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ベッドから起き上がり軽く背伸びをして、部屋の壁に掛けられた時計に目を向ける。朝日が登る時間より早い時間帯だ。その為、辺りは暗く静寂に包まれている。
(まだ、エレナが起こしに来るまで時間があるね。)
ソフィアは布団をから出ると、ベッドの下に隠して置いたお気に入りの赤い靴を取り出した。そして音を出さないように窓に近付き、周囲に誰もいないのを確認して窓を開けて外に出る。
ソフィアは時々誰にも内緒で自分の部屋を出る。伯爵家の一人娘が護衛を誰も付けずに庭に出たことが周囲に発覚すれば怒られるのは目に見えている。ソフィアを溺愛するお父様は、1日中護衛を付けると言い出すかも知れない。自分の家を自由に歩けないのはソフィアには不満でしかなかった。
だからソフィアは誰も起きていない早朝に庭を散歩するのが密かな楽しみだった。そして、最近は散歩以外にもソフィアには楽しみがあった。
「おはよう。元気にしてた。」
ソフィアの声に反応して、草むらからジャンプをしてソフィアの胸元にたまごが飛び出してきた。普通はたまごが動くこと事態が有り得ないが、ソフィアは不思議とこのたまごの存在を受け入れていた。
「また少し大きくなったわね。今から何が孵るか楽しみだわ。」
最初にたまごを発見した時はソフィアの手の平と同じ位の大きさのたまごだったが、今ではソフィアの腕で抱き締められるくらい大きく成長をしていた。
ソフィアは不思議なたまごから何が孵るのか。その事を楽しみにしながら、たまごを一頻りたまごを撫でるのに満足すると自分の部屋に戻るのだった。
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