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「カ、カワイイ。」
たまごの殻を手で軽く払って、ソフィアはたまごの中に居る生き物を観察する。そこには、黒い真珠のような瞳に、触り心地の良さそうな茶色い、モコモコした毛並みの丸い生き物がいた。私がたまごに運命を感じたのは間違えではなかった。ソフィアの顔がみるみる笑顔になる。
「私はソフィア・ルリアミーナです。たまごさん、私と契約して下さい。」
『勿論だよ。ソフィアは友達。ずっと一緒。』
「うん。ずっと一緒にいようね。」
ソフィアがお礼を言うと足下に魔方陣が現れた。ハンナとカメルンの契約の時とは色違いの金色の魔方陣が、ソフィア達を囲んでいる。
『ねえ、ソフィア。名前をちょうだい。』
「名前?」
『僕はもうたまごじゃない。新しい名前ほしい。』
確かにたまごの言う通りだとソフィアは思う。たまごは孵化したのだ。もうたまごはたまごではない。それに折角契約をするのだ。新しい名前を付けるのも良いかも知れない。
「だけど、どんな名前が良いかな。」
名前を付けるのは、想像よりも難しい。一生その名前で呼ぶとなると、変な名前は付けられない。ソフィアはじっと元たまごを見つめる。すると、頭の中にひとつの名前が浮かんだ。
「モコはどうかな。モコモコだからモコ。」
『モコ、モコ。僕の名前はモコだ。』
モコが自分の名前を気に入ったようで、ソフィアはホッとする。モコは嬉しい気持ちをソフィアに分かってほしくて、ソフィアの体に体当たりをする。
モコモコの体で痛くはないが、体当たりには勢いがありソフィアは転びそうになるが、ギリギリで踏み留まり、モコの体を受け止める。
「ソフィア・ルリアミーナの名において、モコを私の使い魔にします。私の生涯を友として、私に力を貸して下さい。」
『うん、よろしくね。』
昨日見たハンナとカメルンの契約の言葉を、思い出しながらソフィアは口にする。契約は無事に成功したようで、ソフィアの右手とモコの背中に紋章が浮かび上がる。ハンナの紋章とは異なりソフィアの紋章は星の形だ。
魔方陣がソフィア達を祝福するように、ソフィア達を包み込むと魔方陣は時間を掛けてゆっくりと消えていった。
「あっ。」
「ソフィア様、その子は一体…。」
完全にソフィアは油断をしていた。あれだけ、凄い魔方陣が突然屋敷の庭に現れたのだ。気にならない人間はいないだろう。目の前に集合した家族や使用人達を見ながら、モコを抱き締める手に力を込めた。
閲覧ありがとうございます。
やっとソフィアの最初の使い魔が登場しました。
これから少しずつ数が増えていきます。