第3話 チートスキルご馳走様です
「鏡の中の世界だって!?つまりどういうこと!?」
京介は驚きの表情を浮かべるが、場の雰囲気に合わせただけであり頭が追いついていない。
「その言葉の意味通り捉えて下さい。これ、人間に言っちゃ駄目なんですけど、事情が事情なんですよね!」
「鏡淵京介さんは川で溺死して誰にも気付かれることなく死ぬ予定でした。でもちょっと間違えちゃーー予定外の事象が発生しちゃって!!」
一瞬、間違えちゃってとかいう聞き逃せない言葉が聞こえた気がするが、気のせいだろう。神様がミスなんてしないはずだ。
「京介さんがいつも見ていた鏡の中にはもう1つ似た世界がありましてですね。その世界ってあなた達の世界とは反転してるんです。全部が全部反転してたら生きづら過ぎてまじ卍なんで、適度にですけど。京介さんが京介ちゃんになってるのはそのアベコベのせいですね。ちなみにこっちだとあなたの名前は鏡淵京子ちゃんって言うんですよ」
早口で説明をまくし立てる自称神様。言葉づかいがJKっぽい。
「鏡の中ってのは分かったけど、なんでそんなとこに俺がいるんだ?ここ天国?」
頭では理解したつもりでも実感が湧かないため、体が理解できていないようである。
「私悪く無いんですけど、アニメ見てたら面白すぎて、違うボタンポチッちゃって。鏡淵京子ちゃんの魂、天に召しちゃいました。てへぺろ」
言い訳が苦しすぎる!絶対しちゃいけない間違えしてるよこの神様!!
「それでですね、川で溺死しそうだったあなたの魂をこっちの京子ちゃんの肉体とくっつけて、無事辻褄を合わせたわけです。実際死んだのは京介さんの肉体と京子ちゃんの魂ってわけです。あ、これ他の神様には内緒ですよ。怒られちゃいますので」
「自分の間違えをどうにか誤魔化そうと必死ってことは分かった。つまりこれからはおっぱい揉み放題ってこと?」
「うわっキモ⋯⋯まぁ、そういう事です。それじゃあ第二の人生、エンジョイして下さいね」
ドアに向かって歩き始める神様。入ってくるときはドアを開けた音なんて聞こえなかったが、ドアから帰るのか。
「ちょちょっちょっと待って!何か忘れてない!?」
神様を呼び止める京子。その大きな瞳はエサを期待している子犬のようだ。
「なんですか?帰って溜まってるアニメ消化したいんですけど」
「能力欲しい!!異能力、超能力、魔法!!なんか無いの!?」
現実の世界ではあり得ない話だった。しかし神様がいるのならどうにかしてくれるのではないか、そんな顔である。
「言ったじゃないですか、ここはアベコベなんだって」
「えっ?」
「みんな持ってますよ。能力」
「エェェェェェェェ!!??どれ!?どうやって使うの!?俺の能力なに!?」
「ちょっとうるさいんですけど、近所迷惑って言葉知ってます?」
メンドくさそうにしているが、元々、自称神様のミスのせいかしっかり話には付き合ってくれる。
「確か京子ちゃんの能力は、鏡に写った相手の能力が使えるとかだったと思いますよ?使い方は腕とか足とか動かすのと一緒です」
「本当だ。使えたわ」
京子の部屋には全身がうつる姿見がある。京子の視線はその大きな鏡に向いており、そこには神様が写っている。
「えっ?」
口を大きく開けポカーンとしている自称神様。今はすでに元神様となっているが。
「神様の能力、全部頂きました」
「エェェェェェェェ!?!?」
2018/02/28 03:02
3点リーダの修正。