詩人カメラ
私は友人から贈られた特別なカメラを手に旅に出かけたんです。そのカメラは他のカメラとは違って、シャッターを切る前に詩人のような声を発するのです。初めこそ、次はどんな詩が出てくるのかとワクワクしながら楽しんでいましたが、旅先での出来事で、その評価は一変しました。
旅行中、私はある決定的な瞬間を捉えたいと思いました。見たことも無いほど上品で美しい鳥が、欄干にとまっていたのです。すごく珍しい状況に感動して、私はぜひともその光景を切り取りたいと思い、カメラのシャッターを押したのです。
すると、カメラが詩を詠み始めました。流れるように、美しく紡がれる言葉たち。
そうこうしている間に、鳥は私を一瞥して飛び立っていきました。
私は呆然と立ち尽くしました。ひどくおかしな理由でチャンスを逃してしまって、悔やんでも悔やみきれませんでした。詩人カメラに対して、非常に腹が立ちました。
「詩を詠んでる場合じゃないでしょ! さっさとシャッターを切ってよ!」
私はカメラを責め立てましたが、もちろんカメラは黙っていました。
その後の旅は最悪の気分でした。シャッターボタンを押すたびにカメラが放つ詩が非常に長く感じられ、すぐにでも捨ててやろうかと思うほどでした。そして家に帰った私は、すぐにカメラからデータカードを抜き取りました。友人には申し訳なくおもいながらも、即刻カメラを封印したのです。
数日後、旅行の写真を整理している時に、私はあることに気付きました。詩人カメラで撮った人物が、みな楽しそうな良い顔をしているのです。
「もしかしてこれは」
もしかしなくとも、詩人カメラが詩を詠むことを面白がってくれた人たちがキラキラした眼で写真に映っていたということでした。私は詩人カメラを自分に向け、おそるおそる、再びシャッターを押しました。
最高の詩と、最高の自撮り写真でした。




