プロローグ
こんな時間に失礼します。新作です。
いつものスタイリッシュ警備員の作風とは、違う作品だと思っています。
過去投稿していた作品に、加筆、修正を行ったものとなります。
では、本編へゴー!
「き、貴様……! 噂のコードネーム【ブラッド】か……! かはっ!?」
「……」
黒服に身を包まれたサングラスの男は、動脈を切断され大量の血を流し床に崩れる。
それをじっと見詰める片目だけが刻まれている白面を被りし黒髪の男。
全身は黒く、フードつきのロングコートに赤いグローブ。
踵を返すと、先ほど殺された男同様首を切られた者や心臓を貫かれた者。どれこれも、一撃で命を奪われている。
男は、静かに死体が転がる廊下を進んでいる。
そんな時だった。
複数の足音が、こちらに近づいてくる。それにいち早く気づいたブラッドは、両腕の袖からナイフを二本ずつ取り出す。
そして。
「動くな!」
また黒服の男達だ。
こちらへと銃口を向けてくるが、それと同時にナイフを投げつけた。四本のナイフは見事心臓へと突き刺さり、七人中四人は即死。
「残念だが、遅い。始末は済んだ」
「き、貴様!!」
仲間が一瞬のうちに、四人もやられたことに動揺を隠せない様子の黒服三人。震えながらも、銃口を向けるのを止めない。
一方で、ブラッドは怯える様子もなく黒服達を見詰めていた。
「……」
「あいつを近づけさせるな! 撃てえ! 撃てええ!!」
発砲してきた。
恐怖に震えながらも、銃口から撃ちだされる
「ふっ!」
「ぐあッ!?」
しかし、ブラッドは臆することなく、前屈みとなり銃弾を回避。そのまま床を一蹴りし、黒服達との距離を詰める。
まずは、一人。
右手を槍の如く、鋭く……突き刺した。
「このっ!」
「遅い」
「ごはっ!?」
そして、もう一人を仕留める。
残った者達も、一撃にて完全に殺されている。やっと静かになったところで、腰が抜けて尻餅をついたまま震えている最後の一人へと視線を向けた。
「まだやるか? ……と、言っても戦意喪失しているか」
「あっ……あっ……あっ……!」
すでに、銃を捨て怯えるだけの一般人と化している。もう戦う気はない。白旗を揚げているようなものだ。
「た、たすけ」
「残念だが。俺の姿を見られたからには」
「―――へ?」
見えなかった。
黒服の男は、ナイフを投げられたことに気づいていなかった。徐々に痛みが、彼を襲い、そして……白目をむいて倒れる。
「……帰るか」
彼の名は、赤阪晃。元々は、ただの少年だった彼だが。とある理由から、異世界へと転移し……暗殺者をしている。
今は、その暗殺者としての任務だった。
今回は、娘が連れて行かれ、体を犯された挙句、最後には殺されたことを知った母親から、とある資産家の男を「殺して欲しい」と依頼されたのだ。
依頼で殺した男は、他にも色々な娘を連れ去り、同じようにやっていた。狂っている男だ。
あの母親の憎しみで歪んでいた表情。今、思い出しても凄まじいものだった。大事な一人娘を、無理やり連れ去られ、犯され、最後には殺された。
しかも、手に入らなかった場合は、どこかのゴロツキを雇い、襲わせる。
依頼をした母親の気持ちは痛いほど理解できた晃。
(これで、あの人を含めた家族の人達も報われるだろう……)
晃は、夜闇を照らしている満月を見上げ、姿を消した。