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再会

「こんな私でいいの」


彼女が長い沈黙を破って小さい声で囁いた。目の前の君は僕の初恋の人だ。初めて会ってから十年になる。出会いは中一の時、転校生の眩しい君に釘づけになった。大きな瞳。長い髪。華奢で折れてしまいそうな君から目を話すことが出来なかった。


普段は内気で内向的な僕が今でも信じられない行動に出た。転校してきてから三日後に僕は君に告白をした。彼女の答えは引っ越して来たばかりだからメル友からだった。中三になってから生徒会長に立候補した。彼女とはメル友以上の関係には発展しなかった。


彼女の名前は雫。雫も転校してきてから二年。学校にもなれて人気者になっていたこともあって副会長に立候補した。二人で仲良く当選をして楽しい生徒会が始まった。お互いを意識したのもこの頃からだった。二人で学校に残った放課後の生徒会室で僕はいきなりキスをした。真剣なんだ。そう言って抱きしめた。本当に夢心地の天国だった。


家に帰ってからもご機嫌だった。外交官の父と母の三人家族。夕食を食べ終わった後で母に呼ばれた。「なんか学校でいいことがあったの」そう母が言った。僕は別になにもないよと答えた顔は多分笑っていたんだと思う。お父さんからお話しがあるからリビングに来なさいって母が言った。

父からの一言で僕は固まってしまった。まさに天国から地獄だ。


「来月からモザンビークに行くことになった」「家族も一緒だ」僕は大声をあげた。「モザンビークって何処なんだ?」「絶対に嫌だ。おじいちゃんの家から今の中学に通う」言ってから考えたけどそれは現実的じゃなかった。学校は文京区で祖父の家は鎌倉。通えるはずもなかった。


次の日に学校で先生に話しをした。雫にも生徒会室で話した。その時僕は雫に言った。「待っていて欲しい」「必ず迎えに来る」「雫と結婚したいんだ」そう言った僕の言葉に彼女はそっと頷いた。少し経ってから僕はモザンビークへと旅立った。最初のうちは手紙やメールをしてたりもした。でも治安も悪い地域に行くことが重なりその後音信普通になってしまった。


十年後に日本に戻ったけど彼女は引越しを繰り返したらしく連絡がつかなかった。帰国して落ち込んでる時に中一の同窓会の話しがきた。僕が日本に戻ったのがニュースになって急に同窓会を開いてくれた。雫が来るわけがないと思っていたけど懐かしい顔ぶれに楽しい時間が過ぎた。「ごめ~ん」「仕事が終わらなくて遅れちゃった」そう言ったのは中学生のままの雫だった。


田中雫ですって自己紹介した君の苗字が変わっていなかったことが嬉しかった。「彼氏はいるの~」そう冷やかす声に「別れたばかりでフリーです」そう雫は答えた。僕を見つけて雫が隣に座った。それからたくさん話しをした。


目の前の君も暗い過去を知ったのは最近だ。でも僕の気持ちは変わらない。君の代わりなんてあり得ないからだ。実は彼女は一度結婚していた。二年間の結婚生活にピリオドを打ったばかりだった。僕のことを待っていたと言った。でも大学四年の時に大学で有名なモテ男に猛アタックされて卒業後に結婚。結婚後に元夫の暴力や浮気、姑との確執とかに疲れて離婚したそうだ。


同窓会から随分経ってからつき合うことになった。離婚のことを切り出すまでかなり時間が掛かった。離婚でもめてストーカーのようにつきまとわれた君は疲れ切っていたそうだ。


気分転換に同窓会に参加した。運命だったのかも知れない。彼女の離婚なんて関係ない。「こんな私でいいの?」雫の言葉に僕は「雫じゃなきゃダメなんだ」「雫がいい」「雫じゃなきゃ嫌なんだ」泣きながら「ありがとう」「待てなくてごめんね」っていう雫は子供みたいに泣きじゃくった。泣き顔を見せたくなくて背中を向けた雫に、僕は「待たせ過ぎてごめんね」ってバックハグをした。


ここまでたどり着くまで大変だった。


再会した同窓会にタイムスリップする。いや、その前に彼女が転校した日にタイムスリップして二人の童話について話そうと思う。


~ 続く ~




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