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題名未定  作者: 冬ノ木
2/2

盗賊討伐の話2

俺は盗賊を引きずりながら集合場所へ歩く。

こいつ重いな。

引きずられるのが痛いのか盗賊は喚いているがそれは無視いていいだろう。

だが、逃走防止のため腱を切った以上は俺が持ってくのがスジってやつだろう。

しかし、敵はもういないとは限らないため警戒は怠ってはいけないから引きずる以上に体力は使う。

他の冒険者と合流するまでは安心はできない。

喚いている盗賊が仲間を呼ぶために騒いでいるかもしれないが、その時は位置的に集合場所に近いから合図と時間稼ぎをして増援を待ち返り討ちにすればいい。

3回も行商人を襲ったやつらだ。

それなりに頭も回るはずだから逃げの一手が普通だろうがな。

仮に悪くてもボスがいない以上は逃走に必死で助けには来ないだろうがな。

一応後ろの警戒をさっき助けた両手剣の冒険者に任せている。

けが人がおり、俺が捕虜を引っ張っている以上、後方を両手剣に任せるしかない。

けが人を中央に配置することで中央の安全確保をしているわけだが心元ないな。

獣や魔獣の類なら戦闘の音で逃げてるはずだが、よってくるとしたらかなりの強者しかない。

その時は、この盗賊とけが人を囮にするしかない。


俺は囮する予定の冒険者の状態を見る。

今回怪我をした片手剣の男はかなりきつそうだ。

女性冒険者の肩を借りてなんとか歩けている状態だ。

さきほど盗賊を倒したのは無理に無理を重ねたのだろう。

火事場の糞力ってやつだろう。

医者が言うには一時的な興奮が痛みや我を忘れて致命傷でも戦闘継続ができるらしいがその類だろう。

回復魔法で腕の回復をしたまではいいが、流した血も戻るわけではない。

しかも、回復魔法がまだ未熟なのかうまくいかなかったのかはわからんが、腕の抉れた状態が治っていない。

本来なら抉れた筋肉も治療されるのだが見た感じだと、切り取られた筋肉の上に正常な皮膚を無理やり貼り付けた歪な腕だ。

街に戻ったときに回復魔法で治れば良いが、治らなければ腕の状態からみて腕力に大きなハンデを負うだろう。

最悪同じ場所を切り取り回復魔法をかけて治すというのがあるが、それはこの冒険者次第だろう。

そんなことを、考えながらそのまま歩き続け森を抜けると見覚えのある冒険者たちが見え始める。


どうやら森の出たところで一旦集合していたらしい。

森を監視していた200cmくらいの筋骨隆々なのだが体中が毛で覆われた人間がこちらに気づいたようだ。

俺に近づきながら頬を掻いた後に合図を送ってくる。

ハンドサインだ。

一部の冒険者で組合やパーティーで個別で簡単な内容を決め、簡単な日常的な仕草で悟られたくない情報を教える。

極秘で会談する日程など決めたりするのだが、今回は違うようだ。

この意味は「組合」のハンドサインで「揉め事あり」か……

つまり、抜け駆けの馬鹿関係か。

「組合関係」で「揉め事あり」なんてあいつらか、金が不払いになるくらいだろう。

冒険者にとって大事なのは命と自由と金だ。他の事は些細なこと。

そう考えれば、あいつらは殺されても問題ないだろう。

自由に生きて自由にやって、他の自由を奪ったんだ。

それくらい覚悟の上だろ。

そう考えていると、毛むくじゃらが引っ張ってる捕虜に目を向けていた。

あー、こいつに盗賊運ばせればよくないか?

金だせばやってくれるだろう。

俺は組合のハンドサインで「生きている 小額依頼 運んでくれ」と合図をおくる。

毛むくじゃらはニヤリと笑うと、盗賊の足を掴んで持ち上げる。

おいおい、急に引っ張ったから足の間接はずれてらぁ。

盗賊は何も言わないって事は痛みで気絶したか、まぁ好都合だな。

馬車で暴れられたらかなわん。


「おい、逃走防止とはいえ足の腱を切ったのか?丁重に捕虜は扱え、首狩。こういったものは後々自分にも返ってくるもんだぞ。今回の場合は運び代がかかったと見るべきだろうがな。とりあえず、運び代は食事でいい。」


口に出してしゃべったらハンドサインの意味がないが、こういう小言を言うのはこいつらしいがな。


「お、おう。わかったが、それ以上の小言は勘弁してくれな。他のやつらに笑われちまうぜ。あと、そいつ足はずれたぞ?丁寧に扱うんじゃなかったのか?」


俺はそう嘯くと、毛むくじゃらは何言っているんだ?といわんばかりにこちらを見る。


「ん?こんなもん後ではめ直せばいいだろ?捕虜は見た目丁寧でいいんだよ。他はどうなっても別にかまわんだろ?傷がついたのが問題だろ。奴隷堕ちした場合は金が追加で入るんだぞ?」


「おいおい、盗賊は基本打ち首だ。金になるなら領主に渡して、領主が情報を得るために何かやろうとするからその情報の内容次第で追加で金が渡されるはずだ。」


「何かって?」


「言わせんなよ。恥ずかしい。」


拷問なんざ簡単に想像できるだろ?


