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最高の【勇者】になるために  作者: レイ
第1章 ラユグトス編
11/12

第11話 試験の後で

あとこれ合わせてラユグトス編は2話程度となっております!

「どうかな?ある程度は話したつもりだけど。」


 ロッドは地に伏している俺に、同じく地に伏せながら、今までの過去を余すとこなく伝え終えた。

 そんなロッドの話に対し、俺は終始驚嘆のリアクションをとっていた。

 そりゃそうだろ。

 いくらなんでもこいつの過去話、ボリュームというボリュームがありすぎるって。


「あ、あぁ。すごかった。お前もお前で、気持ち悪いほどの人生を送っていたんだな。」


「まぁ、あたしからすればこれが普通なんだけどね。天才の家に生まれるって、ほんと大変だよ。」


 ロッドは俺に伝えてスッキリしたのか、深く深呼吸をして、こう続ける。


「そういえば、ヒカゲ君の過去話も聞かせてよ。もうすぐ時間のはずなのにギルドの人たち来ないし。」


 それに対して、俺は戸惑った。

 今までのハイルやシャウィーさんとの会話から、この世界と俺たちのような異世界人たちの中には、何かがある。

 ハイルのように漫画国っていうのは容易いが、過去を話すと色々とボロがでそうで怖い。

 俺はここの人たちと、あくまで仲良くしていきたいからな。

 けどこの状況で話さないのも変だろう。

 俺は意を決して、ロッドに話し始める。


「うーんと、俺の過去はな……。」


 その時だった。

 突然俺たちの真横に魔法陣が現れて、そこからほんの一瞬でギルド職員たちが現れたのだ。


――――――――――――――――――――――

 

 俺とロッドは、試験時間が終了したことを、テレポートをしてきたシャウィーさんを含めた数名のギルド職員達によって伝えられた。


「君たち2人は、勇者試験に合格した。」


 途端に、俺とロッドの口は綻び、歓喜の音色を発する。

 寝転びながら。


「よっしゃぁぁぁぁ!!!」


「やったぁ……!」


「あの……、疲れたのは十分に把握できるのだが、2人とも立ってくれないか?」


 ギルドの人は少し、難色を示しているようだった。


――――――――――――――――――――――

 

 流石に俺だって3時間も経てばほとんど後遺症は消えており、どうにか歩ける程度には回復していたので、立ち上がることはできた。

 もちろんロッドもだ。

 そしてボロボロの俺たちが立ち上がったのを見届けると、その中の男の職員がロッドに近づいてこう言う。


「おめでとう。勇者試験合格だよ。よくもまぁ、【思考持ち(ハブレイン)】のいる森で生き残れたね。」


「まぁ、そりゃああたしが強いからでしょ!…………って言いたいところだけど、今回はあたし、プレッシャーで押し潰されちゃっててね……。正直、ヒカゲ君がいなかったらリタイアしてたと思う。」


 ロッドは安堵したような声でそのようなことをギルド職員に言った。

 その職員はロッドの知り合いの職員なのだろうか。

 そんなことを考えている俺にも、シャウィーさんが近づいてくる。


「あなたもおめでとうございます。ヒカゲさん。ハイルさんが鍛えるって言っていたので、まぁ確実にどうにかはなるだろうと思っていましたが、状況から察するにあなた達、ここの【思考持ち(ハブレイン)】と一戦やりましたね?」


 そんなシャウィーさんの発言に、ロッドに話しかけている職員を含めたギルド職員は、もう一度よく周りを見回してから、目を丸くする。

 そりゃあそうだ。

 俺とロッドが倒れていた湖のほとりは、俺が倒したモンスターウルフ20体前後が気絶したまま転がっているのだから。

 俺はそんなシャウィーさんに対して、しっかりと事実を伝える。


「はい。奴らが仕掛けてきたので、一戦やり合いました。けど俺が戦ったのは部下で、実際に【思考持ち(ハブレイン)】と戦ったのはロッドですよ。俺は草魔法で拘束したのちにただ殴ったり蹴ったりしていくだけでしたし……。」


 そんな風に俺が謙遜する(ちなみによくなろう小説にありがちな目立ちたくないとかそんなモットーは今の俺にはなくて、ただ単にロッドの方がすごいと思ったから俺は言っただけだ。)ので、職員達の目はロッドに向けられた。

 だがしかし、ロッドはそれを否定して、付け加えた。


「いやいや、あたしは主と1体1をしてたまたま適性だった火と水の魔法で溺死させただけで、他のモンスターウルフの群れは全部、ヒカゲ君がやってくれたんだよ?だから今回のMVPはヒカゲ君だよ。」


 そんなロッドの発言に、ギルドの職員の目は次は俺の方に向けられた。


「いやいや、絶対ロッドだって。」


「いーや、ヒカゲ君だね。」


 そんな風に俺たちの口論が続き、ギルド職員達の目も慌ただしくなってきたのを見たからか、さっきのロッドに話しかけていた男の職員とシャウィーさんが俺たちにこう話してきた。


