26
「ここが商会学園ですか。凄い大きくて楽しそうな所だね。」
「…そうだね。」
「ソフィアちゃん大丈夫だよ。私の魔法で変装をしたから、ルリアミーナ家の娘だってバレないよ。」
元気が無いのは別の理由だが、ソフィアはルースを安心させるように頬笑む。今、ソフィア達は馬車に揺られて学園の門を通り過ぎていた。これからの事を想像すると、ソフィアは心配で仕方がない。
ソフィアはルースの魔法により変化した自分の髪を触る。ルースの光の屈折魔法により、ソフィアの髪の色はルースと同じ銀色になっていた。これなら自分の正体がバレる心配は無いが、問題なのはルースだった。
「学園ではドジをしないよう、注意してね。」
「お任せくだ…いったい。」
『ルースがドジを踏まないのは、少し難しいかな。』
狭い馬車の中で急に立ち上がり、ルースは頭をぶつけて悶絶する。心配だ。凄い心配だ。ルースが悪い人間に騙されそうで怖い。ソフィアは学園ではルースから、目を離さないようにしようと決心した。
「到着したぞ。あそこの受付で、自分のクラスを確認するんだ。まあ、大変な事もあるが頑張りな。」
「はい、ありがとうございます。行こう、ソフィアちゃん。」
お金を払いソフィア達は馬車から降りて、受付へ向かう。そこにはソフィア達と同じように今日から学園に通う生徒達が列を作っていた。列の最後尾に並び、自分達の受付の順番を待つ。
「ソフィアちゃん、私たち凄い注目されていない。」
「ルースもそう思う。ドレスはモコの手作りでは無いのを着てきたのに、早速ルリアミーナ家の娘だってバレたのかな。」
ソフィアがルースの背中に隠れながら、近くに居る男の子に視線を向ける。すると、素早く視線を逸らされる。明らかに先程までソフィア達を眺めていた事を肯定する行動だ。
「あの2人は姉妹かな。凄い可愛くない。」
「ああ、超美少女だよな。是非、同じクラスになって友達になりたいぜ。」
「俺後ろに隠れている背の低い妹ちゃんがタイプだな。庇護よくをくすぐられるぜ。」
しかし、ソフィア達の心配は杞憂であった。よく視線の主達を観察すれば、ソフィア達を見ている殆んどが男の子だと分かる。彼等は美少女の2人が気になって仕方がないだけだ。
「いい。絶対に私がルリアミーナ家の娘と聞かれても、肯定してはダメだからね。絶対に否定をしてね。」
「はい。絶対に否定をします。」
認めなければ他人の空似だと言い張れる。ソフィアはルースに念を押す。
「この学園の新入生ね。商業学園へようこそ。」
「違う。私は商業学園の生徒では「生徒です。」」
否定する場所が違う。ソフィアは慌てて両手でルースの口を塞ぐ。受付の女性が不思議そうに眺めるのを、ソフィアは曖昧に笑って誤魔化す。
「ソフィアとルースです。受付をお願いします。」
「ソフィア様とルース様ですね。2人はAクラスです。こちらが学園の地図と、学生証明書、そして寮の鍵になります。学生証明書を落とすと再発行にお金が掛かるので、無くさないように気を付けて下さい。」
「ふぐ、ふが。」
「はい、ありがとうございます。」
ルースの口を塞いだまま、ソフィアは受付の女性から荷物を貰う。あの行動をして表情ひとつ崩さず対応する女性はプロである。彼女のプロ意識に関心をしながら、ソフィアはその場を後にした。
「まだ始まっていないのに、凄い疲れたよ。」
ソフィアの苦労は始まったばかりである。
閲覧ありがとうございます。更新が遅くなり申し訳ありません。仕事が忙しくなり毎日更新が出来なくなりました。次の更新は2日後か3日後になります。




