第3話 美少女とは世を忍ぶ仮の姿
少しだけ淫夢が含まれています。苦手な方は注意してください。
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俺、鏡淵京介は男子校に通っていた。
いつ壊れるか分からないような学び舎に、似たり寄ったりな顔の野郎ども。あとちょっとクサイ。口を開けばホモと言い、口を閉じても野獣の眼光。
しかしーー
私、鏡淵京子は女子校に居た。
見たこともない豪華な校舎に、アイドル顔負けな美少女たち。あとめっちゃいい匂い。口を開けばごきげんよう。口を閉じればミロのヴィーナス。
これが男女の格差社会かーー
「ごきげんよう、京子様」
「ご、ごきげんよう」
教室の後ろ側、出入り口付近に席がある京子は入ってくる教室の生徒全員と挨拶をしていた。
ごきげんようノイローゼになりそうだ⋯⋯
心なしか教室中から視線を感じる気がするし、予鈴が鳴るまでトイレで過ごそうーー
ガタッ
膝裏で椅子を押したため、大きめな音がなるが、京子はそれを気にせずトイレに向かう。
ガタガタガタッ!!
なんでだ⋯⋯
なんで全員付いてくるんだ⋯⋯
教室に居たクラスメイトたちはさりげなーく京子の後ろを付いて来ていた。
まさかトイレの中にまで着いてくるのか⋯⋯?
目の前にはいつもと違う赤いマーク。躊躇するのは一瞬で、すぐに女子トイレに飛び込んだ京子の心配は杞憂に終わる。
念のため個室に入り、iPhoneで暇を潰す。
こういう時はNwitterを無駄に更新するのが良いだろう。
【トイレ綺麗だなぁ】
「送信っと」
ピコンッピコピコピコピコンッ!
【トイレ綺麗だなぁ】
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「なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」
人生で1番バズってるよこれ!こんな経験初めてなんですけど!?
コンコンッーー
「はいっ!入ってます!!」
驚いて少し声が裏返った。トイレの個室埋まってるなら早く出ないと迷惑かな⋯⋯。
「Nwitter見たので、入ってるのは知ってますよ。京子お姉ちゃん」
「ふみかぁぁぁぁぁ!学校怖いぃぃぃぃ!」
個室のドアを開けて文夏に抱きつく。やばい、すごく落ち着く⋯⋯
「よしよし。京子お姉ちゃん。どうちたんでちゅか〜?」
「クッソどうでもいい呟きがめっちゃ伸びてるの〜。あと教室中からの視線が痛い⋯⋯」
「あー、それはこれのせいですね。この呟きをご覧下さいませ?」
心当たりがあるらしい文夏は、スマホをいじり始めた。その手を、文夏にくっついたまま見る。そこには京子の呟きが表示されていた。
【彼女募集中です!】
リヌイート3000 いいね2800
「なにこれ。呟いた覚えないんだけど⋯⋯」
まさか誰かの能力か?電脳人形的な?
「私が呟いておきました」
「何してんのーーーーー!!!」
「昨日、私のことフォローしましたよね?実はあれフォローボタンが連携のボタンに偽造してありまして、アカウントを一時的に乗っ取らせて頂きました。いやー、元々学校中から人気のあった京子お姉ちゃんが彼女募集中なんて呟いてたらそりゃもう滾っちゃいますよね」
絶句ーー
ツッコミが追いつかない。
「京子お姉ちゃんのタメを思ってやってあげたんですからー。感謝して下さいよね?」
「嬉しくないわ!こんなん、ただの特殊性癖持ちの変態じゃないか!」
女の子同士で恋愛したいと全世界に呟いてしまったらしい。
「そうですか?男の子とそういう事したいんですかね?自分の中身は男なのに、そうだったんですねー」
冷静に考えるとその通りである。男よりは女が好きだ。その気持ちは身体が変わっても変わらない。あれ?これどっちも詰んでね⋯⋯
「それじゃあフォロワーの皆さんにサービスしましょ。地道な活動が大事なんですからね」
「サービス⋯⋯?」
「今回はオーソドックスに自撮りにしましょうか。本文には自撮りに全く関係ない文を入れるのをお忘れなく」
もう考えるのも喋るのも疲れた。自撮りで話が終わるならそうしてしまおう。
手に持っていたiPhoneのインカメで自分を撮る。そして本文はこうだ。
【昨日はネトゲしすぎちゃったなぁ】
送信を押したその瞬間。いいねの数は全校生徒の数を優に超えていた。