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dearest  作者: 葉鳥
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17.帰ってきた魔術師(1)


 お茶をすすりながら私はニヤニヤ、もとい、ニコニコしていた。

 シュゼットさんのスパルタ教室が小休止した今、対面するは麗しの友、ミカちゃん。

 友です。

 友達です。

 ふっへっへ……もう友達だって言っちゃうもんね!

 ここ最近、ミカちゃんは私とよく話してくれる。勝手に友達発言が効いたのか、ばーん! と扉を開けながら登場して高飛車に挨拶して「わたくしこそが婚約者」って牽制してきて、でも一緒にお話してくれるんだよ。すっごく嬉しい。ほんと婚約者とか勘弁してほしいけど、それを理由にミカちゃんが会いに来てくれるならまあ良いかと思えるよ。

 あと、ミカちゃんが来るとシュゼットさんが気を使って休憩を入れてくれるのも有難い。いや休憩は嬉しいですが、ミカちゃんが来てくれるのが嬉しいんですよ?


「サーラさん、魔術師はご存知?」


 単語が耳をスルーした。

 ま……まじゅ……? 何だっけ?


「魔術師ですわ」


 さぞや私の顔はポカーンとマヌケ面してることだろう。

 何も今更ミカちゃんの麗しい顔に見とれたわけじゃない。新出単語が頭に入らなかっただけです。

 魔術師? 魔術師って何だ。……ああ、メルヘンだもんね。魔術師アリなのね。強引に状況を飲み込んで頷く。消化不良起こしたらどうしてくれるんだ。


「髭の人ですか」

「え? 髭?」

「お爺ちゃんですか」

「はい? ちょっとお待ちになってくださらない?」


 今度はミカちゃんがポカーンだ。いやいや、魔術師って言ったら白い髭のお爺ちゃんでしょ。魔法使いだっけ。ああもう、どっちでも一緒だ。


「確かに髭で年配の方もいらっしゃるでしょうけど……」


 ミカちゃんはどことなく歯切れが悪い。髭は希少なのかもしれないなあ。映画みたいな白髭のお爺ちゃん魔術師、ちょっと見てみたかったかもしれない。


「少なくとも、わたくしのよく知る魔術師は髭ではありませんわ」


 ツルツルか。残念。

 でも、クイさんみたいなナイスミドルがいたら目の保養になるわー。


「魔術師ってお話とかゲームで見たことがあっても、会ったことないなあ」

「あら。神官のシュロ様にはお会いしたんでしょ? 彼は魔術師でもありますわよ」


 シュロさん、マジですか。だから色々知ってるかんじだったのね。

 シュロさんの名前の後ろは〃ヴェルンディエ〃って言って、ここの建国に貢献した由緒正しい魔術師の流派名だそうだ。そして〃ヴェルンディエ〃を名乗ってる人じゃないと大聖堂の管理人にはなれないらしい。

 てことは、思ってたよりもっとシュロさん偉い人なんだねえ。少々ワイルドでも管理人だもんなあ。


「むしろ、サーラさんが落ちてきた大聖堂にはそれなりの人数が控えていましたのよ。あなた、すぐに気絶してらしたから覚えてないでしょうけど」


 まったく記憶にございません。ミカちゃんは「それはもうよろしいわ」と、ため息をつきながら話を続ける。


「旅に出ているこの国一の魔術師が、明日帰ってきますの。サーラさんもお会いするでしょうし、魔術師というものを知ってるか聞いてみようと思ったんですわ」


 国で一番って、かなり凄い人なんじゃないの。なのに、私も会うのはラウの婚約者だからか、それともコーラルさんが連れてきた特殊人物だからか。面倒っていうより正直な話、けっこう怖い。今のところ、この国で会ってる人達は私に優しいんだよ。裏でどう思ってたとしても優しいことは優しい。ラウが私に会う人を規制してくれてるおかげってのも大きいんだろう。


「怖い人じゃない?」


 いち小市民の私はそんなに偉い人達と会うのには気合いがいるんだよね。まあ、一番偉い人ってラウだけど、もう弟みたいなもんだし慣れたのさ。


「その心配はいりませんわよ。ああ、そうですわ。ひとつ、良いことを教えて差し上げます」


 ミカちゃんは朗らかに笑う。うわ可愛いー。

 と、思ったのが次の一言でぶっ飛んだ。


「魔術師の方は、総じてお顔が美しいんですのよ」

「何だそりゃ!」

「魔力が高い人間は総じて奇麗な顔立ちなのです。そして魔力が高ければ大抵が魔術師になりますわ。つまり魔術師団は美形の集まり、とでも覚えておいてはいかがかしら。すぐ分かりますわよ?」


 なかなか俗っぽいよ、ミカちゃんたら!

 フランス人形ちゃんの中身が段々分かってきたぞ。こんな子だったのね、と思いつつ打ち解けてくれてるんだと思うと嬉しくなる。しかし思ったより俗っぽいよ、お嬢様。でも、そんなミカちゃんも大好きです。


「大丈夫。国一の魔術師は穏やかな、とても良いお人柄の方ですわ」

「やっぱり奇麗な人なの?」

「ええ、奇麗ですわ」


 その言葉に会うのが少し楽しみになる。ミカちゃんがそこまで言うなら間違いないでしょ。

そう思ったときだった。扉を叩く音がした次の瞬間、ばーん! と開く。おい。ノックの意味を問いたいのですが。いやいや待ってよ、何で「ばーん!」? ミカちゃんここにいるのに。


「ただいまー!」


 飛び込んできたのは、これでもかとキラキラ笑ってる男の人で、笑顔が眩しすぎるほど輝いてる。

 一つ言いたい。ただいまって、ここ私の部屋なんですが。しかし私が口を開く前にミカちゃんが開いた。


「ロイス! 帰るのは明日ではなかったの?」


 〝明日帰る〟って、もしかして噂の国一な魔術師? それにしては若い。二十歳くらいに見えるし、国一番の魔術師にしては若すぎるでしょ。だから私の基準は白髭のお爺ちゃんなんだってば!

 でもミカちゃんが言うだけあるわ。

 ロイスさんとやらは確かにかなり奇麗な顔の青年だった。




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