18
「…リーフは自分の意志でローズとの契約を結んだの。」
『貴女、私の言葉が分かるの。…お願い、助けて。主人を人質に捕られているの。』
ソフィアの小さな呟きにリーフが驚く。だが、直ぐに落ち着いたようで、ソフィアに助けを求める。ソフィアはローズに対する怒りで、身体を震わせながら俯く。
「何か言ったかしら。あぁ、怯えて声が出ないのね。突然の反応よね。同年代の子供で上級使い魔と契約しているのは、私だけですものね。私に楯突いたことを後悔しなさい。」
ソフィアが怯えていると誤解したローズは大声で笑う。ソフィアが怯えた姿を見て満足したようだ。
「ローズ、やり過ぎだ。」
「分かったわよ。皆こっちにおいで。美味しい餌をあげるわよ。」
もうソフィアには用はないと、ローズは未だにソフィアの後ろに隠れる使い魔に声を掛ける。しかし、誰も動こうとしない。
『怖いからイヤ。』
「聞こえていませんの。早く来なさい。」
『ごめんなさい。この子達がローズに群がるように、私が脅したの。』
リーフの言葉にソフィアが完全にキレた。ソフィアはローズを許さない。ソフィアがローズが使い魔を脅して、自分の言いなりにする悪者だと認識した。ローズは選ばれた人間ではない。自分が選ばれた人間だと周囲に思わせているだけの、ただの人間なのである。
ソフィアは俯きながら誰にも見えないように、口角を上げる。その顔はハンナに似ていた。そして、ソフィアはやはりハンナの子供であった。
「ローズ様、貴女に私の友達と使い魔バトルをしてもらいますわ。」
「使い魔バトル?なんで私がそんなのを受けないといけないのよ。」
「ローズは確かに選ばれた人間かも知れません。けど、私はそうは思いません。私は貴女以上に同年代の子供で使い魔に愛される人を知っています。彼女に勝てない限り、私はローズを認めません。」
「良いわ。そいつを倒して私が選ばれた者だと認めさせてあげるわ。」
ソフィアの挑発した挑戦をローズはあっさり承諾する。自分が負けるとは微塵も考えていないのだろう。
「それでは、彼女を連れて来ますわ。」
「逃げるなんて卑怯な真似はしないでよね。」
そんな事をする筈がないが、ローズは先程のソフィアの言葉は全てはったりで、ローズが逃げ出すかも知れないと疑っていた。
「信用がないなら、私の後を信用する従者にでも追わせれば良いわ。」
「それなら僕が行こう。僕ならローズも安心だろう。」
「はい、お願いしますわ。」
リアムに微笑まれて了承するローズの顔は赤い。好きな男の言葉に女は弱い。甘い声でリアムを送り出した。ソフィアはリアムが後を着いてくるのを確認して、ローズの姿が見えなくなると近くにあった人気のない森の茂みに移動した。
「此処でいいかしら。」
「なあ、お前が何をしたいのか知らないが、早くローズに謝ってくれないか。実際、ローズに勝てる友達なんていないだろう。」
「いないわよ。」
簡単にいないことを認めるソフィアにリアムは脱力する。リアムにはある事情からローズの機嫌を取る必要があるのだ。それなのに、ソフィアがローズの機嫌を悪くさせていく。リアムはソフィアに対して余り良い感情を持っていなかった。
「でも私はローズには謝らない。リーフの主人を人質にして、リーフに言うことを聞かすなんて私は絶対に許せないわ。」
「ちょっと待て。その情報を誰から手に入れた。それは俺しか知らない情報のはずだろう。」
自分のことを俺と言うほどリアムは慌てる。リアムがローズの機嫌を取るのは、彼女が不正な方法で使い魔と契約した証拠を見付ける為だった。それを今日会ったばかりのソフィアが知っている事にリアムは驚きを隠せない。
「それを貴方に教える必要はない。私は今、本気で怒っているの。だから、本気でローズを倒させて貰うわ。クロード、準備は出来たかしら。」
「ええ。」
クロードがソフィアに紙袋を手渡す。その中には、ソフィアの変装の道具が入っていた。
「さあ、ソフィア様のショーの始まりです。」
仮面を付けた金髪の戦士が舞台に登場する。これが、ソフィアの伝説の始まりだった。
閲覧ありがとうございます。
<オマケ>変装道具は沢山あります。
エ「モコ様、次は男の子っぽい、けどカワイイ服が良いです。」
モ「ボイッシュな感じかな。」
エ「素敵です。では、次はカッコいい服をお願いします。」
モ「…カッコいい服か。どうしようかな。」
ハ「ねえ、エレナはソフィアの服を何着作るつもりなの?」
エ「100着くらい?」
日常生活で着る服の数ではない。殆んどの服は、ハンナによりクローゼットにしまわれた。




