【第3話】ギリギリダンス、踊れ
☆この漫画はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
☆パロディ作品です。
イッペが姿を消してから間もなく、王城の外で異様な轟音が鳴り響いた。
——ドゴォォォォン!!
地面が震える。城壁が軋む。兵士たちが悲鳴を上げながら外を見たそのとき——
霧の向こうから、巨躯がゆっくりと姿を現した。
それは、常識を超えた鉄の巨人。
無数の歯車と煙突から蒸気を吐き出しながら、両脚をずしんと振り下ろす。
「ブリン!バン!バン!ボン!」
そのたびに街が割れ、民家が弾け飛び、地面が抉られていく。
パルワール帝国が誇る兵器、その名も——
「フメバ・タスカルノニ・ロボ」。
騎士たちは圧倒された。誰もが言葉を失う中、頭部の操縦席が開き、マントを翻して立ち上がったのは……あの男だった。
「ババーンと推参だァァァ!! ポケポーケ王国よォッ! この俺の踏みつけで……終わらせてやるぜ!」
それは紛れもなく、盗賊イッペだった。
かつてショウと肩を並べ、理想を語った男。
今や王国最大の敵として、超巨大ロボを駆って現れたのだ。
「アハハハハッ! 見ろよ! この破壊力! この優越感ッ! これが俺の……勝ち組人生だ!!」
街を踏みつけ、踏みつけ、踏みつける。
「ブリン!バン!バン!ボン!」という奇怪な音が、戦慄と共に王都に響き渡った。
ショウは、王城の屋上からその光景を見下ろしていた。
拳を握り締め、胸の奥の小袋に手を当てる。そこには——
三枚の神カードが、静かに眠っていた。
「……まだだ……終わってなんかいない……」
ショウが胸からカードを取り出すと、その瞬間——
「トントントン…」「ツーツーツー…」「トントントン…」
微かな音と共に、カードが淡く光り始めた。
金、銀、紅の三色が、空へと吸い上げられていく。
「これは……!」
空中に浮かび上がる三枚の神のカード。
左のカードには、鋭き目をした狩人「キタザト神」。
中央には、知略に満ちた巫女「ツダウメ神」。
右には、静かに微笑む戦王「シブサワ神」。
彼らは、ポケポーケ王国の三大神とされ、滅びの危機にあるときにのみ力を貸すという。
「トントントン…」「ツーツーツー…」「トントントン…」
音が大地を打ち、空が割れた。
——ズガァァァァァァン!!
「キンピラゴボーッ!」
突如、空に光の裂け目が生じ、そこから現れたのは——
「スキナ・ソウザイ・ハッピョウ・ドラゴン」。
黄金と銀の鱗、七色に輝く翼、天に響く神の咆哮。
王国の神話にのみ記される天空の守護竜である。
「……来てくれたか」
ショウはその背に飛び乗った。
右手には双剣、左手には神の加護を宿す印章。背後に広がるは、王国最後の希望。
「イッペ!! この空で、決着をつけようッ!!」
「キンピラゴボーッ!」
スキナ・ソウザイ・ハッピョウ・ドラゴンが咆哮し、空を裂いて飛翔する。
フメバ・タスカルノニ・ロボの頭部に向け、一直線に!
「ほう? 来るか、ショウ……! 上等じゃねぇか!!」
イッペはフメバ・タスカルノニ・ロボの操作盤を叩いた。
「足で勝負なら、誰にも負けねえ!! オレの踏みつけでッ、おまえごとドラゴンをミンチにしてやるよッ!!」
巨体が跳ねる。
フメバ・タスカルノニ・ロボが空に飛び上がり、全重量をもってスキナ・ソウザイ・ハッピョウ・ドラゴンを踏み潰そうとする。
「ブリン!バン!バン!ボン!!」
「キンピラゴボーッ!」
だが、スキナ・ソウザイ・ハッピョウ・ドラゴンは天空で旋回し、ショウの命令で華麗に宙を舞った。
「避けられるもんなら避けてみな!」
イッペが叫び、フメバ・タスカルノニ・ロボの踵に爆雷を装填。
足を振り下ろすと同時に爆発し、空気が焼ける。
しかしショウは冷静だった。
「——キタザト神よ、狩りの導きを!」
「トントントン…」
左の神カードが光る。ショウの双剣に風の魔力が宿る。
「——ツダウメ神よ、真理の知恵を!」
「ツーツーツー…」
中央の神カードが光る。ドラゴンの翼に聖なる結界が生まれる。
「——シブサワ神よ、勝利の一閃を!!」
「トントントン…」
右の神カードが輝き、天空に槍のような光が走った。
——ズドオオォォォン!!
その光が、フメバ・タスカルノニ・ロボの胸を貫いた!
「なにっ……ぐああああああああああ!!」
操縦席でイッペがのけぞる。フメバ・タスカルノニ・ロボがバランスを崩し、街外れへと転落する。
しかしフメバ・タスカルノニ・ロボはまだ動いていた。
煙を上げながら、最後の力でショウに向かって突進を開始する。
「終わらせてやる!! 全部ッ、踏み潰してやるんだよォォォ!!」
「……そうは、させない!!」
「キンピラゴボーッ!」
ショウはドラゴンと共に急降下。イッペのフメバ・タスカルノニ・ロボと真正面から激突する。
空が割れ、風が鳴き、神々の力がぶつかり合う——
この戦いの結末は……物語のクライマックスへと続く。