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最高の【勇者】になるために  作者: レイ
第1章 ラユグトス編
9/12

第9話 ハブレイン

俺とロッドは勇者試験中に見つけた川で夜を過ごしていた。

 ここで寝ようともしたのだが、いかんせん地面に大きめの石がゴロゴロ転がっていたので、俺は草の魔法、ロッドは土の魔法を使って緩和したのだ。

 すると、その作業が終わり、土の簡易ベッドの上でゴロゴロしているロッドが口を開ける。


「それにしても、やっぱりかなり難易度の低い勇者試験だよね〜?そんなにあたし達舐められてるのかな?」


 かなり自分を高く評価している(それはもう本当に高い実力をロッドは持っているのだが。)ロッドに対して、俺は返答した。


「ロッドが【神童】って呼ばれていることを除いても、勇者2人が同時に受ける試練だから、こんなサバイバル形式になることなんてそうそうなさそうなんだけどな……。」


 俺は疑惑に思い、簡易ベッドの上で考える。

 この試験、1日くらいなら飲まず食わずでいたって最悪クリアができる。サバイバルなんかしなくたってもだ。

 だったらギルド職員にはまだ……

 まだ何か俺たちの知らない情報を隠している可能性が高い。

 俺は現実世界で見たテレビなどの知識を駆使して、そう結論づけた。

 そしてそれを元にロッドに質問する。


「なぁロッド。」


「何?」


「最近ギルドで、何か大きな動きか何かあったか?俺、そういった事情に詳しくなくてよ。」


「え?……うーんと……。」


 ロッドは少し考えたのち、こう語る。


「いや……、あたし達にまで伝わるくらいの大きなことは全然起こっていないと思う。なんせ田舎の小さめの町だしね、噂なんかすぐに飛び交っちゃうし。そんな状況なのに何も聞こえてこないってことは、それはもう何も起こってないのと同義だよ。」


「そうか……。」


「何?どうかしたの?何かに気づいたの?」


 ロッドは土のベッドでゴロゴロしながらも、好奇心からなのか俺に聞いてくる。

 というか土のベッドでゴロゴロするってかなり汚れそうなんだが、こいつ気にしないのか?

 自慢のサイドテールが土まみれなんだけども。

 俺の思考は置いておくとして、俺はロッドの質問に再度答えた。


「……気づいたっていうか、違和感を感じるんだよ。ほら、さっきからロッドが言ってる物足りないって感情。あれを突き詰めるとどうもおかしいと思ってな。」


 俺は先ほど考えたことをロッドに余すところなく伝えた。

 それを聞いたロッドはゴロゴロするのをやめ(寝転んだままではあるが)、少しの間、さっきの俺と同じように考える姿勢へと入るのだった。

 そして数分後。


「うーん、それじゃあ元からここに何かいるってタイプかなぁ……?」


 ロッドなりの結論を出したのだった。


「けどあいにく、こっち方面のクエストはほぼやったことがないから、ここの山の生態系も知らないんだよね……。」


 決定的なものは掴めていないようだが。


「まぁとにかく、ロッドも何も知らないんだったらあとはそのイレギュラーが起きないように祈るか、起こった時に考えればいいだろ。」


 そう言うと、俺は草のベッドに突っ伏せる。


「全く、ヒカゲくん。君ってやつは危機感ってものがないね。」


「ロッドもなさそうだけどな。」


 こうして俺たち2人は、仲良く夢の中へと入って行ったのだった。

 奥にある林の影で、何かがのぞいていることも知らずに。


 ――――――――――――――――――――――――


「……カゲ君!!ヒカゲ君!!起きて!!」


 俺はそんなロッドの声で目を覚ました。


「!!どうしたんだ……?」


 空を見ればわかるが、今はまだ夜だ。

 それなのにどうしたんだ?

 そんな俺の妄想は、周りを見渡せば簡単に取り払われた。


「!!……なんだよこれは……!!」


「わっかんないよ!!」


 そこで俺が見た光景は、俺とロッドの周りを10体はゆうに超える大量のオーク、コボルト、ゴブリン、ゾンビ、モンスターウルフなどのメジャーな魔物達だったのだ。


「フガ、フガ!!」


「ゴ、ゴゴ!!」


「ヴォー………………」


「ウォーーーン!!」


「!!!」

 

 ゴブリン3体が限界だった俺は、この悲惨な状況に目を丸くする。

 だが、魔物達はある一定の範囲を皮切りに、俺たちに近付いていない……否、近づけない様子だった。

 そしてその疑問はすぐにロッドが説明してくれる。


 「今はあたしの【風の防壁(エア・バリア)】でどうにか足止めをしてるところ!!本当に寝る前に貼っといて正解だったよ!!」


 なんと。

 やけに寝る前に余裕ぶっていると思ったら、これを貼っておいたかららしい。

 さすがは【神童】。準備も完璧だ。

 まぁ今はそのバリアにさらに体力を注いで硬度を増しているようだが。


「それで、こっからの案は!?」


 俺はそんな準備万端のロッドに訊く。

 しかし、


「そんなの決めてないよ!!1体2体ならまだしも、こんなに来るなんて想定外!!」


 返ってきたのはロッドの悲痛な叫び声だった。


「あたしの体力ももう限界!!」


「……!!」


 俺は絶句する。

 こんなパニックな状況、もう降参するしかないのか……?