そうこう話している内に怒声がここまで聞こえてくる。

相当揉め事が面倒くさいことになっているようだ。

まぁ、組合内での揉め事をよく仲介するこいつが場を納めにいっていない時点で察するべきところがあるのだが……


「面倒なことになってるな」


まぁ係わり合いにはならないようにしたほうがいいな。

さっさと街に戻って飯を食いたいね。


「あの……」


話ていると後ろから声がかかる。

ああ、そうか。忘れてた。


「あー、悪いんだが後ろの奴も運んでくれないか?一応魔法で止血は終わっているが血を流しすぎて歩けねーんだわ。」


俺が親指で後ろを指しながら言うと、毛むくじゃらは頷く。


「おお、いいぞ。首狩の。珍しいもんだな。首狩は必要でなければ基本一人で行動していると聞いていたが、パーティーを組むとは。趣旨変えか?」


「んな、馬鹿な。途中で拾っただけだ。」


「そうか、まぁいい機会だからパーティーを組んでもいいのではないか?」


「そりゃ、無理だ。俺の闘い方はパーティー向けじゃねーよ。」


「そうか?意外といい斥候<スカウト>や罠人<トラップマン>になりそうだが、そこはまた街に戻ったときにでも考えてくれや。」


毛むくじゃらはそういって、けが人を女性冒険者から受け取ると肩に担いで馬車へ向かって行った。


「あの、すみません。今のは……」


「ん?」


今まで黙っていた女性冒険者から急に声をかけられ、何が聞き逃してしまった。

それが伝わったのか女性冒険者はもう一度口を開く。


「えっと、今の冒険者?はどのような人なのでしょうか?かなり異質な感じでしたが……」


「あー、あいつね。獣人だよ、獣人。見たことない?」


「え?嫌、見たことはありますよ!ですが、耳が人のものでしたよ?」


女性冒険者は心外だったのか声を荒げて答える。

あ、これ助けたの失敗だったかもしれん。

武器が錫場、女性で冒険者、うちの組合にいてあいつへの認識がない。

だめだ、前二つはかろうじてセーフ。しかし、最後はアウト。

二つ目の厄介ごと発生だ。

まぁ、これは無難に答えて撤収だな。


「ゴリラの獣人だからな。ゴリラは限りなく人に近いらしい。だから、体毛を除けば耳など特徴的なものはないんだってよ。あぁ、そういえば腕力と握力が異常に発達しているだってよ。」


誰かから聞いたような話を女性冒険者に教える。

異常に発達した腕力によって組合のドアがなくなったとか、鉄のインゴットが握りつぶされたなんて誰もが知ってるけどな。


「へー、そうなんですか。」


女性冒険者らしき女性は相槌を打つ。

あ、これ知らない反応だわ。

回復魔法を撃つとして旅修行中の僧侶も考えられたが、余りにも丁寧口調過ぎる。

てか、普通の旅修行ならこんな討伐なんて参加しないわ。

で、あるとしたらどっかの貴族の娘ってところで、二人の男性冒険者が実は護衛の騎士ってところか。


「んー、じゃあ。俺は行くぜ。けが人に関しては後で組合によるといい」


軽く手を振ってその場を後にする。

先に馬車にでも移動しておくかな。

俺はそそくさと馬車に移動して、毛むくじゃらと合流する。

軽く二三ほど軽口をたたきながら会話しながら、さっきの女性冒険者っぽい奴を見ると、よくわからん奴らに絡まれているのが見えた。


「あいつらが揉め事の大本だ。」


毛むくじゃらがよくわからん奴らの説明をする。

つまり、抜け駆けした冒険者の集団らしいが-----


「あいつら、冒険者じゃなくね?え?待て。あいつらどこにいた。初めいなかったろ。」


どうみても、騎士の格好した馬鹿共がそこにいた。

フルプレートメイルに特徴的な剣と盾。

しかも、家紋付き。

あんなもんいたら、はじめから気づくわ。


「後から来たようで到着するなり即森に突撃したんだとよ。家紋見ろよ?隣の辺境伯の家紋だな。」


「あ、まじか。揉め事に関していろいろと察したわ。早馬は?」


「もうだしている。今日の夕刻までには街の領主に連絡、明日の明け方には伯爵あたりには連絡が届くかと」


あー、こりゃどうなるのかね。

今回盗賊を逃がしているから、相手国の兵士だったら開戦の発端になりそうだがな。

とりあえず、あの馬鹿共は無視だな。

どうせ後で処罰を受けるだろう。

俺はゆっくりと目をつぶり、体を休めることにした。

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