写真
三題噺もどき―はっぴゃくじゅうろく。
ガヤガヤとした廊下を進んでいく。
皆が皆リュックと鞄を手に目的地へと進んでいる。
その先は大抵バラバラだが、たどり着いた先でやることはみな同じだ。
「……」
肩が外れそうなほどに重たい鞄と、今にでも投げ出したくなるほどに重たいリュックを背負い、私も目的地へと向かっていく。
教室のある校舎を抜け、渡り廊下を進んでいく。自販機に寄ってから行こうかと思ったが、その前にこの荷物を置いてから行くことにした。
「……」
隣にある特別教室のある校舎へと足を踏みいれ、階段を昇らずそのまま角を曲がる。
その先には、理系の学科が使うような教室がいくつかある。
地学室と、理科室、それぞれの隣にそれぞれの準備室。
―私の用があるのは、理科室だ。
「……」
中にはすでに数名居るのか、会話が聞こえてくる。
女子ばかりの部活なので、いざこざがありそうに思えるが、まぁ、部活が部活だし、そこまで面倒なことは起きてない。
ガラ―
と、戸を開くと、黒板に近い方で固まって座っていた数名が一気にこちらを見る。
これが知らない顔ばかりだったら、今すぐにでも引き返すが……どれもこれも見知った顔だ。学年も同じだし、1つ下の学年の子達はまだ来ていないらしい。
「――ちゃん、やほ」
「やほー」
「やっほー」
何をしているのかと思えば、プロジェクターを黒板に向けて何かを写しているようだった。
それぞれの手元には、一眼レフのカメラが置かれている。
それに入っていたSDカードをパソコンに刺して。パソコンとプロジェクターをつなげて。
黒板に写されているのは、1枚の写真だった。
「なにしてるん」
「んー次の大会のやつを、選ぼうかなーって」
「あーなるほど」
この理科室は、普段は実験や理科の授業をするために使われているが……ここは今、写真部の部室となっているわけだ。顧問が理科の教師だから。
とは言え、別に毎日何かしらするわけでもない。基本的に緩い部活なので、集まるだけ集まって解散という事もある。
「……」
リュックの中から、カメラを取り出しながら、私も一緒になって眺める。
写されているのは桜の写真だった。去年撮ったものだろうか、それとももう既にどこか咲いているのだろうか。その可能性もなくはないからな。
「……モデルさん呼んで撮ったの?」
「違うよ、これ妹」
「へー」
「妹さん可愛い~」
次に映ったのは、どこかの店ののれんをくぐる様子を撮ったもの。丁度人が真ん中に来るように構図されている。
まぁ、ずいぶんと様になる妹さんだ。うちのとは大違いだ。
でもまぁ……あの子ならこれ以上にいい画になりそうだ。
「……何の色鉛筆w」
「これは練習w」
次々と映る写真にコメントしたりしなかったり、つっこんだりつっこまなかったり。
大抵、こうして他人の撮った写真を眺めたり、自分の物を見てもらったりしている。
顧問はもう少し後に入ってくるだろう。多分、今は隣の準備室で仕事をしている。
「あ、これ好きかも」
「えーまじ」
「私も好き~」
こんな風に、ゆるゆるとした会話をしながら、選んでいるのは大会に提出する作品なのだけど。……いい加減私も考えなくてはいけない。別にそこまで情熱を持っていやっているわけでもないのだけど。
「……」
時折映る、妹さんをモデルにした写真を見ては、あの子なら、あの子ならと考える。
面倒な性格に育ったものだなと、自分でも思う。
まぁでも、こういうモデルとかは断られるのが目に見えてるので頼むことはないのだけど。
それに、いざ撮ろうとなるとこちらが動けなくなりかねない。あの子はどこの景色に居てもいいように馴染むし、誰が見ても綺麗だと思ってしまうのだ。写真に収めるのがもったいないと思うくらい。
「次、――ちゃんのね」
「んー、あんまりないよ」
「私もないから大丈夫~」
「何がw―あ」
「「失礼します」」
どうやら、1年生達も来たようだ。
さて、部活に集中することにしよう。
お題:桜・色鉛筆・のれん