 いや、考えろ……。

 考えればヒントはあるはず……!

 思い出せ。今までの特訓の成果を!


「あと、20秒も持たないよ!!」


 そんなロッドの声を聞きながら、俺は昨日のゴブリンとの戦闘を思い出す。

 確かあの時俺は、ゴブリン3体を一箇所に集めるため、草を伸ばした……

 ん?

 ワンチャン、これを使ったらどうにかなるかも……


「もう限界ぃ!!」


 ロッドが悲鳴を上げる。

 あぁ!!もう思考してる暇なんてない!

 このワンチャンスにかける!!


「一か八かだ!【長い草の成長グレート・グラス・グロース】!!」


 俺は俺が使っていた草のベッドから、魔物達がいないであろう奥の林にまで細くてみすぼらしい、だが即席では十分すぎるほどの草の橋をかけたのだ。


「っっ!!ナイス!」


 それを俺がかけ終わったのを見るが早いか、ロッドは【風の防壁(エア・バリア)】を解き、俺と一緒に細い橋を渡って、ギリギリのところでモンスター達からの襲撃には対応することができたのだった。


――――――――――――――――――――――――

 

 俺が橋を渡り終えると、モンスター達がこっちを向いたり、その橋を使ったりなどして俺たちを追いかけてくるのが目で見えた。


「ロッド。一旦逃げるぞ。どこに行けばいいのかわからないけど、夜の間逃げ続ければ、なんとかなる。」


 俺は隣で膝に手を置いているロッドに向かって言う。


「わかってる……ハァ……、わかってるよ。あたしだってそんなこと……。けど、ちょっとだけ待って……。まだ息が、整いきれてない……。」


 仕方がない。

 ロッドは先ほど、まぁまぁな体力消費をしているのだ。

 もちろんこの【神童】は鼻血などを出していない分、ペース配分っていうもんをわきまえてはいたようだが、それでも逃げる分までは調整できなかったようだった。

 だが数十メートル後ろには、とんでもない数の魔物がうろついている。

 早く逃げなきゃあ行けないのに……。


「いいよ。先行ってて。あたしもすぐに追いつくから。」


 すると、俺の思考が表情からわかったのか、ロッドはとんでもないことを言い出した。


「何言ってんだ。お前1人で逃げ切れるわけが……」


「いいから行って。……あたしは【神童】だよ?簡単に逃げ切れるから。」


 俺はロッドの顔を見る。

 ……アニメだったら、ここでこいつのいうことを信じて逃げるんだろうな。

 だが、これは大体お決まりの死亡フラグだ。

 まぁ今回の場合、死亡自体はしないだろうが、リタイアして勇者試験は落ちる可能性が高い。

 魔物達は俺が思考している今でさえ、刻一刻と迫ってきているからな。

 だったら俺が取るべき行動は一つだろう。


「おい、ロッド。おんぶするぞ。乗れ。」


「!!?」

 

 俺はロッドに対して背中を向けたのだった。


 ――――――――――――――――――――――――


 ロッドは多少恥ずかしがりながらも俺におんぶされてくれた。

 結論から述べておくと、思いのほかロッドは軽くて、つい最近まで学校にリュック背負いをしていた俺にとってはそこまで苦痛に感じることもなく走ることができ、どうにか魔物達を巻くことができたのだった。

 そして今俺たちがいるのは先ほどとはうって変わって暗い暗い森の中だ。


「それで、体力は回復したか?」


 俺は木の幹に座っているロッドに尋ねる。


「うん。随分マシ。さっきはありがとね。」


 ロッドはこちらを見て笑った。


「いいってことよ。俺も起きるまでの間、お前に守ってもらっていたんだしな。おあいこさまだ。」


 俺もロッドに向けて微笑み返す。


「しっかし、どういうことだろうな。1種族ならともかく、多種族で襲ってくるなんて……。」


 ここがゲームの世界だと言うなら100歩譲って納得できるが、異世界とはいえ現実世界なのならば疑問が湧く。

 異世界で最初に出会ったオーク然り、昨日、もしくは一昨日のゴブリン然り、おそらくこの世界のモンスターは、当然というべきか基本的には単種族の群れで動くはずなのだ。

 なのにどうして……

 そんな俺の疑問はまたしても、ロッドの鶴の一声で解決する。


「えーっとね、多分それは、この森に【思考持ち(ハブレイン)】がいて魔物達をその魔物の言語で言いくるめて操っていたからだと思う。」


「ハブレイン?ってなんだ?」


「【思考持ち(ハブレイン)】っていうのは、基本的にはあたしたちや他のモンスターと同じ言語を話すことのできて、知能指数が高い特別個体の魔物のことを指すんだよ。……と言っても魔王率いる魔族は別枠扱いだけどね。」


