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きりたがりのかまいたち?(後編)
「切りたい」
夜の路地裏で、かまいたちは真顔で言った。
私は一歩下がる。
「それは却下です」
「仕事なんや」
「人間が被害に遭う仕事はだめです」
稲荷さんが腕を組む。
「最近切れてへんのは事実やな」
かまいたちは鎌を肩に担いだ。
「服が強すぎるねん。風くらいじゃ傷つかへん」
私は思わず言った。
「技術の進歩ですね」
「進歩しすぎや」
⸻
しばらく沈黙が続いた。
かまいたちは小さく呟く。
「このままやと存在意義なくなる」
その声は、少しだけ寂しそうだった。
私は考える。
風。速さ。鋭さ。
「あ」
ひらめいた。
「キャベツの千切りどうですか」
沈黙。
「……は?」
「めちゃくちゃ速そうです」
稲荷さんが小さく笑った。
「向いてるな」
⸻
数分後。
夜のカレー屋。
湯気とスパイスの匂い。
厨房の奥で、キャベツが宙を舞っていた。
包丁が風みたいに動く。
一瞬で山になる千切りキャベツ。
店員が叫ぶ。
「速すぎる!!」
かまいたちは目を丸くしていた。
「……楽しい」
私は笑った。
「仕事見つかりましたね」
⸻
店の外。
かまいたちは深く頭を下げた。
「助かった」
差し出された小さな袋。
中には透明な刃の欠片。
「風の刃の欠片や」
稲荷さんが満足そうに頷く。
「ええ商いや」
夜の風が、少しだけ優しかった。




