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第6話 どんなにどんなにどんなにどんなに

風見真紀(かざみまき)は困っていた。


学校の秩序を──

守らなければ!




ある月末の放課後。

「鏡淵さんちょっといいかしら」


「なんでしょう?風見先輩」

2年の教室に来たのは3年の風見真紀。風紀委員長だ。長い髪を低い位置で2つにまとめ、おさげのようにしている。スカートは膝が隠れる程度に長い。


「校則違反の罰なのだけれど、50枚の反省文を書いて貰っても良いかしら?」


「こ、校則違反!?」

身に覚えが無いし、50枚は重すぎる!


「えぇ。能力の無許可使用ね。校則はいくつもあるけれど、私の能力だと1つしか数えられないからその違反の罰ね」


「能力⋯⋯?」


「忘れちゃった?私の能力は風紀委員(オーダー・クラッシュ)──。相手に制約を押し付け、それを破った分だけ言うことを聞かせる事が出来るの。私が全校生徒に押し付けた制約は、学校内での能力の無許可使用禁止。あなたは今月すでに50回破っているわ。過去最多ね」


校則なんて知らなかったし、他の生徒も結構破っているのではないだろうか。


「反省文私だけなの?他の子も能力使っているのを見かけるんだけど」


「告げ口かしら。自己保身?結構卑怯なのね」


「今月の違反数1年生40回、2年生190回、3年生100回なの。先月の倍以上なのだけど、理由に心当たりある?」


「あります⋯⋯ごめんなさい⋯⋯」

素直に謝る京子。Nwitterでの呟きが原因で京子と戦う生徒が増えたせいだろう。


「それじゃあ、風紀委員を発動させるから、反省文50枚で期限は明日の朝まで。頑張ってね」


どうやら能力が発動したらしいが、特に体に異変はない。


帰ろう。家で50枚頑張ろう──




帰宅した京子は机に座る。

あっ、なんか凄い反省文書きたくなってきた!今すぐ書かないと気持ちが悪い!!これが風紀委員か!


「京子お姉ちゃん漫画貸してくださいな」

浴衣姿の文夏は京子の部屋に入ってくる。プライベートなんて御構い無しとでも言うようにノックはしない。


「いいよ。好きに持ってって」


「なに勉強なんてしてるんですかね?テストでもカンニングし放題の能力だってあるのに」


「そんな事に能力使わないから!あとこれは勉強じゃなくて反省文だから」


「警察のお世話にだけはならないでくださいね。迷惑なので」


「そんな大事(おおごと)じゃないから⋯⋯」

話しながらも手は止まらない。そのまま放課後の出来事を文夏に話す。


「なるほどなるほど。つまり見せしめってわけですね。風紀委員長も甘いですねー。全校集会で晒し者にするぐらいしないと効果ないでしょうに。今度京子お姉ちゃんをステージで見世物にするよう進言しておきますね」

京子のベッドの上で漫画を読みながら恐ろしい事を考える。


「文夏が風紀委員長じゃなくて良かったと心から思うわー」

本当に実行しかねない。まぁ文夏は能力を何も持っていないので強制力は無いが。


「てか風紀委員の能力を上手く使えば世界だって取れそうだけどな」


「使う本人にも制約があるみたいですよ。私よりも京子お姉ちゃんの方が詳しいはずですけどね」


「なんで俺?」


「あれ?閲覧許可(ブラウザ・チェック)使ってないんです?」


「うわっ知らなかったわ!こんな能力まで持ってたんだ!?」

閲覧許可を使用した京子は文夏の頭の上に能力とその情報が出ていることを確認する。


【能力:無し 情報:能力は奪取されている】


「それ、自分の腕がある事を知らない様なものなんですけど⋯⋯。でもまぁ後から沢山付け足した訳だし、忘れもしますかね」


「風紀委員の能力知りたいんだけど、風見さんの事直接見ないと無理?」


「宝の持ち腐れ過ぎて笑えませんね。千里眼(フォレキャス・アイ)でも、自分を鏡で見ても大丈夫ですよ。京子お姉ちゃんは全人類の能力持ってるので」


「それマ?」

ちょっと自分の事舐めてた。能力の事知らな過ぎだろ!!


「元々私が持って産まれた能力は文明神(ヒストリー・ラブ)1つでして、この世界に存在している能力を手に入れる事ができる能力ですね。なので人類が栄えれば栄えるほど私の能力は増えていくのでした!まぁそれも奪われちゃいましたけど」


どうやら今まで俺が使っていた能力は世界の誰かさんが持っている能力らしい。


「死んでしまった人の能力も失うことはないので、閲覧許可で鏡を見れば1000億個以上能力の確認出来ますよ。検索機能も付いていて大変便利ですし!」


神様がいつどうやって産まれたのかは分からないが、流石神様の能力ってところだろうか。


チートっぷりは充分に分かった。とりあえず鏡で風紀委員を検索する。


【能力:風紀委員

情報:制約の押し付け、違反者への罰の執行

条件:お互いの同意、自傷行為】


制約自体は押し付けられるが、罰の発動には同意と自傷行為が必要なのか。反省文を書きたくなるまで時間が掛かったのは風見さんが発動条件を満たしてなかったからかな?


俺のせいで自傷行為をさせてると思うと申し訳ないな⋯⋯

手は反省文を書き上げながら千里眼を使って風見さんを探す。




いたいた⋯⋯この部屋か。

京子の目に広がるのは明かりが消され、物が少ないシンプルな部屋。能力によってその部屋にいる感覚に陥る。


ベッドの上にうずくまる風見真紀。何故か産まれたままの姿だ。


待て待て待て、これ見ちゃいけないやつじゃないか⋯⋯?しかし何故か目を離すことが出来ない。怖いもの見たさだろうか。


枕元にはハサミ、コンパス、ナイフ、ピアッサー、画鋲が転がっている。

「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯京子さん⋯⋯んっはぁ」


京子の手は止まっていた。どうやら既に50枚書き終わっているようだ。


しかし風見真紀の手は止まらない。

「京子さん⋯⋯やめて⋯⋯痛いっ、あっ///」


どうやら能力と相性が良いらしい。

京子は反省文をカバンに突っ込んで文夏の隣で漫画を読み始めた──




翌朝。

反省文を渡しに風見真紀に会いにいく。


「ごきげんよう風見先輩」

「ごきげんよう鏡淵さん」


風見先輩、改めてよく見ると可愛いなぁ。タイツ越しの足の肉感、長袖のダボダボの制服から覗く小さい手、長い髪で隠れる首筋、猫のようなつりあがった瞳。どこを見ても最高だ。一体昨日はどこを傷つけていたのだろうか。


「そんなに見つめないでくれるかしら?」

ほんのりと顔を赤くしながら睨みつける。


「ごめんなさい⋯⋯これ、反省文です」


「ん。受け取ったわ。以後気を付けてね。一応掲示板に違反者のリストとあなたを罰した事載せるから。悪意ではなく、抑止するためだから勘違いしないでおいてね」


「ひとつ聞いてもいいですか?」


「何かしら?」


「なんで先輩は風紀委員長になったんですか?名前も能力もぴったしですよね」


「そんなの秩序を守りたいからに決まってるでしょ。名前も能力も関係ない。校則違反は許しません!ただそれだけよ」


それにしては校則違反を見逃し過ぎな気はするが⋯⋯本人がそう言うならきっとその通りなんだろう。


「違反者が多いとほんと困っちゃう」

その表情はどこか嬉しそうだった──

2018/03/03 23:13

タイトル修正。


2018/03/05 02:02

誤字修正。

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