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幕間 実は……

実はユラと謎のアイスマンの会見の様子はこっそり全員にモニターされていた。

アイスマンとはもちろん浅香蒼大のことだ。


星系に侵入してきた飛翔体。

その調査には、軽巡ユラと駆逐艦カスミ、アラレが当たっていた。

3隻が接近したところ、飛翔体は遺棄された宇宙船らしいということがわかった。

航宙軍の軍艦のデータベースには過去から現在までのほぼ全ての宇宙船のデータが

収められている。

だが、この宇宙船に該当する船は見つからなかった。

そうはいっても、海賊などの非正規な船や、航宙軍に届け出なく建造された船の

可能性もある。

そこで、宇宙船が不審な行動をしたら即座に撃沈できるようカスミ、アラレが援護

しつつ、ユラが接近して探査ロボットを送りこむことになった。

このような事態に備えて、航宙軍の軍艦には調査用の探査ロボットが積まれているのだ。

しかしながら、宇宙船に積まれていた航行用コンピューターは起動せず、

船籍を特定できるような遺留品もなかった。

乗員のものと思われる冷凍ポッドもあったが、中身は空だった。

全く手がかりがない中で、唯一中身が入った冷凍ポッドに入っていたのが

このアイスマンだったのだ。

アイスマンは回収され、そのままユラに積まれ蘇生を試みることになった。

そして蘇生したアイスマンにユラがファーストコンタクトをしたのだが……


「もし彼が本当に地球人で、しかも軍人であるならば我々を指揮することができる

かもしれん」

イブキが珍しく興奮した口調で言った。

「そりゃそうなればいいけど、自分で予備役みたいなもんだって言ってるぜ」

長身の女性が反論する。

「おまけにジエイタイとやらは、星系国家どころか地球の一地方国家の軍隊に過ぎないみたいじゃないか。まあ地方国家っていうのはあのニホンだけどさ」

「その辺はどうだ。クリアできそうか」

「調べてみますわね」

怜悧な感じの女性が虚空を眺めつつ考え込む。

「そうですね。

予備役の件については100年前の軍務経験者召集法が適用できると思います。

それから航宙軍の設立経緯からして、ニホンのジエイタイが航宙軍の前身組織の

ひとつと言えなくもありませんわ」

「ちょっと待ちなよ」

また長身の女性が反論する。

「なんだ、貴官は反対なのか」

「アイスマンが自称通りの人物であるとは限らないよ。いくらなんでも1000年

前の地球人なんて荒唐無稽すぎるだろ。もしかしたら宇宙海賊あたりが作成した

クローンで、記憶は刷り込まれているのかもしれないし」

「ふむ、確かに宇宙船に何も手がかりが残っていなかった以上、自己申告を信じる

か信じないかという話になるな。ただ、本人が目覚める前の測定では奴は地球人だ

と判定されていたし、衣服や装置は1000年近く前というレポートが出ていたは

ずだ。辻褄は合うだろう」

「でも宇宙船もないような時代の、しかも素人だよ」

「別にアイスマンに指揮官としての資質を求めているわけではありませんわ」

今度は怜悧な感じの女性が言う。

「ニューアメリカへの航行さえ命令してもらえば、彼はそれで用済みです。

むしろいなくなってくれたほうが私たちにとってはありがたいくらいです」

「それはどういうことだ」

イブキが訊ねる。

「アイスマンがどういう性格の人間かわかりません。

もしも立場を悪用されたなら、私たちは彼に逆らうことができませんわ」

「なっ……」


重い沈黙が辺りに降りる。

「可能性はないとは言えんな。

その時は誰かが生け贄にならなくてはならないだろう。私がやるしかあるまい」

イブキがぽつりとつぶやく。

「あんたみたいな堅物が男をどうこうできるとは思えないけどね。

そんなことをするくらいならあたしがやってやるよ。

男なんて、あたしの体を見て涎を垂らすような獣ばかりだからね。

無論指一本触れさせないけど」

思わず一同の視線が長身の女性に集まるが、確かにその豊かな胸といい引き締まっ

た腰といい、同性からしても目を引く体型であるのは間違いなかった。


「まあアイスマンがそのような下劣な人間だと決まったわけではありませんわ」

話を振った怜悧な感じの女性が白々しく言う。

「彼にはできるだけ情報を与えないようにして、とにかくニューアメリカを目指す

ことにしましょう」


「それでは早速アイスマンと話をするか。ん? ユラは何をしているんだ?」

「さあ。アイスマンに抱きついているように見えますわね」

「けっ、早速女を誑かしているのかよ」

「まずいな。我々も気を付けなければならん」


ユラさんを慰めていただけのつもりの蒼大は、

知らぬところで危険人物に認定されていたのであった……

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