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遊戯戦  作者: 太陽化身
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1話


とある事情で僕が通っている学校の卒業式を中断された。

僕は今、そんなとある事情(僕は全く知らない)を持ってきた本人に『ついてこい!!』と言われたので、黙って本人の後ろをたどっていく。

……………………怖いね。

何がってそりゃあ、さっきみたいなその場のノリって奴だよ。

この状況を詳しく言うと、僕以外の卒業式に出てる奴らを一瞬で殺した(と言っている)ヒトが、僕に興味を湧かせたらしく、僕自身もなんかこう、運命的(?)だと思い、そのヒトに言われた通りついていってる、という状況。

わからねぇよ。何でこうなった。

別に僕に興味を湧かせたところまでは、正直、このヒトの都合だ。問題はそっからだよ。なんだよ運命的って。殺人鬼に運命抱いてんじゃねぇよ。そして言われるがままになってんじゃねぇよ。興味が湧いたって殺人鬼が言うと恐怖の実験用モルモットにされそうで死ぬことよりも辛そうだよ。そもそもこのヒト多分っていうか恐らくっていうか99パー人殺してんだよ?

他の奴らがどんな姿して死んだかも見たはずだろ……。

嗚呼、もう数分前の僕は何を考えていたんだ……。

でも、本当について行ってしまったことはしょうがないとしか言いようがない。今は、校舎の中を歩いているが、外に出てからは仲間のヒトたちと合流してしまったらもう逃げられない。いや、もうさ……そういう気力も起きないんだけどね。

と、そこで、

「お前さぁ……もしかして怖がってる?」

突如口を開いたのは青ジャンバー黒パジャマを着ている僕の目の前の男。体をこちらに向けながらも、足は動かしながら聞いてきた。それに対して、僕は、

「え……?いや、その……別に……」

口ごもってしまった。

一番やっちゃいけない奴だろ。

誰がどう見たって怖いと肯定してしまっている。

「あぁ……ま、しゃーねーわな。あそこまで派手に殺っちまったんだからな。でもよぉ、俺はお前と仲良くやっていきてぇんだ。これは紛れもねぇ俺の本心だ。さっきは《興味》なんて曖昧な言葉使っちまったけど、今ならはっきりと言葉にできるぜ。俺はお前と仲間になりたい。一緒に馬鹿なことしてぇんだ。だからさ……一緒に俺と来てくれ」

そう言ってこのヒトはニカッと笑みを見せた。

思えば僕が落ち着いてからこのヒトの顔を見るのは初めてかもしれない。

少年のあどけなさを残しながらも、強さや優しさ、逞しさなどを肌で直接感じることができる。勿論、身長が僕よりも上なのでただそう感じるだけなのかもしれないが、このヒトからはオーラが勝手に出てくるほどなのだ。……本当に人を殺したなんておもえねぇな……。

そう思いながら、僕は今言っていた誘いについての返事をする。

勿論、「ついていく」だ。

さっきまで疑ってばかりだっのに、僕はこのヒトを信じた。

自分でも驚いてはいない。このヒトの笑顔に、オーラに嘘はない、そう思ったから。

何よりこのヒトは本心で言っている。


「はい……っ。勿論です。できることなら何処までもついて行きたい、です」

「何処までも? ほぉーう、そいつは驚いたな。この短時間でもう決めたか。その瞳に偽りは……ああ、ないな」

全く驚いてない顔であった。

「決めたというよりは、信じたの方が正しいかも、しれません……」

「フッハッハッハッハッハッハッハッ!!」

そして突然高らかに笑う。

「なるほど……やはりお前は面白いなぁ。あのホールに残っていたのがお前で良かった。と言ってもまだ何も始まっていないんだけどな……ってことでこれからヨロシくぅぅ!!」

「はいっ!!」

こうして僕はこのヒトの仲間になった。

…………このヒト?

まだ名前も知らないヒトと仲間になっちゃったよ。いや、このヒトだったらそれはそれでいいと自分の中では思うけど、流石に互いの名前も知らずに先の展開に進むのは気まずいというか……普通におかしい。

僕は自分から物事を言うタイプではないのだけれどこればっかりはしょうがないだろう。

「あの……聞きたいことがあるんですけど……」

やっぱり自分からはな……。

「ん? 何だ? ってそういや聞かなくちゃいけねー事があったんだった」

と、思ったら逆に聞いてきてくれた。

「お前あそこから如何するつもりだったんだ?」

予想していた問いではなかった。このヒトには名前という概念が存在していないのだろうか。

もう、いいか。

存在していないのなら、存在していないという事で今投げかけられた質問に答を出そう。

ーーーーーーお前あそこから如何するつもりだったんだ?

……さっぱりわからん。少し言葉を省略しすぎてると思う。

「ど、どういう意味で……?」

「どういう意味っつたってお前卒業式ってのに出てたんだろ? もしあんな事------俺が来ていなかったらどういう道を歩んでいたのかなって」

つまり、僕の将来について。

働く---つもりだった。

僕は好きなものが二つある。その中の一つである掃除に焦点を当て、どこかの企業やらテーマパークやらの係員さんになろうとした。というか、もうなってた。正式に働くのは四月からだけど。

意外とすんなり働ける事が決定したので不審感を拭えずにいたけど、後に僕の通ってた国立高校のおかげだという事を聞いた。

あ、圧力とかそういうのじゃないよ?

