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GGsuiteー甘党ジジイの姿可変無双譚ー  作者: タピオカパン
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その甘党ジジイ、最強につき。

 そろそろ西日が差し込む頃。

 俺は少々込み合う電車の中でつり革に捕まりつつ、外の風景を見つめていた。

 立ち並ぶビルが目の前で過ぎ去る様子に、脳内のヒーローが駆けていく妄想を重ね合わせていると、少し弾んだ声が耳に入ってくる。


「うわ、爆速でトレンド上がって来た。また”リジェネ”だってさ。」

「まじ?どこどこ。近くだったら、明日は休校になるかもじゃん。」

「えー、明日の剣技の授業、めっちゃ楽しみにしてんだけど。」


 目の前の声の主は制服に身を包んでいる為、おそらくこの路線にある高校の生徒なのだろう。

 学生らしいと感じると同時に、”リジェネ”が世間に浸透してしまっていると考えると、どうしても嫌悪感を抱く。


『次は…――新都。新都です。お降りの際は……』


車内に次の駅のアナウンスが響き、俺は降車準備を始める。


 ――リジェネ。

 数年前から突如現れた違法薬物。

 筋力等を増強し、その状態を維持する効果があり、それを利用した犯罪行為や裏社会での抗争が問題となっている。

 元は新都に本部を構える軍が30年ほど前に秘密裏に研究していたプロジェクトが流出し、それを悪用した物だという都市伝説が囁かれている。


 その都市伝説というのも、海外と新都との共同研究で「自ら不老を維持する兵を作ろう」という。

 …まぁ、なんともエグいもので…。

 何度も実験を行ったそうだが、安定化がどうにも難く、結局実験は頓挫してしまったらしい。


 そんな都市伝説には続きがある。

 

 『実験を受けたうちの何人かは成功し、未だに軍で管理されている』

 

 …と。


 ……まぁぶっちゃけた話、これらは全て事実だ。

 なんなら、今も彼らは前線でバリバリ戦っている。

稀に民間人がリジェネ事件の現場を撮った写真にチラッと写っている、なんて事もあるらしい。

……扱いとしては、ただの新都お抱えの”対リジェネ戦闘兵”…という事になってはいるが。

 退役した者まで呼び出し、その戦闘兵に組み込まれていたりするんだから…この国は根幹からドのつくブラック体質なのだろう。

 その上、若返りのトリガーが各々の好物となっている為、自ら摂取して若返って無限に戦う…こんなにむごい話はない。


 …何故そんな事を知っているか。答えは簡単だ。

 俺は今日から、その退役した准将殿の”管理者”となる。


 管理者とは、実験を受けた被験者が暴走しないか等を文字通り()()()()で見守る役職だ。

 事実が都市伝説として扱われるほどだ、超極秘の役職だったのだろう。俺も士官にと声をかけられるようになるまでは、こんな役職があるとは全くもって知らなかった。

 「管理者になるという事は、士官になるよりも重大で栄誉ある任務だ。やり遂げれば出世コースは間違いない。」と、ゲッソリとした様子の前管理者は語っていた。


 今回、俺は その管理者か士官かの選択を迫られていたわけだが、すぐに管理者の道を選んだ。

 5人兄弟の長男という事もあり、よく「面倒見がいい」と言われ、士官の道を進められてはいたのだが、自分が現場の指示をしたり、30人ほどになるであろう部下の面倒をみられるとは到底思えない。

 そもそも、面倒を見ていると言っても、同じ隊で、尚且つ仲のいい者たちだけだった。

 その為、管理者として一対一で元准将の御年73歳の爺さんの面倒を見る方が俺には合っている…と思ったが、やはり緊張はする。

 何せ、かなりコワモテでイカツい上、戦闘スキルは未だに軍の中では右に出る者はいないほどだそうだ。…全部聞いた話だが。


 「時間良し。手土産良し。……あとは…。」


 ……今更ながら、正直士官に昇進した方が良かったかもしれない。と、頭の中で過る言葉を振り切り、俺は平屋建ての建物の玄関のチャイムを押した。

 ビーッと昔ながらのチャイムの音が響くと、すぐに声が帰って来る。


 『はい。』

 「普並 恵一(ふなみ えいち)。本日より元准将・桜木 敏之(さくらぎ としゆき)殿の管理者に任命されました。以後、よろしくお願いいたしま……」

 『今行く。』


 …さえぎられた。

 挨拶の仕方を何か間違えただろうか…。

 そんな不安がよぎりつつ、もう一つの考えが頭の中を埋め尽くす。


 「なんか、声高かったな…。」


 老人の声というよりも女性…いや、少年のような声だった。

 おそらくは奥様かお孫さんか…と思ったが、奥様は10年前に鬼籍に入ったと聞いているし、今年高校生になるお孫さん達も、遠方で暮らしているらしいという事を前管理者から伺っていた。