「じゃあ、お互いがお互いMVPってことで、いいんじゃないですかね?」


「話を聞く感じ、どっちも凄そうだしそれでいいんじゃないかな?」


 俺とロッドはその2人になだめられて、「確かに」と、そう頷いたのだった。


――――――――――――――――――――――


 その後俺とロッドは、ギルドの人のテレポートでギルドの拠点へと帰ったのだった(ちなみにテレポートをするときに何か紙の契りのようなものを持っていた。魔道具の一環なのだろうか?)。

 そこでは、事前に結果を知らされていた冒険者の人々が、俺とロッドを見るなり、喝采の声を浴びせてくれたのだった(基本的にはロッドを賞賛する声が多かったのだが、俺を褒めてくれる人もいて安心した。)。


「ありがとう!ありがとうー!!」


 ロッドはそれに対してややオーバーリアクション並みの感謝の気持ちを述べている。

 いやはや、どの世界にもアイドル的存在ってものはいるもんだな。

 俺はそう思いながら、背中に銀色の斧を担ぐ【斧士(アイクス)】、ハイルを探すことに全力を注ぐ。

 そして俺はすぐにハイルを見つけると、ニヤつきながら話しかけた。


「どうだ、ハイル。俺は受かって見せたぞ。」


 そんな俺に対して、ハイルはこちらもニヤつきながら、冗談そうにこう返してくる。


「どうせあの【神童】が全部やってくれたんだろ?そんなもん、俺はわかってるっつーの。」


 そんなあからさまに冗談だとわかる口調に、俺はあえて同調した。


「ハァ?俺だって色々やったんだ。お前が見てないところで、俺はどんどん成長しているんだからな。」


「……わかっているだろうが、これはあくまでの冗談だ。よく、合格したな。」


 ハイルはシラフに戻ると、まるで成長した子供を見るかのように、さっきのようにニヤついた表情ではなく、完全に安堵したような表情で、俺に感嘆の意を表明したのだった。

 そんなハイルに、またもや俺は同調する。

 俺だって、感動することは嫌いじゃない。


「あぁ。色々大変だったんだぜ。」


 俺はそのあと、この1日のことを、かなり抜粋して、しかし正確にハイルに伝えたのだった。

 もちろんロッドの【神童】というイメージからかけ離れたようなシーンは省いて、だが。


――――――――――――――――――――――


「今から酒場に行くらしいんだけれど、もちろんヒカゲ君も行くよね?」


 そうロッドが俺に言い出してきたのは、俺がハイルに色々言い終わったのちに、正式な勇者になるための書類を色々と書き終わった時のことだった(ちなみにシャウィーさんが、「勇者専用のライセンスがあるので、明日発行します」と言っていた。こりゃ出発は明日以降になりそうだな。)。


「うーん、どうしようか……。」


 確かに行きたいのは山々だ。

 けどあのぶらつき屋のハイルが酒場なんかに行きたがるかどうか……。

 俺は多少の希望を込めて、ハイルと談笑していた方を見る。

 だがそこに、ハイルはいなかったのだ。


「あれ……?」


 困惑した俺に、ロッドが言った。


「ヒカゲ君と一緒にいた【斧士(アイクス)】系の職業の人なら、さっきギルドから出て行ったよ?」


「嘘だろ……?」


 おいハイル。こんな日まで自由人なのかよ……。

 その後、シャウィーさんに改めてハイルのことについて聞いてみて、「今日は遅いから家に帰って寝る」、とシャウィーさんに言っていたことが判明したので、俺は酒場に同行することを決めたのだった。


――――――――――――――――――――――


 そして俺たちは酒場について、歌えや踊れや飲めや食えやの大騒ぎとかしていた。

 俺は酒が飲めるのではないかと淡い期待をしたのだが、さすがはこの異世界。

 酒は20歳からを推奨する、と酒場の親父さんに言われてしまった。

 ロッドもその文言には飽きているようで、


「いいじゃん勇者試験に受かったんだからちょっとくらい。」


「ダメだ。酒は20歳までの人間には悪影響を及ぼす。」


 と親父さんと口論にまで発展していた。

 俺は仕方なく水を汲みながら、入れる席はないか探す。

 すると、


「ゆうさはん、こっひおいべよ〜!」


 とハイルと同年代くらいの同年代くらいの酔っ払いに誘われたのだった。


「はぁ……。」


 俺は渋々それに従い、席についた。


――――――――――――――――――――――


「それで勇者さん。あなた、勇者になったんだから他の勇者のことについても……、特に勇者ロイとか、勇者レイフィスのことについては知らなきゃまずいですよ。知ってますか?」