やはり国立というだけあって信頼感がものすごい高いらしい。

就職した殆どの者はその就職先に貢献してるらしく、噂では下手な大学から来た者より、こちらの高校の方が待遇がいいとか悪いとか。

もちろんの話、就職した者全員が貢献してる訳ではない。

この高校では二学期の終わり(この高校は3学期制である)の成績表によくわからない紋章の印が押してあり、その印が押されていると自分の就職先に話をしてくれるという。話とは具体的にはわからないが、普通なら高校生は門前払いしてるところとかに話をして面接を受けさせてくれたりしてくれる。まぁ、態度悪かったら落とされっけど。けど、そんなのは1、2回しかなかっという。

要するに印とは『貴方の就活をサポートします』という意味なのだろう。いや、過剰サポートか。

かくいう僕も印を押された身だ。成績表を見たときはマジで奇声をあげた。いつも無表情を貫き通してる僕が。いや、マジでこれからの人生ぬるげーだぜ!!!!!!ひゃっほううううう!!!! みたいな。

「ふぅーん、成る程。で、お前はその仕事をしたかったのか? どうしてもってんなら俺はお前をさっきの所に戻すけどよ……ってそんな質問は無意味だな。お前は『ついていく』って決めたんだもんな」

「はい……っ」

それはもう、変えようのない事実だ。

「それともう一つ質問したいことがあるんだが」

「いいですよ」

「俺、ホール来る前に一回お前の口から聞いたような高校とは程遠いような奴らを見かけたけどよぉ、何であんな奴らがこんな、いい(?)高校にいるんだよ?」「それはただ単にこの高校はどんな人でも入れるということになってるんです……。あ、でも確か一つだけ条件あります」

条件が。

ある。

けど、一つだけ。

「その、条件ってのは?」

「健康診断ってありますよね……。その時に渡される診断表を高校側に送る……それだけです。それだけで……入学ができるんです」

たった--それだけ。 「は!?そんだけで入学ができちまうのか!?」

「た、確か……」

「だとしたらもっと疑問が増えちまう ……。どんな高校にも定員数があるはず……だとしたら、何だってあんなゴミ不良野郎共が入学できてんだ……?こんな安直な条件で入学、しかもその後もサポートしてくれるって普通の奴からしたら他の高校を蹴ってまで入学したいはず……底辺組の奴らを入れる余裕もなくなる程、入学志望してる奴が大勢いると思うんだが……」

思った以上の食いつきを見せ、話題がヒートになっていく。

正反対に僕の口調はややだが、クールになっていく。

やっぱり、冷静になってこそ、こういう役柄は合うだよなぁ。

なんせ、三年間も頑張ってきたんだから。人に聞かせるためではなく、あくまで自己満足のために、


三年間、この学校のことを調べ上げてきたのだから。


もう一度言おう。あくまで自己満足のためにだ。

そして、そんな僕が今目の前にいるヒトの疑問に答えるぐらいは容易いことなのだ。だからって上には出ないよ?

「今言った中に、答えというほどのものではないですけど、ヒントならありましたよ」

「今言ったって……。そしたら考えられることは一つしかねぇけど……。それってさぁ……」

不良が入学できてしまう理由。それが、

「つまりは、不良共を入れる余裕があった--入学志望者が少なかった。ってこと?」

何気に頭の回転は早かった(失礼)。もっと悩むかと思ってたけど……さすがというしかないだろう。

「その通りです」

「となると、また疑問だ。何故、こんなにも入学志望者が少なかったのか……」

「それに対する答えは百パーセントそうだということができないんですけど、恐らくはこの高校に色々な噂やら曰くやらがあったから……だと思います」

「別に答えれられなくてもいいけど、その曰くとかってどういうものかわかるか?」

そいつぁもちろん。

高校での楽しみは職員室に仕掛けといた盗聴器で職員室の中の声を聞いてたことがあるぐらいですから。

伊達に情報収集はやっていない。

「まぁ、曰くとか言っても、正直、信じるのもばからしいほどのものなんですけどね。体を改造されてしまうーとか、体に変なものを投与されて死んでしまうーとか、ホントその程度のものなんですよ」

「だが、実際にそれを信じてしまっている人間がいるってことがもんだいだな。健康診断と体にまつわることも妙に繋がってるしな……。あれ、ってことはお前はそんな曰くがありながら、この高校に入ったのか?」

「さっきも言ったようにばからしく信じていなかっただけなんです」

ばからしいって言ってるけど一応僕も他人に薬を投与したことがあるもんで、食事の際にはめっちゃ気をつけてた。

そこで、突然。

「よしっ。んじゃあ、この世界に来てから二番目の仕事はこの高校辺りの事を調べることにしよう!」

お? 今なんか、すげぇこと言ってなかった?

スケールが大きいこと言ってたような……。

「今言った言葉は全て真実だな……?」

「あ……あ、はい」

急にコノヒトのスイッチが切り替えられたような気がして少しビクつく。さっきの僕みたいに。

あぁ、でもこれこそが僕の信じたヒトなんだな。……かっけぇ。

なんだかんだで、僕魅入っちゃってるんだね。多分全てに。

「ってやっと昇降口に着いたぜ。この高校でけぇな。ますます怪しいといえる」

でかいだけで怪しいとはさすがに言い難いが(それを言ったら都会は全て怪しいといえる)、確かにでかい。改めて感じる、そのでかさに。

「あいつ待ってかなぁ〜」

ん、やっぱ連れがいるのか。

一体コノヒトの連れとはどんなヒトなのか。悪いヒトではーーないと思う。

そんな事を考えながら、この校舎を出ることにした。


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