 そうこうしていると、ガラリと引き戸が開き、声の主が現れる。

 白髪に、くすんだ緑色の目をした幼い少年。肩には黒い上着…これは半纏だろうか。身長に合っていない大きなものを羽織っている。

 その下は、かなりサイズの大きい白い前止めのセーターを着ている。

にもかかわらず、首元のタートルネックのインナーは妙にぴっちりとしていたので、余計に違和感が否めない。


 …よく見ると、銀色のドッグタグのような物を、首から下げていることに気づく。

 そして、何か言葉を発しようとする口元には青いロリポップキャンディが咥えられていた。


 「…よく来た。」


 その言葉を聞いた時、全てが俺の脳内でつながり、自然と背筋は伸びていた。


 「本日より、准将殿の管理者として着任いたします。よろしくお願いいたします。」

 「…さっき聞いたぞ。上がれ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 薄茶色の畳が敷かれた居間に、コチコチという時計の音、そしてカロカロというロリポップキャンディが歯にあたる音だけが、やけに大きく響いていた。

 そんな音を聞いている間に、どれだけの時間がたったのだろう。座卓の上に置かれた器の中のキャンディは、とうに3、4回は数え切ってしまった。

 一応、准将殿が本人であるという確認の為に何か口を開くべきだという事は解っているが、目の前に座る幼い少年の鋭い視線に気圧され、俺は口を開くことが出来ずにいた。

 だんだんと、カロカロという音も小さくなっていっている。きっと、この音が聞こえなくなった時が、静寂を破るタイミングなのであろう。


 ついに音が聞こえなくなり、口元のロリポップキャンディの棒が上下する。

 

