プロローグ
二度ある事は三度ある、とは誰が言った言葉だろうか。なかなか、どうして、正しい言
葉である。
一度目は夏、二度目は秋と、立て続けに殺人事件に巻き込まれた、猪狩康平、矢式奈美香、
藤井基樹、新川怜奈の四人。
もう殺人事件に巻き込まれる事はないだろう。
そう思ったのは最初の事件の後であった。が、そこに二度目の事件。今度こそ、と思ったはずである。
しかし、その期待はまたしても裏切られる。
ただ、幸か不幸か、今回は藤井基樹と新川怜奈は事件に関わる事はない。つまり、今回は藤井の一言で始まったわけではない。
事件が解決した暁には彼らはこう言うはずである。
「ねえ、どんなだった?」新川怜奈はおとなしめの性格とは裏腹の好奇心を持ってこう尋ねるだろう。
「おいおい、仲間はずれ?」前回の事件で懲りたのか、興味を示しつつも一歩引いた様子で藤井基樹は言うだろう。
「簡単な事だったのよ」頭脳明晰で自信家の矢式奈美香は自慢げに話を聞かせるだろう。
二度、猪狩に先を越された彼女に三度目の正直はあるのだろうか。それとも二度あることは三度あるのだろうか。
そして、猪狩康平は何も言わない。その代わりにこう思うだろう。
呪われているのは自分なのではないか、と。