 俺はその酔っ払いたちの席で、唯一まともに話せそうな物腰の低い、金髪の髪の人と花を咲かせていた。

 と言うかこの酒場がどんどん酒臭くなってきてる……。

 こりゃあどこかで抜け出す必要がありそうだな……。


「あー、はい。ハイルに教えてもらって、ある程度は知ってますよ。」


 俺はその青年に向かって言葉を返す。


「そうですか。それはよかった。じゃあ、勇者が指名した戦士達については知っていますか?」


 その青年は面白そうな話題について振ってきた。

 確かに俺はここから頼れる仲間を探していく身だ。

 ハイルはその説明をすっ飛ばしていたしな。

 この話だけでも聞いておこう。


「いや……、それは知らないですね。ぜひ教えてください。」


「わかりました。」


 青年は、微笑みながら続ける。


「とはいっても、僕が知ってるのはバライト・レイフィスの仲間のうちの、魔王から逃げ帰ってきた3人だけなんですけどね。」

 

 確か、そんなことはハイルも言っていたっけな。

 俺は姿勢を正して、青年の話に耳を傾けた。


「では、まず1人目から。1人目は、【ハイイルミナスティ・ガーゼル】という【王の狂斧士バーサク・キングアイクス】の職業についていた正真正銘の化け物です。一般職で三段階目の職業を持っている人なんてそうそういませんしね。......と言ってもあくまで一般職の進化、というものはそれに値する能力を手に入れたとギルドで認められた時につけられる称号のようなものなんですけど。....話を戻しましょう。彼は、バライト・レイフィスの初めての指名相手であり彼の相棒で、数々の魔物を打ち滅ぼしていました。そして手に持っているのはかの有名な神器、【永遠の斧(エタニティアックス)】。彼はおそらく、異世界人を除く、我々の世界の人物の中ではトップクラスの実力を持っているでしょうね。」


 ふーん……。

 とりあえずすごそうな職業の人っていうのはわかった。

 あと職業が進化してもさっきの話の感じ、特に新しいスキルを覚えるなどの変化という変化はないのか。

 この町に来るまでのハイルの話を、大雑把じゃなくて、しっかりと聞いておくべきだったな.....

 ......それでいて、つくづく転生者、転移者泣かせの異世界だな。

 俺がじっくり聞いているのをわかっているのか、さらに青年は饒舌に話を続ける。


「2人目は【フィラ・フィアン】という【大魔法使い(だいまほうつかい)】の職業についていた人物です。彼女は無口だったいう伝承が残っており、常に【孤高の魔法使い】と呼ばれていました。そんな中勇者レイフィスが指名して、仲間になったというわけです。彼女の強さも折り紙付きでしたよ?逸話では、彼女の魔法のせいで魔王の城の3分の1が吹き飛んだとかなんとか。それほどに彼女は体力の効率を極めていました。本人は体力がほとんどなかったそうですけどね。」


 青年はまるで俺たちがアニメの話をするかのようにペラペラペラと2人目の情報も話し終えたのだった。

 俺は興味津々でその話を聞く。

 魔法に使う体力の効率化か……。

 確か職業【魔法使い】系でしかできないらしい特徴だから、それを極限まで強化したんだな。

 それはそれでバケモノだけども……。

 そして俺は、遅れながらも気づく。

 やっぱこの人も、呂律が狂うほどまでは行ってないけど、酔ってるよな?

 そんな心配を始めた俺をよそに青年は、息つく間もないまま3人目の情報に関しても話し始めたのだった。

 

「じゃあ3人目ですね!3人目は、勇者に指名はされてませんが、勇者の人望で魔王城に集められた仲間の1人で、職業【聖騎士(ホーリネイター)】の【スズキ・ヒロミチ】です。なんでもその当時でも異世界人は少しではありますが存在したらしく、その異世界人と結婚して生まれたのがヒロミチなのだとか。彼はよく逃げ腰で、狩れる敵だけを狩る、というものがモットーだったようです。しかし彼はたまたま魔王の部屋へと転がり込んでしまい、そこで勇者レイフィスと魔王の会話を聞いて、魔王が聖剣でしかダメージを与えることができないことを聞いてしまったので、命からがら逃げ出して、私たちにそのことを教えてくれた、かなりの重要人物ですよ。ちなみにそんなモットーを抱えていながらも、戦闘能力はかなり高いようです。」


 俺は相槌を打ちながら、3人目の話も聞くことができた。

 こいつは……、うん、多分だけどクズの可能性があるな。

 職業に騙されるかもだけど、俺の今までの漫画、小説を読んできた経験譚から、こいつはクズである可能性が高い。

 まぁ会うこともないような人物に対してそんな想像働かせたって、意味がないのだが。


「……という感じだよ。わかったかな?」


 青年は、悪事を全て話し尽くした囚人のような清々しい顔でこう聞いてきた。


「はい!わかりました。ありがとうございます。」


 俺はそろそろ酒の匂いに我慢できなくなってきたので、青年にお礼を言うと、親父さん、それにロッドに別れを告げ(2人は流石に口論をやめて、グダグダと日常の話をしていた。)たのち、自分の宿へと帰って行ったのだった。

 恐らく明日でこの街、この宿ともお別れだ。

 名残惜しいが、今日はここで至福の睡眠を満喫しよう。

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