさん達はテープのこちら側に俺に尻を向けて行儀よく並んだ。


「今日この時からトモヤ君の新しい人生がはじまります。それでは先生方は1、2、3でテープカットをお願いします。1、2、3!」


確実に俺の姿が見える場所にいないであろうアナウンスが流れると、おじさん達はそれに合わせてテープを切り、列をつくったスーツ達の拍手が突然大きくなり、そして止まった。


太ったおじさん達は最後まで俺の方に尻を見せながら、ゆっくりと立ち去り、スーツも列を崩し、俺の座る玄関から、建物に入っていった。


「それではトモヤ君の今後のご活躍をお祈りします!」


そのアナウンスが聞こえたときには、俺の周りには誰もいなかった。


俺は思った。どうやら転生というものを自分は甘くみていたらしいと。

ばあちゃんは次回登場します!

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