 あくまでゴブリン達の特別個体だよ。

 というロッド。

 そこで俺も納得する。

 そうか、俺が異世界(ここ)にきた時に初めて見た喋るオークのリーダー、あれがハブレインか。

 俺が納得するのを見て、ロッドは話を続けた。


「……それで、【思考持ち(ハブレイン)】は主に全員が全員、悪賢くて強いんだよ。ほら、今の襲撃には【思考持ち(ハブレイン)】らしき個体、いなかったでしょ?だから、そいつはこの森のどこかで奴らを動かしているんだよ。」


「へぇ……。」


 俺はハブレインの強さに納得すると同時に、異世界に入った時のことに対して安堵していた。

 あのオークのリーダーがかなりの脳筋だったから助かったが、今回のハブレインのような戦法を取られていたら俺はハイルに助けられる前にあっけなく死んでいただろう。

 だがそんな俺の思考は長くは続かなかった。

 なぜなら、


「え……?」


「嘘!?」


「ゴゴ、ゴゴ!!」


「ブガガ、フガ!」


「ウォーン!!!」


 確かに巻いたはずなのに、魔物達が再度、俺たちを見つけてきやがったのだから。


「ここはまずい、逃げるよ!」


「おう!」


 俺とロッドは再び駆け出した。


 ――――――――――――――――――――――――


「ハァ……ハァ……」


「とりあえず……まけたね……」


 俺とロッドはさらに森の奥深くにあった湖にまできていた。

 走りに走り続けたため、俺たち2人の体力は0に等しい。


「次奴らがきたら、一貫の終わりだぞ……。なんか、あいつらをこないようにさせる方法とかないのか?」


 俺はロッドに三度質問する。


「今回のケースだと、もう【思考持ち(ハブレイン)】本体を倒すしかないね。そいつも私たちの血肉は食べたいと思うから、近くに行けば会えるとは思う。強さは折り紙つきだけど。」


「そうか……。」


 俺はサイドテールの先端を指でくるくるさせながら回答したロッドに対して落胆の念を出す。

 ただでさえ体力は限界だっていうのに魔物、それもそれより強いらしいハブレインとなんか戦闘できるわけがないからだ。

 それにはロッドも同意見のようで、


「まぁ仕方がないよ。私の感覚だと、夜が明けるまであと1時間〜2時間くらいだし、それまで奴らから逃げ続ければいいよ。」


 と逃走方面のプランを組み立てていた。


「まぁそうだな。」


 俺はロッドの言葉に頷くと、そこにあった湖に手を入れて、洗顔をする。

 元々俺は起きた時には洗顔をしないと頭が100%使えるようにならないタチだからな。

 俺が水を汲んだ手を顔にぶっかけると、俺の顔に水が飛び散り、頭が冴え渡るように涼しくなった。

 ……これで万全だ。

 それを見たロッドは、


「お、いいね洗顔。私もやろうかな?」


 と俺の方に近づいた。


「やったらいいんじゃないか?」


 俺はそれを勧める。


「じゃあそうするよ。」


 ロッドはそういうと、俺と同様に湖の縁にしゃがみ込み、下を向く。

 だがしかし、洗顔をしようとしたロッドの顔が、下を向いたまま動かなくなったのだ。


「おい、ロッド?どうしたんだ?」


 俺はロッドの安否を尋ねる。

 すると、彼女は真っ青な顔でこっちを見てきたのだった。

 ……これはただ事じゃない。


「!!……本当にどうしたんだ?」


「見て。この足元の不自然な土の足跡。」


 俺がロッドに言われたままそこを見つめると、そこには犬のような足跡がくっきりと残っていた。


「どうしたんだよ。それが。」


 すると、ロッドは恐ろしい面持ちでこう言い放つ。


「ここはまずい。モンスターウルフの縄張りだよ。」


「う、嘘だろ?」


 俺が事態を理解できず……いや、脳がその理解を拒んだ、その時だ。


「そうさ。ここは我々、種族名モンスターウルフの縄張りだよ。ようこそ。食肉諸君。」


「「!!」」


 俺たちのいる湖の反対側の茂みから、特徴的な白と黒のオッドアイで、、体の色も黒白の虎模様、ガタイが大きめの、()()()()()モンスターウルフと、その他大勢のモンスターウルフがが姿を現し、その特徴的なモンスターウルフがこう言い張ったのだった。


「私はモンスターウルフの首領(ドン)である。さぁ、狩人肉狩りを加速させるとしようか。」

  

 

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