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「ごきげんよう。貴女がこの泉に住む水の上級使い魔達かしら。」
『そうよ。』
『何の用事ですか~。』
水鏡から子供の頃のおハンナが、泉から現れたスイナール達と対面している姿が浮かび上がってきた。白いドレスを着たハンナはとても綺麗で、天使の生まれ変わりのようだ。
木々の間から日の光が差し込まれ、キラキラ輝く美しい泉に居る美少女と、可愛らしい使い魔達。きっと契約方法も素敵だろうと、ソフィアはこの後の展開を想像して心を踊らせる。
「早速ですが、私の下僕になりなさい。」
「えっ。」
『返り討ちにしてあげるわ。』
「えぇ~。」
幻想的な雰囲気から一変。ドレスを脱ぎ捨てて運動がしやすい半袖の服にショートパンツを着たハンナが高らかに宣言をした。そこには完璧な淑女であるはずのハンナの面影は感じられない。
「懐かしいわ。この頃は少しやんちゃをしていたのよね。」
口を大きく開けて驚愕するソフィアに反して楽しそうに微笑むハンナ。
(お母様がこんな人だったなんて。完璧淑女のお母様のイメージが…)
ソフィア頭を抱えて葛藤している間にも、物語は進んでいく。
火花を散らし戦闘体勢に入っている2人の間にカメルンが何事もないように割って入ると、ソフィアの指を両手で握り締めた。
『僕で良ければ大歓迎ですよ~。あなたと契約しますよ~。』
「この子は物分りが言いようね。では、ハンナ・ブルーレットの名の元に、あなたを私の使い魔にします。私の生涯を友として、私に力を貸しなさい。」
『分かりました~。』
ハンナとカメルンの足下に青色の魔方陣が現れて、2人の姿を大きな渦が包んでいく。水鏡から覗くだけだが、渦の力強い回転の衝撃が届きそうで体が震えそうだ。
「それでは、あなたに名を与えます。あなたはカメルン。私の使い魔のカメルンよ。覚えておきなさい。」
『は~い、マスター。これからよろしくね~。』
カメルンが了承を示すと渦は消え去り、先程の光景が嘘のように穏やかな景色が映し出されました。これが、使い魔との契約。ソフィアが初めて見た契約は予想以上に素晴らしいものだった。
「使い魔との契約って、なんて言うか…凄いんだね。」
「そうね。」
『きゃっー。』
きゃっー?この感動を伝えようとハンナの方を向いていたソフィアは慌てて悲鳴のした水鏡に目を向けた。
「水の使い魔は電気に弱いわね。お陰で簡単に倒せたわ。」
そこにはスイナールと契約したばかりのハンナが、泉に手を入れて電撃を放って、スイナールを気絶させていた。ソフィアは2人の戦いの重要な場面を見逃したようだ。
「それでは、今の内に契約するわよ。ハンナ・ブルーレットの名の元に、あなたを私の使い魔にします。私の生涯を友として、私に力を貸してもらうわ。」
カメルンとの契約とは違い、魔方陣は現れたが幻想的な雰囲気はない。魔方陣の衝撃波で周囲の草花が宙を舞っている。幻想的というより、荒々しいという言葉の方が当たっているだろう。
「反抗は許しません。敗者のあなたに拒否する権利はない。あなたの名はスイナール。私に生涯の忠誠を誓いなさい。」
スイナールとハンナの右手に雫に似た紋章が浮かび上がる。よく観察するとカメルンの甲羅にも同じ紋章があった。だが、今はそんな問題は些細なことだった。
「スイナールとの契約はこれで完了したんですか。」
「契約にも色々な方法があることは話したわよね。スイナールとは勝負で勝って契約したのよ。」
「そんな事出来るんですか。」
「最初に私が下僕になりなさい。と言って、スイナールが私の挑戦を受けたでしょ。この方法は人間が戦いを申し込んで勝ったら問答無用で契約してもらう方法で、実力のある魔法使いや騎士がよく使う契約方法なのよ。まあ、今は余り使われてないけどね。」
部屋の隅で小さくなって目に涙を浮かべるスイナールを見て、最初に彼女が必死に止めようとした理由が分かった気がした。
オマケ
ソ「カメルンは何でお母様と戦わずに契約したの?」
カ「マスターを見た時にぃ、僕の直感がこの人はヤバいって感じたからだよ~。」
ソ「そうなんだ」
カ「あの時は戦ってケガをして契約させられるかぁ、マスターに従って戦わないで使い魔になる。その2択だったんだ~。」
ソ「…」
カ「逃げ出そうなんて考えを捨てさせるほどぉだったよ~。」
ソ(お母様ってどれだけ強いのよ(汗))
ハンナの強さを実感したソフィアでした。
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