42 . 幹部
「魔王様の御成です」
マイの声があまり広いとは言えない会議室の様な部屋に響いた。大きな長机に向かい七人もの人物が席を立ちこちらを見やる。見たことのある奴もいるが全く見たことの無い奴もいた。
長机の直線上に一際立派な椅子が置かれており私がそこへ座ると一斉にみんなが座った。後ろにいた三姉妹も私の背後の壁にある椅子に座っている。
机の上には幾つかの紙、資料があった。
…ふむ、よくわからん。
誰かこの気まずい空気を進めてくれはしないだろうか…。
「アイナ様、この度は変え月をなさったとか。心よりお喜び申し上げます」
そう満天の笑みで告げたのはフードから見える水色の柔らかそうなぱっつんロングヘア。細く伸びる睫毛から青い瞳が輝いた。そう、以前武道会の決勝でアイと戦っていたイオだった。
「お久しぶり…って程でもないか。決勝は見てたけど凄かったね」
そう答えるとイオは恥ずかしさを少し出しながら苦笑いした。背後の壁の方から殺気を感じるが気のせいだろう。
ふと資料をぱらぱらしていると一番下に一枚の紙があるのを見つけた。
「…出席取るの?」
私が手にしたのは出席表だった。それも以前の世界と全く同じ様な形の。
多分早く名前を覚えてもらう為だろう、と自分に言い聞かせれば多分問題ない。多分。
「はい、是非出席をお取りになってください」
背後からいつもとは違う柔らかい声色のマイの声が飛んできた。授業参観の日の担任かよ。
「じゃあ出席取るから自分の名前呼ばれたら手を上げて元気ですって言」
「それ健康診断です」
「…そうだったわ」
またまた飛んできた授業参観の担任のような声。いつもはあんなんじゃないのになぁとか授業参観の日は思わずにいられない。
素で間違えた。と恥ずかしさを紛らわす為早速名簿を読んでみる。
「…モンスター省大臣スティフ・メルゾラット」
「…はい」
か細い声が奥の方から聞こえた。そちらを見やると黒髪の毛先が赤の巻き髪のゴスロリに身を包んだロリが真っ黒な人形のような物を抱え俯いていた。
なかなかド強いキャラですこと。
というかモンスター省なんてあったのか…。
「次、防衛省副大臣…デュール・アルガンディア」
昨日出会い頭私の鉄拳を食らわせた吸血鬼、デュールはなぜここにいるんだ。と言う目で右方向に足を組み座っている右目を隠している男を睨む。時は来た!というような顔で彼は勢いよく手を上げ飛び上がった。
「はーいっ!」
「死ね」
「何故だ…」
周りから冷たい視線を浴びせられながらデュールは頭を抱えこんだ。渾身の力で私は叫ぶ。ざまああああ!!!、と心の中で。
「アイナ様、それ声に出てます」
「おっと失礼」
私にも少し冷たい視線が向けられたところで次に目を移した。
「次は…精霊総括担当、ソレラ・アティマ?」
「はい」
顔を上げ探すと、いた。
肩の緑のドラゴンも一緒に普通に座っていた。なんでソレラたんがいきなり幹部などをやることになったのかは後でマイを揺さぶって面白がりながら聞くとしよう。それにしてもお前ら…存在感薄いな。
「次は防衛省大臣イオ・ヘルベパル」
「はい」
「妖精女王…ルミル・マティルダ。またの名を…雪見大」
「ストップストップストップ!!!誰よその名前書いたの!」
顔を上げると右手の真ん中あたりにちょこんと座っていた銀髪のツインテールのそのまんま姫ドレスを着た透けた銀の羽のあるロリがバンっと机を叩いた。明らかにきつめな顔をしているのがわかる。
「わ、私です…ププッ」
お前かよ。
背後から聞こえたアホの子の声に振り向くと手を上げもう片方の手で口元を隠しうつむきプルプル震えてるマイがいた。
「あんったねぇ!?人の元の名前で毎回毎回遊ぶんじゃないわよ!!!!!」
銀髪ツインロリがまたバンバンッと机を叩きながら抗議する。
毎回やってんのかよ。
「は、はい…善処します…プッ」
絶対次もやるな。
そう確信するとロリの落ち着くのを見計らって次の名前を見た。
「次、エリオス地方領主ライン・ベンカード」
「はい」
ラインはにこやかな顔で手を挙げると狐のふわふわな尻尾を揺らした。
かわいい。
その言葉に尽きる。
「最後に情報省大臣、烏木璃侶々…?」
「あっしはリロロ・カラスギといいまっせ」
足を組んで座る緩い着物のような物を着た黒髪の長いまるで日本史の昔の人のような美女が答えた。背中には漆黒とも言える黒い翼が生えてはいるが本当に日本人のようだ。
「あっしは古代烏の純粋な血を受け継いどりまして、名前も昔の仕来り通り付けられたというわけですな。あっしのその漢字という文字は古代文を元にしておりまっせ」
つまり烏の獣人だから変え月でもない元の名前というわけか。
いままでで分かってきていることだがどうやらこの世界の魔族辺りの古代文化が日本文化と酷似しているらしい。
これで元の人数六人とソレラを含め七人の幹部が集まったというわけだ。
なんでこいつが?という奴も少なくはないのは内緒だがそれなりに強いということなのだろうか。




