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『助けてくれてありがとうなのだ。カワオニ族のライなのだ。ヨロシクなのだ。』
「はじめまして。私はソフィアよ。ライはこんな所で何をしていたの?もしかして、近くにお父様が来ているの?」
クリスならあり得る。ソフィアには自分を心配して仕事を放り出して、ストカーのように影から見守るクリスの姿が簡単に想像出来ていた。事実、ソフィアは知らないがヨチヨチ歩きの赤ん坊の頃に、転んでケガでもしたら大変だと、クリスは仕事を放り出していたことがあった。当然そんな事をして許される筈もなく、ハンナにお仕置きをされてクリスは職場に引き摺っていかれた。
『クリス様はここにはいないのだ。その…、偶然ライがクリス様の娘のソフィアを見付けて、えっと、気になって隠れていただけなのだ。』
「隠れていないで、声を掛けてくれればいいのに。」
何か焦りながらも、一生懸命に話すライ。何を焦る必要があるのかと首を傾げながら、ソフィアはライも自分と同じで人見知りしているのかと、ライに親近感を覚えていた。
うん。クリスの使い魔よりは私の使い魔みたいだよね。こんな子がクリスの使い魔なんて…本当に信じられないな。
『こ、声を掛けるのはダメなのだ。ライがソフィアをかん「はい、ライは少し黙ろうね。」』
かん…。何だろう。スイレンに口を防がれたライが必死にモゴモゴ言っている。
「全く余計なことをソフィア様に教えないでください。」
呆れたように話すスイレンだが、少しはライの方を見てほしい。黄色かった顔が赤色に変わり、スイレンの手から逃れようともがいている。その様子がクリスに抱き付かれた自分と重なり、ソフィアは大声で叫ぶ。
「スイレン、手、手ぇ。」
「すまない。」
『助かったなのだ。』
余程苦しかったんだろう。新鮮な空気を吸おうと口を大きく開いている。
「大丈夫。」
『はい、ありがとうなのだ。そうなのだ。助けてくれたお礼をしたいなのだ。』
こんな律儀な子があの娘ラブでハンナに尻に敷かれているクリスの使い魔なのか。ソフィアは益々疑う。
「お礼なんていらないよ。」
『ますますお礼をしたくなったなのだ。僕の気持ちを受け取ってほしいなのだ。***なのだ。』
体の前で手を降るソフィアを見てライが俄然ヤル気が出たと意気込むと、ソフィア達に聞こえない声で魔法を発動させた。
『バイバイなのだ。また、会おうなのだ。』
「お、落ちるぅ。」
「ソフィア様僕に掴まって。」
真下に突然現れた穴に吸い込まれるようにソフィア達の体は落下する。この後何が起こるのか不安に刈られながら、小さくなるライの姿を眺めていた。
ライはソフィア達が落ちた穴を閉じると、ライは別の場所に穴を作り躊躇することなくその穴の中へと消えた。彼はソフィアの監査役だ。ソフィアを監視して彼女の体調や交流関係をクリスに伝えるのが仕事だ。
『水城の泉では、ソフィアは自身の運命を知ることになるのだ。そして両親の罪を知るのだ。…避けられない運命ほど怖いものはないなのだ。』
ライは悲しそうな顔をすると尊敬するクリスの元へ向かうのだった。




