花の墓
あなたの手向けに選んだ
淡い彩の悲しみの束は
安らぎなんて名に包まれ
私の腕の中で
ゆっくりとした死を体験している
あなたを包み込む花たち
燻る香が霞んでいくように
慰めなんて形ばかりの
祈りの声と共に
ゆっくりとあなたを連れ去っていく
儚い美を湛えた花の足元
剪定の痕はその限りを語る
まるで私の中のあなたのようで
綺麗な記憶を押し付ける人
綺麗な別れに満足な人
まるで私からあなたを
引き剥がそうとしてるみたい
あなたをこの世界から覆い隠すように
その悲しみに見合った数の
花達の死を手向けて
それは遺されたものの中で
変わらぬ明日を迎えるための禊のように
それぞれの祈りを彩っていく
そうやってあなたと寄り添い
供に旅立つ花達の美しさに
もう私の居場所はなくなったのだと
初めて気付いた
あなたは眠る
あなたと生きた私を抱いて
だとしたらこの私は
あなたのいない明日という墓に
副葬された抜け殻
そこは
手折られた花達に美しく彩られ
役目を終えたのは何だったのかを
訪れる者たちに教えてくれる場所
風化していくのは
花と時代と私
また新しい花の死を携えて
ゆっくりと朽ち果てていく
花たちに焦がれながら
私はここで
失い続けるという生を
体験している