44
「ソフィア様‼ソフィア様‼」
自分を呼ぶ誰かの声が聞こえ、ソフィアはゆっくりと瞼を動かす。
「スイ…レン?それにモコ。」
「良かった。目を覚ましたんですね。」
『心配したんだよ。』
「そうだ。私たちはライの魔法で不思議な穴に落ちて…。」
目を開けて少しずつ状況を把握したソフィアは周囲を見渡して声を失った。目の前には使い魔園よりも沢山の使い魔が楽しそうに遊んだり、仲良く食事をしたりしていた。こんなに沢山の使い魔を1度に見るのはソフィアは初めてで驚く。
そして、それ以上に驚いたのは全てが水で出来たお城である。透明な水が太陽の光を反射してキラキラと美しく輝いていた。余りに現実離れしたな光景にソフィアは目を大きく開けた。
「此処はどこなの?」
「僕たち全ての水の使い魔の故郷『水城の泉』です。」
「此処にスイナールがいるの。」
「そうです。今の時間帯だと、スイナールはお城でダンスの勉強をしているはずですよ。」
お城でダンスの勉強。ふと疑問を浮かべたソフィアだが、すぐにある答えを見付けてスイレンに尋ねる。
「ねえ、もしかして2人は王族なの?」
「はい。僕が第1王女でスイナールは第109王女です。僕たちの種族は昔から大家族で兄弟だけで男165名。女109名いて、スイナールは兄弟の中でも末っ子で、家族から大切にされているんです。」
さらりと衝撃発言をされたが、リアムが王族だと知った直後だったこともあり、私の周囲王族率高いなぁ。と、呑気に考えているソフィアだった。
そしてスイナールとスイレンが姉妹だと聞いたときと比べて落ち着いたソフィアを見て、普通はここも驚く所だよね。ソフィアの驚くツボが分からないな。と、呑気に考えるモコ。
そして、そんな2人を見てスイレンは、スイナールを迎えに来たのに呑気な顔をしているソフィア達にムッとするのであった。
「呑気な顔をしないで下さい。さあ、城に着入りますよ。僕に着いて来て。」
「うん。」
モコを抱き締め、ソフィアは慌ててスイレンの後を追う。スイレンは第1王女だけあり有名人なようだ。普通に歩くだけで、近くにいた使い魔が道を開け、スイレンに手を振ったり頭を下げる。
そして当然だが、使い魔達の興味はスイレンの連れであるソフィアにも向いた。
『第1王女様の帰還よ。相変わらずお美しいわ。その後ろの子は誰かしら。始めてみる使い魔ね。』
『そうか。お前は初めて見るのか。あれは使い魔ではなく人間だ。でもなぜ人間がいるんだ。』
『まさか、王女様と契約したという『愛の女神の申し子』、『仮面豹変天使』、『無自覚男心折り娘』、『父の愛から逃れたい反抗期』と、噂のソフィア様か。』
「…スイレン?」
途中、使い魔の会話の中で変な単語が混ざっていた気がしてソフィアはスイレンを軽く睨む。
「空耳です。気のせいです。急ぎますよ。」
スイレンはそう言うならこの話題を追及するのは止めよう。追及しても教えて貰えない気がする。そう判断したソフィアは(クリスの愛が重たいだけで、反抗期ではないのに)と、心の中で怒るのだった。
他の使い魔も会話をしていたことが災いして、会話の最後(父の愛から逃れたい反抗期)しか聞こえていなかったソフィアは使い魔達の噂を止めずにいた。
噂は広まるどこまでも。この事を後悔するのは、そう遠くない未来の話だった。




