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マックスとチェンバロ

作者: のぶ

 弓月がげんを張る。その弦はあと少しで振れ動きそうになるほどだった。だからマックスはいつまでも月の光が降りた朝を、知っているだけなんだ。朝はまだ遠く、朝に近づきつつある凛とした夢を殺す卓越した使者を、マックスは今日も知っている。

 ――めよ 何を?

 大地を、たたえ、うたえ。

 人の子よ、讃え、詠え、土に眠れよ眠れ。


 チェンバロの音色が聴こえる樂の朝だった。

 マックスが弾いていたチェンバロの後ろに、彼女はいる。

 彼女はただ黙って聴いていた。




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