 今だ。


―――ガサ。


 静寂は、俺の声ではなく…

 准将殿が次のロリポップを手に取る音で破られた。

 その音に、必死に俺も続く。


「あ…えっと…。」

「…なんだ。」

「……それ、本日何本目ですか。」


 やってしまった。聞きたいのはそんな事ではない。

 まずは本人確認、事実確認が基本だろう。本数確認をしてどうする。

 相手は恐ろしいと噂の元准将殿。俺は、出世コースとの別れを告げる覚悟をした。


 しかし、反応は意外な物だった。

 あんなに鋭い視線を向けていた准将殿の目が、若干泳いでいる。


「……ほん。」

「え…?」

「……さんじゅうにほん。」


俺は、気が付けば准将殿の手元からロリポップキャンディを取り上げていた。


「食べ過ぎです!!!!!!」


 ……本当にやってしまった。終わった。ごめんよ弟たち。兄ちゃんはもう仕送りできないかもしれない。

 どうしても目の前の准将殿…いやもう少年と断言させてもらおう。この少年が弟たちと重なってしまい、少し強めに言葉を放ってしまった。

 もし弟たちが一人でこんな量のキャンディを食べていると考えると、かなりゾッとする。

 なんなら、今すぐにでも歯磨きさせたい気分だ。


 そんな事を考えている間に、目の前の少年は、「はも」と、口の中にロリポップキャンディを入れる。


「ワシはいつもこうだ。」

「いつもこうであってたまるか!!!!」


 もう止まらない。もうどうだっていい。目の前のガキンチョが虫歯になって苦しむところを見ろと?断じて断る。

 既にやってしまった身だ、このまま突っ走ってやる。たとえ軍を追われることになったとしても、他の仕事なんて都会にはいくらでもあるはずだ。

 そんな事よりも、まずはコイツの生活改善が先だ。


 先ほどの静寂は、みじんも感じられない。

 今、ここにはただの子供とそれを叱る大人の喧騒が響いている。


 「糖尿病に!!!!なるでしょうが!!!!!!」

 「こないだの健康診断は引っかからんかった」

 「うるせぇそれでも健康に気を使え!!!!」


 俺はガキンチョを抱え上げ、今すぐにでも口の中を綺麗にしようと洗面所へ向かおうとした。

 食べてすぐ歯を磨くのはむしろ良くない。わかっている。当然。

 が、俺の視点はぐるりと宙を舞う。

 何が何だかわからない内に、俺は受け身を取る暇もなく背中を打ち付けていた。


 「坊主。そう簡単に行くと思うなよ。」


 ドンッと、顔の近くにガキンチョ…いや元准将の足が降りて来る。

 畳の下の板がきしむ音が、鼓膜に直に伝わってくる。

 顔なんて、鼻先すれすれまで近づけられている。

 明らかな威嚇。そう感じ取った…が、俺はもう止まれなかった。


 「そう簡単にあきらめると思うなよ、不健康児…!!!」


 全力で体勢を起こす。

 この際、額同士がぶつかったって良い。全力頭突きをお見舞いしてやると言った思いで力いっぱい起き上がってやった。

 元准将は、当然といった表情でひらりとかわす。が、俺だって諦めない。

 何とかコイツの暴食を止めてやる、その一心で全力でとびかかり続けた。


 が、何度やっても毛の一本もつかめない。

未来でも見て行動しているのかと思うほど、俺の手は空を切り続ける。


「俺はねェ!!虫歯になった、体調崩したって言ってピーピー泣いてるのを見ると、心底胃がキリキリするんですよ…!!!」


 何度やっても、するりと横をすり抜けていく。そろそろ息も切れそうになっていると、若干元准将の動きが鈍くなったように感じた。

 俺は、その隙を見逃さない。思いっきり羽交い絞めにし、ロリポップキャンディの棒に手をかける。


「とった…!!!」


 元准将殿は、意外にも素直にロリポップキャンディから口を話した。


「…降参する。」


 俺は、妙な安堵と達成感を感じた。


「…これ、ラップに包んで置いときますね。続きは明日食べてください。……キッチン、どこですか。」


 元准将殿に案内され、キッチンに通される。そこでキャンディを一度水で洗い、見つけたラップを適当な大きさに切って丁寧に包んだ。

 包んでいる間に色々と思考が巡る。あの身のこなし、明らかに普通ではない。あの少年が准将殿であることは間違いないだろう。

 そして、今現在。こんなにも俺は息が上がっているのに、彼は一切息が上がっていない。あの動きが鈍ったと思った瞬間は、手を抜かれたのだと確信した。その事実がどうにも悔しい。


 そんな事をモヤモヤと考えていると、後ろから声がかかる。


「おい。」

「…なんです?」

「お前も、珈琲飲むか?」


 キャンディを冷蔵庫にしまいながら「いただきます」と俺が答えると、元准将殿は早速コポコポと湯を沸かし始めた。

 暫くすると、若干フルーティな香りが漂い始める。きっと浅煎りなのだろう。

 しかし今なぜ…と、考えている最中に、元准将殿は答えをくれた。


 「ワシら実験兵は、自ら好物を若返りのトリガーとして摂取し、常に若い姿を保つように作り替えられておる。…が、いざという時に当然その状態を解除するトリガーも用意されておってな。」


 そう話す元准将殿の小さな手元で、カップに注がれた淹れたて珈琲が2つ、湯気を上げながら揺れている。

 


「うっかり口にせんように、苦手な物になっておるがな。」


 元准将殿は、それだけ言うと片方のカップは俺に渡し、もう片方のカップをフーフーと冷ます。

 それを、まだ熱いだろうに一気に飲み干す。その勢いは、制止する暇などなかった。


 瞬間。元准将殿の体からミシリと嫌な音が鳴る。

 次々とミシリ、バキ、という音が何度も強烈に響き、准将殿の小さな体が膨れ上がっていく。

 少年から青年へ、青年から中年へ、そして…老人へ。

 その様子に、俺は若干の恐怖を覚え、珈琲に口を付けることが出来なかった。


 ――数秒後、ようやく音がやむ。


「…さて、すまなんだ。ワシの自己紹介がまだだったな。」


 先ほどと白髪は変わらない。

 しかし、それ以外の全てが変わってしまった。

 今、この目の前で。

 目元や額に刻まれた深いシワ。そんなシワに似合わない筋骨隆々で、優に2mはあるだろう躯体。

 先ほどまでなかった荒々しい髭が、一瞬で過ぎ去った長い人生を実感させてくる。


「改めて…ワシが、元准将・桜木 敏之だ。」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

助けてください、文字書き初心者です。ヒィ。


新米管理者、そして年齢性別可変ジジイと、ついでに文字書きバチクソド初心者の俺を、何卒よろしくお願いします。ヒィ。

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