マックスとチェンバロ 作者: のぶ 掲載日:2016/06/20 弓月が弦(げん)を張る。その弦はあと少しで振れ動きそうになるほどだった。だからマックスはいつまでも月の光が降りた朝を、知っているだけなんだ。朝はまだ遠く、朝に近づきつつある凛とした夢を殺す卓越した使者を、マックスは今日も知っている。 ――誉(ほ)めよ 何を? 大地を、讃(たた)え、詠(うた)え。 人の子よ、讃え、詠え、土に眠れよ眠れ。 チェンバロの音色が聴こえる樂の朝だった。 マックスが弾いていたチェンバロの後ろに、彼女はいる。 彼女はただ黙って聴いていた。