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「聞こえていませんの。この子達は私が餌をあげます。貴女のような者の用意した餌よりも、リーフル公爵家の料理人に用意させた餌の方が使い魔達が喜ぶに決まっていますわ。」
「そんな事ない。使い魔達は私の作った料理を美味しそうに食べてくれたよ。」
「まあ、この餌は貴女が作りましたの。下級貴族の娘は料理なんて、使用人がする事をするのですね。公爵家の料理人の餌と貴女が作った餌を同等の扱いをされるなんて最悪の気分ですわ。」
ローズの顔が更に険しくなる。ローズは許せなかった。自分の元から急に使い魔達がいなくなったと思えば、ソフィアを使い魔達が取り囲んでいた。先程まで味わっていた使い魔達を自分ひとりで独占していた優越感、自分は使い魔に愛される選ばれた人間だというプライドを、ソフィアは粉々に砕いたのだ。
だが許せないのはソフィアの方も同じだ。使い魔達が怯えている。理由は知らないが、目の前のローズが原因なのは使い魔達の様子から分かった。
「ローズ、止めるんだ。」
「リアム様、私は悪くありません。この女が私の使い魔を横取りしたのが悪いんですわ。」
だがソフィアが反論する前に、リアムがローズを止めに入った。リアムがローズと呼んだことにより、ソフィアは目の前の少女の名前がローズだと知った。
ローズはリアムに自分は悪くない。悪いのはソフィアだと言うが、その自信が何処から来るのだろう。どう考えても、ソフィアは自分が悪いとは思えなかった。
「私は悪くありません。私は使い魔がやって来たからご飯をあげただけです。それを非難される筋合いはありません。」
「それが異常なのよ。あんな風に使い魔達が一斉に貴女の所に行くなんて、貴女が何かしたに決まっていますわ。」
確かにあの光景は他人から見ても異常であった。しかし、ソフィアはローズが言うように使い魔達に何かをしたという事実はない。だがローズはそうは思わない。ローズのソフィアに向けた非難は続く。
「私と違い選ばれた人間ではない、貴女が使い魔達になつかれるなんて有り得ないの。分かったら、使い魔達を私に渡しなさい。」
「ローズが選ばれた人間だとどうして言い切れるんですか。私には貴女が選ばれた人間には見えません。」
周囲で様子を伺って居た貴族達が騒がしくなる。「あの子はローズ様の凄さを理解していない。」、「王子の婚約者確実と言われるローズ様に、名前も知らない貴族の娘がケンカを売った。」等、様々な事を言われているがソフィアの耳には届かない。ソフィアには怒りにより、ローズしか目に入っていなかった。
当のローズはというと相変わらずソフィアを睨み付けていた。しかし、その顔にはうっすら笑みが浮かんでいる。
「分かったわ。証拠を出してあげる。これが、私が選ばれた者だという証よ。召喚、リーフ。」
『また、呼んだの。この子、嫌い。でも主人のためなの。本当にごめんなさい。』
「えっ。」
ローズに呼ばれて召喚されたリーフの言葉にソフィアは驚く。リーフは薔薇の花を頭に乗せた、手の平サイズの花族の上級使い魔であった。彼女の瞳がソフィアを捉えると、その瞳は悲しそうに揺れた。
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<オマケ>その頃のハンナ
ス「…。」
ハ「スイナールどうしたの。食事が減ってないわよ。」
ス「お菓子を食べ過ぎただけよ。食欲はあるわよ。」
カ(紙に書かないと、伝わらない事を忘れるなんて、ソフィアに会えないのが、寂しいんだなぁ。)←そっと自分の食事を分ける。
ス「何なのよ。」
カ「これぇ、ソフィアの手作り何だって。」
ス「そ、そうなの。意外と料理が上手いのね。」←美味しそうに食べる。
ハ(スイナールが元気になって良かったわ。)
スイナールの笑顔に、ホッとする2人だった。




